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トランスナショナル カレッジ オブ レックス編 「量子力学の冒険」

量子力学の冒険

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トランスナショナル カレッジ オブ レックス編 「量子力学の冒険」

第三話 <W.Heisenberg> 「量子力学の誕生」メモ


・Hamiltonの正準運動方程式は、Newtonの運動方程式F=mq’’をp、qの微分の形で
表したもの。

   dq/dt=∂H/∂p


   dp/dt=−∂H/∂q


・Hは「ハミルトニアン」で、エネルギーをp、qの関数の形にしたもの。


   H(p、q)=(1/2m)p^2+V(q)


 単振動の場合、位置エネルギーは次式となる。

   V(q)=(k/2)q^2


 単振動のハミルトニアンは次式となる。

   H(p、q)=(1/2m)p^2+(k/2)q^2


 これを「Hamiltonの正準運動方程式」に入れる。

   dq/dt=∂H/∂p=∂/∂p((1/2m)p^2+(k/2)q^2))


        =p/m=v


 これは、dq/dt=q’が速度vであることを表す。


 もう一方は次式となる。

   dp/dt=−∂H/∂q=−∂/∂q((1/2m)p^2+(k/2)q^2))


        =−kq=F


 dp/dt=m(dv/dt)=mq’’なので、F=mq’’と同じことになる。


・Newtonの運動方程式とHamiltonの正準運動方程式は実質的には同じであるが、
Hamiltonの正準運動方程式のほうが数学的に美しい。


・Hamitonの運動方程式とf(p、q)の式を見比べて、fをHに書きかえる。

   dq/dt=∂H/∂p

   dp/dt=−∂H/∂q


   ∂f(p、q)/∂q=(2πi)/h(pf−fp)

   ∂f(p、q)/∂p=(2πi)/h(qf−fq)


          ↓


   ∂H/∂q=((2πi)/h)(pH−Hp)

   ∂H/∂p=−((2πi)/h)(qH−Hq)


 これをHamiltonの正準運動方程式と合体させると次式となる。

   dp/dt=−((2πi)/h)(pH−Hp)


   dq/dt=−((2πi)/h)(qH−Hq)


 これをpとqの関数のgを考えて一つにまとめると次式となる。

   dg/dt=−((2πi)/h)(gH−Hg)


 上式は「Heisenbergの運動方程式」と呼ばれている。


Newtonの運動方程式を書きかえた理由<三つの利点>
1.「エネルギーの保存則」が、どんな場合でも成り立つことが証明できる。
2.「Bohrの振動数関係」がどんな場合でも成り立つことが証明できる。
3.問題が「固有値問題」になる。


1.エネルギー保存

・エネルギーの保存がどんな場合でも成り立つか


 Heisenbergの運動方程式でgはp、qの関数であれば何でも良い。

   dg/dt=−(2πi/h)(gH−Hg)


 エネルギーを表すマトリックスハミルトニアンは、p、qの関数である。

   H(p、q)=(1/2m)p^2+V(q)



 Heisenbergの運動方程式のgをHとして考えると次式となる。

   dH/dt=−(2πi/h)(HH−HH)


 HH−HH=0なので、

   dH/dt=0


 となる。


・エネルギーの時間変化dH/dtが0であり、「エネルギーが時間変化しない」ので

どんな場合にもエネルギーが保存している。



 エネルギーHを各要素ごとに見る。

   Hnn’=H_nn’e^i2πνnn't

   (H_nn’:振幅)


・Hnn’は時間tを含むので時間変化するが、n=n’の時は時間変化しない。

・n=n’の時の振動数νnnは「nからnへ遷移した時の振動数」なので0になる。

   Hnn=H_nne^i2πνnnt=H_nne^i2πν0t=H_nn


マトリックスHが時間変化しないので、マトリックスHの要素のうち時間変化しない

n=n’の対角要素Hnnだけが値を持って他は全部0にならなければならない。

   |H11  0  0  ・・・|
   |    H22 0  ・・・|
   |     H33 ・・・|


 このマトリックスHの対角要素の値をW1、W2、W3・・・とすると、マトリックスHは
 次式となる。

   |W1  0  0  ・・・|
   |   W2  0  ・・・|
   |     W3  ・・・|


 ⇒エネルギーのマトリックスHは対角線マトリックスになる


 Hのマトリックス要素を、クロネッカーδnn’で表すと

   Hnn’=Wnδnn’


