ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

トマ・ピケティ 「21世紀の資本」

 今日は第九章を読んだ。

21世紀の資本

21世紀の資本

トマ・ピケティ 「21世紀の資本」 第九章 <労働所得の格差 メモ>


賃金格差―教育と技術の競争か?


労働所得の格差、とりわけ賃金の格差が、国や時代によって差があるのはなぜか?
教育と技術の競争ではすべては説明できない。

二つの仮説:
1.労働者の賃金はその人の限界生産力、すなわち働いている会社や組織の生産高に
対するその人個人の貢献と等しい

2.労働者の生産力は何よりもその人の技能と、その社会におけるその技能に対する
需給によって決まる


実際に賃金格差の決定に基本的役割を果たす二つの社会経済力
⇒技能の需要と供給


技能の供給は教育システムに左右される。

技能の需要は社会は消費する財やサービスを生み出せる技術の状態に左右される。


技術の進歩はイノベーションの速度とその導入頻度に左右される。
教育システムは新しいタイプの訓練の供給とそれによる新しい技能の産出を、
十分速いペースで増やす必要がある。


長い目で見れば、労働に関する格差を減らす最良の方法は、労働力の平均生産性と
経済全般の成長率を上げる方法と同じで、教育への投資であるのはまちがいない。


賃金格差が小さいスカンジナビア諸国を見ると、賃金格差の小ささは主に教育システム
が比較的平等で包括的であるおかげ。

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理論モデルの限界―制度の役割


教育と技術は重要な役割を果たすが、労働者の賃金は常にその人の限界生産力、
つまり主にその技能で完全に決まるという考えに基づいた理論モデルは、各種の
面で限界がある。


最低賃金は分配の底辺には影響を与えるが、最上位にはそれほど影響力がない。
そこではまた別の力が作用している。

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賃金体系と最低賃金


最低賃金が賃金格差の形成と変遷に重要な役割を果たしているのは間違いない。


すべては最低賃金の水準次第。その国の全体的な技能水準と平均生産性を無視して、
この制限値を理論的に決めることはできない。


長い目で見て賃金を上げ賃金格差を減らす最善の方法は、教育と技能への投資。
最低賃金と賃金体系によって賃金を5倍、10倍にするのは不可能。

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米国での格差急増をどう説明するか?


限界生産性や教育と技術の競争という理論の最も目につく不具合は、1980年以降の
米国にみられる超高額労働所得の急増を説明できないこと。

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スーパー経営者の台頭―アングロ・サクソン的現象


超高給の急上昇が起きているのはいくつかの先進国だけで、それ以外では起こっていない。
⇒技術変化といった一般的かつ本質からして普遍的な原因が中心的役割を果たしているの
ではなく、国による制度のちがいが重要だと示唆している。


大陸ヨーロッパと日本を含むすべての富裕国で、1990年から2010年にかけて、平均的個人の
購買力が沈滞していたのに対し、上位0.1パーセントは購買力の著しい増加を享受した。


マクロ経済視点からは、超高所得の激増は、大陸ヨーロッパと日本では米国と比べて
顕著ではない。


各種富裕国ごとに所得分配の推移が大きく違う理由の説明が必要。これは限界生産性や
技術と教育の競合の理論では説明できない現象。

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ヨーロッパ―1900-1910年には新世界よりも不平等


米国は昔からヨーロッパよりも不平等だったわけではない。

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限界生産性という幻想


米国のトップ層所得激増に対する最も説得力のある説明
⇒トップ稼ぎ手の大半は大企業の経営者。彼らの高級の客観的根拠を個々の「生産性」
に求めるのはあまりに単純すぎる。

賃金格差が米国とイギリスで急拡大したのは、1970年以降米国とイギリスの企業が、
極端に気前のいい報酬パッケージを容認するようになったから。


この重役報酬の変化こそが世界中の賃金格差の変遷に重要な役割を果たしてきた。