- 作者: トランスナショナルカレッジオブレックス
- 出版社/メーカー: ヒッポファミリークラブ
- 発売日: 1991/08
- メディア: 単行本
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トランスナショナル カレッジ オブ レックス編 「量子力学の冒険」
第三話 <W.Heisenberg> 「量子力学の誕生」メモ
・Hamiltonの正準運動方程式は、Newtonの運動方程式F=mq’’をp、qの微分の形で
表したもの。dq/dt=∂H/∂p
dp/dt=−∂H/∂q
・Hは「ハミルトニアン」で、エネルギーをp、qの関数の形にしたもの。
H(p、q)=(1/2m)p^2+V(q)
単振動の場合、位置エネルギーは次式となる。
V(q)=(k/2)q^2
単振動のハミルトニアンは次式となる。
H(p、q)=(1/2m)p^2+(k/2)q^2
これを「Hamiltonの正準運動方程式」に入れる。
dq/dt=∂H/∂p=∂/∂p((1/2m)p^2+(k/2)q^2))
=p/m=v
これは、dq/dt=q’が速度vであることを表す。
もう一方は次式となる。
dp/dt=−∂H/∂q=−∂/∂q((1/2m)p^2+(k/2)q^2))
=−kq=F
dp/dt=m(dv/dt)=mq’’なので、F=mq’’と同じことになる。
・Newtonの運動方程式とHamiltonの正準運動方程式は実質的には同じであるが、
Hamiltonの正準運動方程式のほうが数学的に美しい。
・Hamitonの運動方程式とf(p、q)の式を見比べて、fをHに書きかえる。
dq/dt=∂H/∂p
dp/dt=−∂H/∂q
∂f(p、q)/∂q=(2πi)/h(pf−fp)
∂f(p、q)/∂p=(2πi)/h(qf−fq)
↓
∂H/∂q=((2πi)/h)(pH−Hp)
∂H/∂p=−((2πi)/h)(qH−Hq)
これをHamiltonの正準運動方程式と合体させると次式となる。
dp/dt=−((2πi)/h)(pH−Hp)
dq/dt=−((2πi)/h)(qH−Hq)
これをpとqの関数のgを考えて一つにまとめると次式となる。
dg/dt=−((2πi)/h)(gH−Hg)
上式は「Heisenbergの運動方程式」と呼ばれている。
Newtonの運動方程式を書きかえた理由<三つの利点>
1.「エネルギーの保存則」が、どんな場合でも成り立つことが証明できる。
2.「Bohrの振動数関係」がどんな場合でも成り立つことが証明できる。
3.問題が「固有値問題」になる。
1.エネルギー保存
・エネルギーの保存がどんな場合でも成り立つか
Heisenbergの運動方程式でgはp、qの関数であれば何でも良い。
dg/dt=−(2πi/h)(gH−Hg)
エネルギーを表すマトリックスのハミルトニアンは、p、qの関数である。
H(p、q)=(1/2m)p^2+V(q)
Heisenbergの運動方程式のgをHとして考えると次式となる。
dH/dt=−(2πi/h)(HH−HH)
HH−HH=0なので、
dH/dt=0
となる。
・エネルギーの時間変化dH/dtが0であり、「エネルギーが時間変化しない」ので
どんな場合にもエネルギーが保存している。
エネルギーHを各要素ごとに見る。
Hnn’=H_nn’e^i2πνnn't
(H_nn’:振幅)
・Hnn’は時間tを含むので時間変化するが、n=n’の時は時間変化しない。
・n=n’の時の振動数νnnは「nからnへ遷移した時の振動数」なので0になる。
Hnn=H_nne^i2πνnnt=H_nne^i2πν0t=H_nn
・マトリックスHが時間変化しないので、マトリックスHの要素のうち時間変化しない
n=n’の対角要素Hnnだけが値を持って他は全部0にならなければならない。