 となる。(δnn’:n=n’の時は1、その他は0)


2.Bohrの振動数関係

・Heisenbergの運動方程式からBohrの振動数関係が成り立つことを証明する。

   dg/dt=−(2πi/h)(gH−Hg)


 Heisenbergの運動方程式の中のgもマトリックスで、その要素は以下で表される。

   gnn’=Gnn’e^i2πνnn't


 Heisenbergの運動方程式を右辺と左辺に分け、それぞれの要素を見る。


 左辺dg/dtの要素は、

   (dg/dt)nn’=i2πνnn’Gnn’ei2πνnn't


 Gnn’ei2πνnn't=gnn’なので次式となる。

   左辺=i2πνnn’gnn’


 右辺を考える

   (−((2πi)/h)(gH−Hg))nn’


       =−(2πi/h)(Σ[n'']gnn’’Hn’’n’

         −Σ[n'']Hnn’’gn’’n’)


 エネルギーHは対角線マトリックスになるので

   Hnn’=Wnδnn’


 を代入すると次式となる。

   Hn’’n’=Wn’’δn’’n’

   Hnn’’=Wnδnn’’


   =−(2πi/h)(Σ[n'']gnn’’Wn’’δn’’n’

      −Σ[n'']Wnδnn’’gn’’n’)


 クロネッカーδn’’n’はn’’=n’の時だけ1になり、それい以外は0となる。
 δnn’’もn=n’’の時だけ1で他は0なので、Σ[n'']が消える。

   =−(2πi/h)(gnn’Wn’−Wngnn’)


   =−(2πi/h)(Wn’−Wn)gnn’


   =(2πi/h)(Wn−Wn’)gnn’


   =2πi((Wn−Wn’)/h)gnn’


 ここで、

   左辺=i2πνnn’gnn’

   右辺=2πi((Wn−Wn’)/h)gnn’


 なので、

   i2πνnn’gnn’=2πi((Wn−Wn’)/h)gnn’


   νnn’=(Wn−Wn’)/h


 となり、Bohrの振動数関係がいつでも成り立つことが証明された。


固有値問題

・スペクトルの「振幅」と「振動数」を求めるにはHeisenbergの運動方程式を解けば良いが、
Bornは運動方程式を解かずに直接Q、νを求める方法を見つけ、それが「固有値問題」。


<第一段階 小文字のp、qと大文字のP、Q>

・スペクトルの振幅Pnn’、Qnn’を集めてマトリックスを作る。

     |P11 P12 P13・・・|
   P=|P21 P22 P23・・・|
     |P31 P32 P33・・・|、


     |Q11 Q12 Q13・・・|
   Q=|Q21 Q22 Q23・・・|
     |Q31 Q32 Q33・・・|


・「振幅Pnn’、Qnn’を求める」ことは、この「マトリックスP、Qを求める」ことと
同じことになる。


・このマトリックスP、Qは次の性質がある。

   f(p、q)nn’=f(P,Q)nn’e^i2πνnn't


   「小文字の関数は、大文字の関数にe^i2πνnn'tをつければ良い」


・f(p、q)=pやf(p、q)=qの場合には以下となって良い

   pnn'=Pnn’e^i2πνnn't


   qnn'=Qnn’e^i2πνnn't


・たし算の場合を考える。

   (p+q)nn'=(Pnn’+Qnn’)e^i2πνnn't


  ⇒「小文字の関数は、大文字の関数×e^i2πνnn't」になる


・かけ算の場合を考える。

   (pq)nn'=Σ[n'']pnn''qn''n'


         =Σ[n'']Pnn’’e^i2πνnn''tQn’’n’e^i2πνn''n't


         =Σ[n'']Pnn’’Qn’’n’e^i2πν(nn''+n''n')t


         =Σ[n'']Pnn’’Qn’’n’e^i2πνnn't


         =(PQ)nn’e^i2πνnn't


  ⇒「小文字の関数は、大文字の関数×e^i2πνnn't」になる


・小文字のp、qの正準な交換関係を考える。

   (pq−qp)nn'=h/(2πi)


