今日は第十章を読んだ。
- 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2014/12/06
- メディア: 単行本
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トマ・ピケティ 「21世紀の資本」 第十章 <資本所有の格差 メモ>
富の格差とその歴史的変遷
高額な資本所得の崩壊
富の格差の歴史的縮小
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三つの問い
1.なぜ富の格差は第一次大戦以前は極端で増大し続けたのか。
2.21世紀初頭に20世紀初頭と同様、富が再び繁栄しているのに、なぜ今日における富の
集中は、歴史的な最高記録よりも著しく低いのか。
3.このような状況が昔に戻る可能性はあるのか。
富の集中は、富からの所得の集中同様に、1914-1945年のショックからいまだ完全に立ち
直っていない。
今日の富の格差は1世紀前の水準よりもずっと低い。
現在は世襲中流階級が存在し、それが国富の約3分の1を所有している。
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米国における不平等
1800年前後の米国の格差は1970-1980年のスウェーデンよりも大して高くない。
米国は新しい国で、その人口の大半がほとんど何の富も持たずに新世界にやってきた
から。
19世紀を通じて米国の富は次第に集中した。
20世紀を通じて米国における富の集中低下は限定的だった。
(もともと格差が小さく、戦争によるショックもそれほど激しくなかったため)
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富の分岐のメカニズム―歴史におけるrとg
19世紀と第一次大戦前までのヨーロッパにおける富の超集中、1914-1945年のショックに
続く富の格差の大幅な縮小、そしてその後の富の集中が過去のヨーロッパにおける最高
記録には戻っていない事実の説明。
伝統的農耕社会と第一次大戦以前のほぼすべての社会で富が集中していた第一の原因は、
これらが低成長社会で、資本収益率が経済成長率に比べ、著しく高かったこと。
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なぜ資本収益率が成長率よりも高いのか
論理的必然ではなく、歴史的事実。
人類の歴史の大半を通じて、資本収益率は常に生産(そして所有)成長率の少なくとも
10倍から20倍は大きかったのは、避けられない事実。
r>gという不等式は、第一次大戦直前まで、人類の歴史の大半を通じて明らかに事実で
あり、おそらく21世紀にも再び事実となる。資本を左右するショックと資本と労働の
関係を調整するために導入される公共政策や制度に左右される。
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時間選好の問題
行動と未来に対する態度をひつのパラメータに要約するのは不可能。
r>gという不等式は、絶対的な論理的必然ではなく、さまざまなメカニズムによって決まる
歴史的現実として分析する必要がある。成長率gは構造的に低くなりがちで、通常年間1%を大きく超えることはない。
資本収益率rは多くの技術的、心理的、社会的、文化的要因に左右され、それらがまとま
って約4-5%という利益率をもたらすよう。
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資本収益率が成長率を継続的に大きく上回ると、富の蓄積と移動の動学によって分配は
自動的に極度に集中へと向かい、兄弟姉妹間の平等な分ち合いはそれほど関係なくなって
しまう。
税率が低いと、資本収益率と成長率の差に目に見える影響を及ぼさない。
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21世紀―19世紀よりも不平等
今日のヨーロッパではベル・エポック期に比べ、富の集中が目に見えて減っている事実
の大部分は、偶発的な出来事(1914-1945年のショック)と、資本と、資本からの所得への
課税といった個別制度がもたらした結果。
これらの制度が破壊されれば、過去に経験したものに近い、あるいはもっと高い富の格差
が生じかねないリスクが高まる。
近代的成長、あるいは市場経済の本質に、富の格差を将来的に確実に減らし、調和のとれ
た安定をもたらすような力があると考えるのは幻想。