|H11 0 0 ・・・|
| H22 0 ・・・|
| H33 ・・・|
このマトリックスHの対角要素の値をW1、W2、W3・・・とすると、マトリックスHは
次式となる。|W1 0 0 ・・・|
| W2 0 ・・・|
| W3 ・・・|
Hnn’=Wnδnn’
となる。(δnn’:n=n’の時は1、その他は0)
2.Bohrの振動数関係
・Heisenbergの運動方程式からBohrの振動数関係が成り立つことを証明する。
dg/dt=−(2πi/h)(gH−Hg)
Heisenbergの運動方程式の中のgもマトリックスで、その要素は以下で表される。
gnn’=Gnn’e^i2πνnn't
Heisenbergの運動方程式を右辺と左辺に分け、それぞれの要素を見る。
左辺dg/dtの要素は、
(dg/dt)nn’=i2πνnn’Gnn’ei2πνnn't
Gnn’ei2πνnn't=gnn’なので次式となる。
左辺=i2πνnn’gnn’
右辺を考える
(−((2πi)/h)(gH−Hg))nn’
=−(2πi/h)(Σ[n'']gnn’’Hn’’n’
−Σ[n'']Hnn’’gn’’n’)
エネルギーHは対角線マトリックスになるので
Hnn’=Wnδnn’
を代入すると次式となる。
Hn’’n’=Wn’’δn’’n’
Hnn’’=Wnδnn’’
=−(2πi/h)(Σ[n'']gnn’’Wn’’δn’’n’
−Σ[n'']Wnδnn’’gn’’n’)
クロネッカーδn’’n’はn’’=n’の時だけ1になり、それい以外は0となる。
δnn’’もn=n’’の時だけ1で他は0なので、Σ[n'']が消える。=−(2πi/h)(gnn’Wn’−Wngnn’)
=−(2πi/h)(Wn’−Wn)gnn’
=(2πi/h)(Wn−Wn’)gnn’
=2πi((Wn−Wn’)/h)gnn’
ここで、
左辺=i2πνnn’gnn’
右辺=2πi((Wn−Wn’)/h)gnn’
なので、
i2πνnn’gnn’=2πi((Wn−Wn’)/h)gnn’
νnn’=(Wn−Wn’)/h
となり、Bohrの振動数関係がいつでも成り立つことが証明された。
・スペクトルの「振幅」と「振動数」を求めるにはHeisenbergの運動方程式を解けば良いが、
Bornは運動方程式を解かずに直接Q、νを求める方法を見つけ、それが「固有値問題」。
<第一段階 小文字のp、qと大文字のP、Q>
・スペクトルの振幅Pnn’、Qnn’を集めてマトリックスを作る。
|P11 P12 P13・・・|
P=|P21 P22 P23・・・|
|P31 P32 P33・・・|、
|Q11 Q12 Q13・・・|
Q=|Q21 Q22 Q23・・・|
|Q31 Q32 Q33・・・|
・「振幅Pnn’、Qnn’を求める」ことは、この「マトリックスP、Qを求める」ことと
同じことになる。
・このマトリックスP、Qは次の性質がある。
f(p、q)nn’=f(P,Q)nn’e^i2πνnn't
「小文字の関数は、大文字の関数にe^i2πνnn'tをつければ良い」
・f(p、q)=pやf(p、q)=qの場合には以下となって良い
pnn'=Pnn’e^i2πνnn't
qnn'=Qnn’e^i2πνnn't
・たし算の場合を考える。
(p+q)nn'=(Pnn’+Qnn’)e^i2πνnn't
⇒「小文字の関数は、大文字の関数×e^i2πνnn't」になる
・かけ算の場合を考える。
(pq)nn'=Σ[n'']pnn''qn''n'
=Σ[n'']Pnn’’e^i2πνnn''tQn’’n’e^i2πνn''n't
=Σ[n'']Pnn’’Qn’’n’e^i2πν(nn''+n''n')t
=Σ[n'']Pnn’’Qn’’n’e^i2πνnn't
=(PQ)nn’e^i2πνnn't
⇒「小文字の関数は、大文字の関数×e^i2πνnn't」になる