 左辺は以下となる。

   (pq−qp)nn'=(PQ−QP)nn’e^i2πνnn't


 ここで、正準な交換関係(pq−qp)nn'=h/(2πi)を使う。

   (PQ−QP)nn’e^i2πνnn't=(h/(2πi))δnn’


  n=n’の時、(PQ−QP)nn’=h/(2πi)

  n≠n’の時、(PQ−QP)nn’=0


・まとめ

   (PQ−QP)nn’=(h/(2πi))δnn’


 ⇒小文字のp、qで正準な交換関係が成り立っている時は、大文字のP、Qでも
  同じように正準な交換関係が成り立つ。


ハミルトニアンH(p、q)について考える

   H(p,q)nn’=H(P,Q)nn’e^i2πνnn't


 ここで、小文字のハミルトニアンH(p,q)が対角線マトリックスになっていると、
正準な交換関係の時と同じになる。

   H(p,q)nn’=Wnδnn’’


   H(P,Q)nn’e^i2πνnn't=Wnδnn’’


・まとめ

   H(P,Q)nn’=Wnδnn’


・大文字のP、Qが

 1.正準な交換関係を満たし
 2.ハミルトニアンH(P,Q)が対角線マトリックスになっている

時、小文字のp、qが「正準な交換関係」と「Heisenbergの運動方程式」を満たすことが
証明できる。


 ⇒上の1、2の条件を満たすような大文字P、Qを探すことで直接に「振幅」と「振動数」
を求めることができる。


  大文字のP、Q

     |P11 P12 P13・・・|
   P=|P21 P22 P23・・・|
     |P31 P32 P33・・・|、


     |Q11 Q12 Q13・・・|
   Q=|Q21 Q22 Q23・・・|
     |Q31 Q32 Q33・・・|


 を考え、このハミルトニアン

   H(P,Q)=P^2/(2m)+V(Q)


 が正準な交換関係

   PQ−QP=h/(2πi)1


 を満たし、対角線マトリックスになっているとする。


  この大文字のP、Qの要素を振幅として持ち、ハミルトニアンH(P,Q)の対角線
 要素W1、W2、W3・・・からBohrの振動数関係

   νnn’=(Wn−Wn’)/h


 により求めたνnn’を振動すとして持つ遷移成分を考え、さらにこのpnn'、Qnn'を
 要素として持つ小文字のマトリックスp、qを考える。


  これがHeisenbergの運動方程式を満足するか見る。

  運動量pについてのHeisenbergの運動方程式は次式となる。

   dp/dt=−(2πi/h)(pH−Hp)

 
  左辺は、

   (dp/dt)nn’=i2πνnn’Pnn’e^i2πνnn't


 で、Pnn’e^i2πνnn't=pnn'なので

   左辺=i2πνnn’pnn'


  右辺は、

   −(2πi/h)(pH(p,q)−H(p,q)p)


 であるが、H(p,q)は小文字の関数で、右辺全体としても小文字の関数なので
 「小文字=大文字×e^i2πνnn't」が使える。

   (−(2πi/h)(pH(p,q)−H(p,q)p))nn’


  =(−(2πi/h)(PH(P,Q)−H(P,Q)p))nn’e^i2πνnn't


  =−(2πi/h)(Σ[n'']Pnn’’H(P,Q)n’’n’

    
     −Σ[n'']H(P,Q)n’n’’Pn’’n’)e^i2πνnn't


  大文字のハミルトニアンH(P,Q)は対角線マトリックスになるので、

   H(P,Q)nn’’=Wnδnn’’


   H(P,Q)n’’n’=Wn’’δn’’n’


   =−(2πi/h)(Σ[n'']Pnn’’Wn’’δn’’n’

    
     −Σ[n'']Wnδnn’’Pn’’n’)e^i2πνnn't


 ここで、Wn’’δn’’n’はn’’=n’の要素以外は0、Wnδnn’’は
 n’’=nの要素以外は0なのでΣ[n'']が消える。


   =−(2πi/h)(Pnn'Wn’−WnPnn')e^i2πνnn't


   =(2πi/h)(WnPnn'−Pnn'Wn’)e^i2πνnn't


   =2πi((Wn−Wn’)/h)Pnn'e^i2πνnn't


   =2πiνnn’’Pnn’


