ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

橋元淳一郎 「時間はどこで生まれるのか」

 第三章を読んだ。量子論が扱うミクロな粒子の世界では、不確定性原理により位置と運動量は同時に確定することはできず、その存在を感覚的にイメージすることは困難で、因果律も崩壊する。量子世界が現実世界に立ち現われてくるのは、マクロな観測装置と相互作用する過程であり、観測しないかぎり実在は宙ぶらりんのまま。


時間はどこで生まれるのか (集英社新書)

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橋元淳一郎 「時間はどこで生まれるのか」 第三章 <量子論における時間の非実在性> メモ


☆否定されるニュートンの力学的世界観


・われわれがもっている時間感覚は、デカルトニュートンによって創られた力学的世
界観の影響を受けている。


ニュートン力学は相対論と量子論によって否定されることになったが、相対論はある
意味ニュートン力学を踏襲している。

・相対論では見る人の立場により同じ事象が現在にも未来にもなりうるが、原因と結果
因果律が破られることはない。

・時空の一点は文字通り点状であると見なしてさしつかえない。


・色や温度はミクロの世界では消滅する(色や温度は物理的実在ではなく、身体が外的
な環境と相互作用するこにより生じる生物学的感覚)

・物理学者が暗黙のうちに仮定している、ミクロの世界でも消滅しない物理量
⇒「位置」、「速度(運動量)」、「質量」、「エネルギー」、「時間」など

ニュートン力学の立場では、きわめて小さな粒子の物理量の値を測定するのは技術的
には困難でであっても、原理的には可能。

量子論では、この考えが通用しない。

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☆ミクロの世界では「位置」や「速度」も消滅する


量子論の重要な基本法則:ある粒子の位置と運動量(速度)は同時に確定できない

⇒粒子の位置と速度は観測していないときには実在していない。
 (不確定性原理は、対象としている二つの物理量同士の掛け算が「作用」の次元に
  なる物理量の間だけで成立する)


・一個の電子を考えると、この電子が宇宙に存在するのは事実であるが、電子を1個の
ボールのような存在と考えてはならなず、それは電子の本質ではない。

・感覚的にイメージすることは不可能で、電子はわれわれの日常感覚ではとらえられな
い何かとして存在している。


・電子の存在をわれわれが認識するのは、電子が他の物質と「相互作用」するとき
 (電子銃や蛍光スクリーンなど)。

・この「観測装置」が1個の電子というようなミクロの存在ではなく、電子や原子の
 大集団というマクロな存在であるとき、その電子はある場所に点状に現れたり、
 ある決まった速度をもった流として現れたりする。


・位置や速度といった物理量も、われわれの感覚に源を発した非実在的な概念であり、
 ミクロの世界では、位置や速度も消滅する。

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☆原子100個でできた宇宙に時間は存在しない


・時間は確かに経験的概念ではなくア・プリオリな概念であるが、その概念は人間の
 脳細胞の中に存在する。


・時間に対するア・プリオリな概念は、生命の進化の過程で形成されたもの。


・われわれがもっている人間的時間の概念は、少なくとも1兆個以上の原子が存在する
マクロな物質世界にしか通用しない概念。

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・電子が高いエネルギー準位から落下しはじめる瞬間を捉えることはできず、高い
準位と低い準位の間を落下中の電子を見ることは不可能。


・エネルギーが確定している量子系においては、時間の測定は原理的に不可能であり、
少なくともエネルギーが確定しているようなミクロの系においては、時間は存在しない。

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☆ミクロの世界に因果律は成立するか


・ミクロな量子世界においては因果律は崩れ去る。


・二重スリットの実験において、一個の光子は両方のスリットをすり抜ける。

・ランプを出るときとスクリーンに到達するときも同じく点状の粒子であるが、衝立を
通過するとき、この光子は両方のスリットを通過する。

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☆「犯した罪」を消去できる世界


・衝立を通過する直前の一方の光子にレッテルを貼るとスクリーンで干渉は起こらない。

・衝立の手前でレッテルを貼った光子を、スクリーンの手前でレッテルを剥がすと干渉が
起こる。


⇒量子的ミクロの世界では、われわれが信じているような因果律は成立しない。


・光子がランプを出る時間と、スクリーンに到達する時間は確定している。

・ランプを出るという事象の方がスクリーンに到達するという事象より前であることも
確か。

・その間に起こったことについては時間的なことは何もいえず、そこにあるのは、1個の
光子に関する量子的な状態だけであり、われわれが経験するような過去から未来に流れ
る時間はいっさい存在しない。


・量子状態の中身には、われわれが常識的に実在していると思っている時間や空間、
あるいはエネルギーや運動量(速度)という実体はない。

・時間をはじめとする物理量は、その系がマクロな観測装置と相互作用する過程において
のみ出現してくる。

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排中律さえ否定される


・観測されていないミクロの量子系においては、あらゆる可能性がそこに含まれている。


・観測しないかぎり、実在は宙ぶらりんの状態にある。


シュレーディンガーの猫の実験は、観測しなくても猫は生きているか死んでいるかの
どちらかである(猫がわれわれと同じマクロの世界の存在だから)。