・小文字のp、qの正準な交換関係を考える。
(pq−qp)nn'=h/(2πi)
左辺は以下となる。
(pq−qp)nn'=(PQ−QP)nn’e^i2πνnn't
ここで、正準な交換関係(pq−qp)nn'=h/(2πi)を使う。
(PQ−QP)nn’e^i2πνnn't=(h/(2πi))δnn’
n=n’の時、(PQ−QP)nn’=h/(2πi)
n≠n’の時、(PQ−QP)nn’=0
・まとめ
(PQ−QP)nn’=(h/(2πi))δnn’
⇒小文字のp、qで正準な交換関係が成り立っている時は、大文字のP、Qでも
同じように正準な交換関係が成り立つ。
・ハミルトニアンH(p、q)について考える
H(p,q)nn’=H(P,Q)nn’e^i2πνnn't
ここで、小文字のハミルトニアンH(p,q)が対角線マトリックスになっていると、
正準な交換関係の時と同じになる。H(p,q)nn’=Wnδnn’’
H(P,Q)nn’e^i2πνnn't=Wnδnn’’
・まとめ
H(P,Q)nn’=Wnδnn’
・大文字のP、Qが
1.正準な交換関係を満たし
2.ハミルトニアンH(P,Q)が対角線マトリックスになっている時、小文字のp、qが「正準な交換関係」と「Heisenbergの運動方程式」を満たすことが
証明できる。
⇒上の1、2の条件を満たすような大文字P、Qを探すことで直接に「振幅」と「振動数」
を求めることができる。
大文字のP、Q
|P11 P12 P13・・・|
P=|P21 P22 P23・・・|
|P31 P32 P33・・・|、
|Q11 Q12 Q13・・・|
Q=|Q21 Q22 Q23・・・|
|Q31 Q32 Q33・・・|
を考え、このハミルトニアン
H(P,Q)=P^2/(2m)+V(Q)
が正準な交換関係
PQ−QP=h/(2πi)1
を満たし、対角線マトリックスになっているとする。
この大文字のP、Qの要素を振幅として持ち、ハミルトニアンH(P,Q)の対角線
要素W1、W2、W3・・・からBohrの振動数関係νnn’=(Wn−Wn’)/h
により求めたνnn’を振動すとして持つ遷移成分を考え、さらにこのpnn'、Qnn'を
要素として持つ小文字のマトリックスp、qを考える。
これがHeisenbergの運動方程式を満足するか見る。
運動量pについてのHeisenbergの運動方程式は次式となる。
dp/dt=−(2πi/h)(pH−Hp)
左辺は、(dp/dt)nn’=i2πνnn’Pnn’e^i2πνnn't
で、Pnn’e^i2πνnn't=pnn'なので
左辺=i2πνnn’pnn'
右辺は、
−(2πi/h)(pH(p,q)−H(p,q)p)
であるが、H(p,q)は小文字の関数で、右辺全体としても小文字の関数なので
「小文字=大文字×e^i2πνnn't」が使える。(−(2πi/h)(pH(p,q)−H(p,q)p))nn’
=(−(2πi/h)(PH(P,Q)−H(P,Q)p))nn’e^i2πνnn't
=−(2πi/h)(Σ[n'']Pnn’’H(P,Q)n’’n’
−Σ[n'']H(P,Q)n’n’’Pn’’n’)e^i2πνnn't
大文字のハミルトニアンH(P,Q)は対角線マトリックスになるので、
H(P,Q)nn’’=Wnδnn’’
H(P,Q)n’’n’=Wn’’δn’’n’
=−(2πi/h)(Σ[n'']Pnn’’Wn’’δn’’n’
−Σ[n'']Wnδnn’’Pn’’n’)e^i2πνnn't
ここで、Wn’’δn’’n’はn’’=n’の要素以外は0、Wnδnn’’は
n’’=nの要素以外は0なのでΣ[n'']が消える。
=−(2πi/h)(Pnn'Wn’−WnPnn')e^i2πνnn't
=(2πi/h)(WnPnn'−Pnn'Wn’)e^i2πνnn't
=2πi((Wn−Wn’)/h)Pnn'e^i2πνnn't
