- 作者: ファインマン,富山小太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/02/07
- メディア: 単行本
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第22章 音、波動方程式 メモ
22-1 波
・二つの重要な現象
1.時間における干渉
振動数の異なる音源からの音波の時間的な干渉で、音が大きくなったり小さく
なったりする唸りが生ずる2.波の様式に関するもの
波が与えられた体積内に閉じ込められ、壁で反対し、波が前後に進む結果生じる
・時間t後の電場は、ctの距離だけ動くので、電場はx−ctの関数である
・f(x−ct)のような関数が波を表す
⊿x=c⊿tの場合
f(x−ct)=f(x+⊿x−c(t+⊿t))
となる。
・重ね合わせの原理は音の場合にも成立する。
・音も光も、空気中では振動数にほとんど無関係な速さで進む。
22-2 音の伝搬
・運動により空気が圧縮され、圧力の変化が生じ、まわりの空気をおす。
この空気が圧縮され、再び余分の圧力を生じ、波が伝わる。
・変数:空気の変位、密度、圧力、速度、加速度
空気の変位が時間とともにどう変わるかわかれば、速度と加速度はそれから求められる
・1次元の波を考え、音源から十分遠く離れ、波面はほとんど平面に近いとする。
変位Χがxとtだけに依存し、y、zによらないと仮定する。
⇒空気の状態はΧ(x、t)で記述される。
・音が発生するには、密度や圧力の変化する領域が、分子が他の分子に衝突すること
なしに進みうる距離(平均自由行程)に比べてずっと大きいことが必要。・個々の分子の性質を使って表すことはできない。
・圧力P,密度ρはxとtの関数
・気体の性質が距離に関してあまり急激に変わらない時にのみ正しい
22-3 波動方程式
・音波の現象の物理学はつぎの三つの特質をもつ
1.気体は動き、密度が変わる
2.密度の変化が圧力変化に対応する
3.圧力の等しくないことが気体の運動を引き起こす
<2の特質>
・物質が平衡状態での圧力をP0、それに対応する密度をρ0とする。
・媒質の圧力Pと密度ρは、関数P=f(ρ)で結びついている。
・平衡状態の圧力P0はP0=f(ρ0)で与えられる。
・音がある場合、平衡状態からの圧力変化は微小
・圧力を測る単位はバール(bar)で、1バール=10^5ニュートン/m^2
(1atm=1.0133バール)・音の圧力レベルI
I(音圧レベル)=20log10 P/P標準 (デシベル) (22.1)
標準圧力 P標準=2×10^−10バール
圧力振幅 P=10^3 P標準=2×10^−7バール
⇒60デシベルの中位の強さの音に対応
・音がやってきた場合の圧力変化は、平衡状態の圧力(平均1気圧)に比して
ひじょうに小さく、変位と密度変化もそれに応じて極めて小さい。・余分の圧力Pe余分の密度ρeに比例する
Pe=κρe ただし κ=f’(ρ0)=(dP/dρ)0 (2) (22.4)
<1の特質>
・変位がxとともに変わるとすれば密度も変化する
ρe=−ρ0 ∂Χ/∂x (1) (22.9)
<3の特質>
・圧力により生じる運動に関する式
ρ0∂^2Χ/∂t^2=−∂Pe/∂x (3) (22.11)
・(22.4)式を使い(22.11)式からPeを消去する
ρ0∂^2Χ/∂t^2=−κ∂ρe/∂x^2 (22.12)
・(22.9)式を使いρeを消去する
∂^2Χ/∂t^2=κ∂^2Χ/∂x^2 (22.13)
・cs^2=κとすると、物質内の音の行動を記述する波動方程式が導かれる。
∂^2Χ/∂x^2=(1/cs^2)∂^2Χ/∂t^2 (22.14)
22-4 波動方程式の解
・波の速度vがcsに等しければ、f(v−vt)も波動方程式を満たし、力学の
法則より、音のじょう乱は速度csで伝搬する。cs=(κ)^1/2=(dP/dρ)0^1/2
・波動方程式がΧに関して線型
22-5 音の速さ
・音波の場合、圧力と温度は断熱的に変化する。
・圧縮された領域から希薄な領域への熱の流れは、波長が平均自由行程に比べ十分
長いとすると、無視できる。
・音波における圧力の密度に対する実際の変化は、断熱変化に対応し、音の速さは
気体の温度だけに依存し、圧力や密度などによらない。cs^2=γkT/m=γRT/μ (22.24)
・分子の速さの2乗平均を<v^2>とすると
kT=m<v^2>/3 (22.25)
の関係があるので、cs^2=γ<v^2>/3となり、
cs=(γ/3)^1/2・v平均 (22.26)
と表せる。
・音の速さは分子の速度の大きさと大体同じ程度のもので、実際はその平均の
速さよりちょっと小さい。