今日は第十四章を読んだ。
- 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2014/12/06
- メディア: 単行本
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トマ・ピケティ 「21世紀の資本」 第十四章 <累進所得再考 メモ>
課税における20世紀の大イノベーションは累進所得課税の考案と発展
20世紀の第二の主要な税制イノベーションは累進的な相続税
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累進課税の問題
課税は技術的問題ではなく、政治哲学的な問題であらゆる政治課題の中で最も重要
税金の分類
所得課税、資本課税、消費課税、社会保障拠出金
税金が比例的:その税率が万人にとって同じ場合
税金が累進的:一部の人の税率が他の人より高い場合
納税総額はおおむねその個人の所得に比例している
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近年の自由な資本フロー世界における税制競争の台頭により、多くの政府は資本所得を
累進所得税から除外した(特にヨーロッパ)。結果として、多くの国で税金は所得階層トップでは「逆進的」になっている。
トップ百分位で見られる逆進性は、資本所得は累進課税からほとんど除外されているため
累進課税は社会国家のきわめて重要な構成要素。
社会国家の発達と20世紀の格差構造変化にも中心的な役割を果たし、将来にわたって
社会国家の存続を確保するためにも重要であり続ける。
累進課税は今日、知的にも深刻な脅威にされされ、政治的にも脅かされている。
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20世紀における累進税制―とらえどころのない混沌の産物
累進課税は民主主義の産物であると同時に両大戦の産物でもある。
その場しのぎが必要な混沌とした環境で採用されたもので、各種の狙いは十分に考え
抜かれておらず、今日批判を受けるようになっている。
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過剰な所得に対する没収的な課税―米国の発明
米国は「過剰な」所得や財産に対する没収的な税を発明した。
70%以上の税率を試してみた最初の国は米国。
まずは所得税、そして相続税。
累進課税は格差削減のかなりリベラルな手法。
自由競争と私有財産は尊重されつつ、私的なインセンティブはかなり過激にもなりかね
ない形で改変されるが、それでも常に民主的論争で検討されたルールに従って行われる。社会主義と個人の自由との理想的な妥協となる。
1932-1980年の約半世紀にわたり、米国連邦所得税の最高税率は平均81%。
大陸ヨーロッパの国でこれほどの高い税率を課したところはまったくない。
米国の相続税率に匹敵またはそれを越えた唯一の国はイギリス。
1940年代のイギリスで最高の所得や遺産に適用される税率は98%で歴史的最高記録。
両国とも労働所得(稼いだ所得)と資本所得(稼いでいない所得)を区別し、最高税率
は資本所得に対するもの。
資本所得のほうが労働所得よりも怪しげだとみなされていた。
現在では特にヨーロッパ諸国をはじめ多くの国で、資本所得のほうが労働所得よりも
好意的な扱いを受けている。
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重役給与の爆発―課税の役割
1930-1970年代までの平等性への情熱を経験した後、米国とイギリスは正反対の道へと
方向転換した。
両国の最高限界所得税率は、フランスとドイツよりずっと低くなった。
米英が1970年代に他国に追い抜かれているように感じはじめたため。
最高限界所得税率の低下規模は、トップ百分位が国民所得に占めるシェアの同時期に
おける増加幅と密接に関係し、この二つの減少は完璧な相関を見せている。
重役報酬高騰は交渉モデルで説明がつき(低い限界税率のおかげで重役は高級をもらう
交渉をするよう促される)、経営生産性の上昇なるものとはほとんど関係ない。
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最高限界税率の問題再考
最高所得に対して没収的な税率をかけるのは、目に見える超高給与の増大を阻止する
唯一の方法。
先進国で最適な最高税率はおそらく80%以上。
所得階層のトップ1%や0.5%でみられる水準の所得に対するもの。