=2πiνnn’’Pnn’
右辺=左辺となり、大文字のP,Qから作った小文字のpnn'は、Heisenbergの運動方程式
を満たしていることが証明された。
・まとめ
「正準な交換関係を満たし」「ハミルトニアンが対角線マトリックスになる」ような
大文字のP、Qが見つかれば、そこからスペクトルの「振幅」と「振動数」が求まる。
<第一段階 ユニタリー変換>
・マトリックスP0、Q0を考える。
・このP0、Q0は正準な交換関係
P0Q0−Q0P0=(h/(2πi))1
を満たすものであればなんでもよい。
・P0、Q0のハミルトニアンH(P0,Q0)は対角線マトリクスにはならないが、
ユニタリー変換を使うと、P0、Q0が対角線マトリックスになる。
・ユニタリー変換とは、あるマトリックスをユニタリーマトリックスUではさむことを言う。
・ユニタリーマトリックスとは、
U+U=UU+=1(単位マトリックス)
となるようなマトリックスのこと。
「+」は「ダガー」というマークで、行と列を入れ替えて複素共役をとること
|A B|+ =|A* C*|
|C D| |B* D*|
・H(P0,Q0)は対角線マトリックスではないが、うまくユニタリー変換すると
U+H(P0,Q0)Uが対角線マトリックスになる。|W1 0 0 ・・・|
U+H(P0,Q0)U=|0 W2 0 ・・・|
|0 0 W3 ・・・|
・単振動を例として考える。
単振動の場合、P0,Q0のハミルトニアンH(P0,Q0)は以下となる。
H(P0,Q0)=(1/(2m))(P0)^2+(k/2)(Q0)^2
=1/(2m)P0P0+(k/2)Q0Q0
これをユニタリーマトリックスU+、Uではさんで対角線マトリックスにできたとする。
|W1 0 0 ・・・|
U+H(P0,Q0)U=|0 W2 0 ・・・|
|0 0 W3 ・・・|
左辺に「単振動のハミルトニアンを入れて計算する。
U+(1/(2m)P0P0+(k/2)Q0Q0)U
=1/(2m)U+P0P0U+(k/2)U+Q0Q0U
P0とP0の間、Q0とQ0の間にU+Uを入れる(U+U=1)。
=1/(2m)U+P0UU+P0U+(k/2)U+Q0UU+Q0U
ここで新しくU+P0U、U+Q0Uを
P=U+P0U
Q=U+Q0U
とおくと、
=1/(2m)P^2+(k/2)Q^2
となり、次式となる。
|W1 0 0 ・・・|
1/(2m)P^2+(k/2)Q^2=|0 W2 0 ・・・|
|0 0 W3 ・・・|
勝手に選んだP0,Q0をユニタリーマトリックスU+、Uではさんだ
P=U+P0U
Q=U+Q0U
が求めたかった大文字のP、Q、つまりスペクトルの振幅。
・このUを求める方法が「固有値問題」
U+H(P0,Q0)Uが対角線マトリックスになるのだから、
|W1 0 0 ・・・|
U+H(P0,Q0)U=|0 W2 0 ・・・|
|0 0 W3 ・・・|
となる。この両辺に左側からUをかけると、U+U=1なので、
|W1 0 0 ・・・|
H(P0,Q0)U=U|0 W2 0 ・・・|
|0 0 W3 ・・・|
|U11 U12 U13||W1 0 0 ・・・|
=|U21 U22 U23||0 W2 0 ・・・|
|U31 U32 U33||0 0 W3 ・・・|
|U11W1 U12W2 U13W3|
=|U21W1 U22W2 U23W3|
|U31W1 U32W2 U33W3|となる。
この右辺は、1列目はW1、2列目はW2、3列目はW3だけがかかっているので、列を
バラバラにして考えて良い。
ユニタリーマトリックスの列をバラバラにしたものをξ(グザイ)とおく。|ξ1|
ξ=|ξ2|
|ξ3|
H(P0,Q0)ξ−Wξ=0
を解くことが「固有値問題」。この固有値問題を解けば、大文字のP、Qを求めることが
でき、スペクトルの「振幅」と「振動数」がわかる。