- 作者: ファインマン,富山小太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/02/07
- メディア: 単行本
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第25章 ハーモニクス メモ
25-1 音楽
・雑音(騒音):近くにある物体の不規則な振動により生ずる鼓膜の一種の
不規則な振動に対応するもの・音楽:持続ずる音あるいは楽音の存在が特徴
・空気の圧力という点からみたとき、音楽が雑音と違うのは周期性があること
・音楽の三つの特性:大きさ、高さ、音質
大きさ:圧力変化の大きさに対応
高さ :基本的な圧力関数で繰り返しの時間に対応
音質 :繰返される図形の構造に関係
・振動する弦を往ったり来たりする波の繰り返しの時間は、波が弦の2倍の長さ
を完全に伝わるのに必要な時間Tに等しくなる。
25-2 フーリエ級数
・周期Tの任意の周期関数f(t)は数学的に次のように表される
f(t)=a0
+a1cоsωt+b1sinωt
+a2cоs2ωt+b2sin2ωt
+a3cоs3ωt+b3sin3ωt
+ ・・・ + ・・・ (25.2)
ω=2π/Tで、a,・・・,b・・・はf(t)の振動の中に各成分の振動が
どれほど多く含まれているかを示す定数
・(25.2)の級数をf(t)に対するフーリエ(Fourier)級数という。
25-4 フーリエ係数
1 ∫[0,T]sinnωt・cоsmωtdt=0 (25.11)
2 ∫[0,T]cоsnωt・cоsmωtdt=0(n≠m)、T/2(n=m) (25.12)
3 ∫[0,T]sinnωt・sinmωtdt=0(n≠m)、T/2(n=m) (25.12)
4 f(t)=a0+Σ[n=1,∞]ancоsnωt+Σ[n=1,∞]bnsinnωt
(25.13)
5 a0=(1/T)∫[0,T]f(t)dt (25.14)
an=(2/T)∫[0,T]f(t)・cоsnωtdt (25.15)
bn=(2/T)∫[0,T]f(t)・sinnωtdt (25.16)
・(25.13)を複素数表示すると次式となる
f(t)=Σ[∞,-∞]cne^inωt (25.17)
係数cnは
cn=(1/T)∫[0,T]f(t)e^-inωtdt (25.18)
で与えられれ、a0、an、bnとcnの関係は
a0=c0、an=cn+c-n、bn=(cn−c-n)/i (n?1)
・周期的な波を正弦波、余弦波の成分に解析する方法をフーリエ解析、個々の
項はフーリエ成分とよばれる。
25-5 エネルギーの定理
・波のエネルギーは振幅の2乗に比例する
∫[0,T]f^2(t)dt
=∫[0,T][a0+Σ[n=1,∞]ancоsnωt
+Σ[n=1,∞]bnsisnωt]^2dt (25.22)
=Ta0^2+(T/2)Σ[n=1,∞](an^2+bn^2) (25.23)
・波の全エネルギーがフーリエ成分のエネルギーの総和になっている。
26-6 非線型の応答
・装置が線型の場合
xout(t)=Kxin(t) (25.4)
Kはtにもxinにも無関係な定数
・装置が近似的には線型であるが、厳密には線型でない場合
xout(t)=K[xin(t)+εxin^2(t)] (25.25)
εは1に比べて小さな量
・xin=cоsωtとおく
xout=K(cоsωt+εcоs^2ωt) (25.26)
=K(cоsωt+ε/2−(ε/2)cos2ωt) (25.27)
・応答(出力)はゆがみ、純音ではなくハーモニクスをもつ
・応答の中には入力の基本振動数成分だけでなく、その第二のハーモニクスの
成分も含む・定数項Kε/2は平均値のずれに対応するもので、平均値のずれる仮定を
整流作用とよぶ・非線型の応答は、整流作用をし、入力の振動数のハーモニクスをつくる
・非線型の応答から生ずるもう一つの効果は変調
・入力関数が二つ(あるいはそれ以上)の純音を含むとき、出力はそれらの
ハーモニクスだけでなく、ほかの振動数の成分を含む・xin=Acosω1t+Bsinω2tとし、ω1とω2は調和の関係にない
1次の項(入力のK倍になるもの)に加え、出力の中に
xout=Kε(Acosω1t+Bsinω2t)^2 (25.28)
=Kε(A^2cos^2ω1t+B^2cos^2ω2t
+2ABcosω1tcоsω2t) (25.29)
で与えられる成分が含まれている。
・積の項Bcosω1tcоsω2tには二通りの見方ができる
(a)二つの振動数が大幅に違っていると(ω1>ω2の場合)、この積の項は振幅が
変化する余弦振動を表すABcosω1tcоsω2t=C(t)cоsω1t (25.30)
ただし
C(t)=ABcosω2t (25.31)
このとき、cоsω1tの振幅がω2の振動数で変調されているという
(b)積の項を次のように書ける
ABcosω1tcоsω2t
=(AB/2)[cоs(ω1+ω2)t+cоs(ω1−ω2)t] (25.32)
今度は二つの新しい成分ができた。一つは和の振動数(ω1+ω2)をもち、もう
一方は差の振動数(ω1−ω2)をもつ。
・ω1>ω2の場合は(ω1+ω2)も(ω1−ω2)も大体等しいので両者の間に唸りが
観測される。・この唸りは平均の振動数ω1の振動の振幅を、差の振動数2ω2の半分で変調する
効果をもつ