 右辺=左辺となり、大文字のP,Qから作った小文字のpnn'は、Heisenbergの運動方程式
を満たしていることが証明された。


・まとめ
 「正準な交換関係を満たし」「ハミルトニアンが対角線マトリックスになる」ような
 大文字のP、Qが見つかれば、そこからスペクトルの「振幅」と「振動数」が求まる。



<第一段階 ユニタリー変換>

マトリックスP0、Q0を考える。

・このP0、Q0は正準な交換関係

   P0Q0−Q0P0=(h/(2πi))1


 を満たすものであればなんでもよい。


・P0、Q0のハミルトニアンH(P0,Q0)は対角線マトリクスにはならないが、
ユニタリー変換を使うと、P0、Q0が対角線マトリックスになる。


・ユニタリー変換とは、あるマトリックスをユニタリーマトリックスUではさむことを言う。

・ユニタリーマトリックスとは、

   U+U=UU+=1(単位マトリックス


 となるようなマトリックスのこと。


  「+」は「ダガー」というマークで、行と列を入れ替えて複素共役をとること


   |A B|+ =|A* C*|
   |C D|   |B* D*|
    

・H(P0,Q0)は対角線マトリックスではないが、うまくユニタリー変換すると
U+H(P0,Q0)Uが対角線マトリックスになる。

              |W1 0 0  ・・・|
   U+H(P0,Q0)U=|0 W2 0  ・・・|
              |0  0 W3 ・・・|


・単振動を例として考える。

  単振動の場合、P0,Q0のハミルトニアンH(P0,Q0)は以下となる。

   H(P0,Q0)=(1/(2m))(P0)^2+(k/2)(Q0)^2


          =1/(2m)P0P0+(k/2)Q0Q0


 これをユニタリーマトリックスU+、Uではさんで対角線マトリックスにできたとする。

              |W1 0 0  ・・・|
   U+H(P0,Q0)U=|0 W2 0  ・・・|
              |0  0 W3 ・・・|


  左辺に「単振動のハミルトニアンを入れて計算する。

   U+(1/(2m)P0P0+(k/2)Q0Q0)U


     =1/(2m)U+P0P0U+(k/2)U+Q0Q0U


 P0とP0の間、Q0とQ0の間にU+Uを入れる(U+U=1)。

     =1/(2m)U+P0UU+P0U+(k/2)U+Q0UU+Q0U


 ここで新しくU+P0U、U+Q0Uを

   P=U+P0U

   Q=U+Q0U


 とおくと、

   =1/(2m)P^2+(k/2)Q^2


 となり、次式となる。

                     |W1 0 0  ・・・|
   1/(2m)P^2+(k/2)Q^2=|0 W2 0  ・・・|
                     |0  0 W3 ・・・|


 勝手に選んだP0,Q0をユニタリーマトリックスU+、Uではさんだ

   P=U+P0U

   Q=U+Q0U


 が求めたかった大文字のP、Q、つまりスペクトルの振幅。


・このUを求める方法が「固有値問題」   

  U+H(P0,Q0)Uが対角線マトリックスになるのだから、

              |W1 0 0  ・・・|
   U+H(P0,Q0)U=|0 W2 0  ・・・|
              |0  0 W3 ・・・|


 となる。この両辺に左側からUをかけると、U+U=1なので、

             |W1 0 0  ・・・|
   H(P0,Q0)U=U|0 W2 0  ・・・|
             |0  0 W3 ・・・|


            |U11 U12 U13||W1 0 0  ・・・|
           =|U21 U22 U23||0 W2 0  ・・・|
            |U31 U32 U33||0  0 W3 ・・・|


            |U11W1 U12W2 U13W3|
           =|U21W1 U22W2 U23W3|
            |U31W1 U32W2 U33W3|

 となる。


 この右辺は、1列目はW1、2列目はW2、3列目はW3だけがかかっているので、列を
 バラバラにして考えて良い。
 ユニタリーマトリックスの列をバラバラにしたものをξ(グザイ)とおく。

     |ξ1|
   ξ=|ξ2|
     |ξ3|


   H(P0,Q0)ξ−Wξ=0


 を解くことが「固有値問題」。この固有値問題を解けば、大文字のP、Qを求めることが
 でき、スペクトルの「振幅」と「振動数」がわかる。