- 作者: アンソニージー,杉山滋郎,木原英逸,佐々木光俊
- 出版社/メーカー: 白揚社
- 発売日: 1989/12/01
- メディア: 単行本
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第11章 対称性の勝利 メモ
○素粒子の森の双子
・中性子:核の強い力に関するかぎり、陽子と同じように振る舞う
電気的には中性
質量は陽子の質量とほとんど同じ・放射能を示す実体は、不安定な核であり、それが安定になろうとする過程でいろいろな種類の粒子を放出する。
○たんなる捕虜などではない
・原子核は陽子と中性子からできている。
・原子の科学的性質は、原子核の外側を回る電子の数で決まる。
・電子の数は陽子の数と等しく、全体として原子は電気的に中性。
・中性子は陽子と異なる数が含まれうる
・中性子なしではあ、原子核は安定に存在できない。
○バランスをとる
・核内の陽子と中性子の間には強い引力が働いている。
・陽子と中性子を核子と総称し、核子間の相互作用を「強い相互作用」と呼ぶ。
・強い相互作用は電磁的相互作用よりも100倍程強い。
・電磁気的相互作用は弱いが、その力は遠くまで及ぶ・強い相互作用:近距離力(ショートレンジ・フォース)
・電磁気的相互作用:遠距離力(ロングレンジ・フォース)
・強い力と電気力の伯仲には、中性子の存在が大きな役割をしている。
・安定な原子核の中で、電気的に中性な中性子のために、強い力だけが電気的な反発力をもちこむことなしに働くことができる。
○自然が対称性を表す
・中性子の質量と陽子の質量が近い値をもつのはなぜか?
(違いは0.1%)
・二つの陽子間に働く力の大きさと、中性子と陽子間、中性子と中性子間に働く力の大きさとが近似的には同じ。
→電荷の有無を無視すれば、中性子は陽子と全く同じように振る舞う・回転対称性により、陽子は中性子に「回転される」のであり、強い相互作用はこの回転に対して不変
・この対称性は「アイソスピン」と呼ばれ、これに対応する群はSU(2)
・この群は二つの対称を互いに変換することとの関連を示す
○内的世界への眺望
・アイソスピン回転は、抽象的な内部空間での回転。
・アイソスピン対称性は、強い相互作用にのみ適用される。
○群論の真価
・強い相互作用をするどんな粒子も、SU(2)の表現に従わねばならない。
・同じ表現に属している素粒子は、多重項の粒子と呼ばれる。
・多重項のメンバーである粒子は、すべて同じエネルギーをもたねばならない。
・強い相互作用をしている素粒子はアイソスピンを伴い、アイソスピンを保存しないような強い相互作用の過程は禁じられている。
・許されているさまざまな過程の相対確率は、群論により決められる。
○無知を封じ込める
・対称性は、強い相互作用の理論の構築といった試みを完全に迂回させてくれる。
・弱い相互作用に注目している物理学者たちは、対称性を用いることで、強い相互作用をするモンスターを押さえこむことができた。
○結婚仲介屋
・場におけるエネルギーはかたまりとなっていて、電磁場の場合の光子が重力場の場合には重力子と名付けられている。
・二つの電子が存在しているとき、一方の電子はある確率振幅の光子を放出し、他方の電子は光を吸収している。
・この過程はすばやく繰り返されていて、二つの電子の間のこのような光の交換が、電気力として観測される。
→力の起源は粒子の量子交換に帰せられる
・おおむね静止していると見なされる二つの核子において、一方の核子はある確率振幅でパイオンを放出し、他方の核子がそれを吸収する。
・パイオンは核子の間を行ったり来たりする。
○横領者
・ある過程でのエネルギーとその過程に要する時間とを、望むだけの精度で測定することはできない。
・核子がパイオンを放出する時刻を正確に指定してしまうと、そのときのエネルギーは不確定となり、エネルギーの保存があいまいになる。
・パイオンがより多くのエネルギーを運び去ろうとすればするほど、それだけ素早く吸収されていく。
・パイオンが光速度で移動しても、放出と吸収の間に到達できる距離は大きくない
→核力の近距離性を示す。・核力の到達距離は、パイオンの質量により決まる。
・パイオンが取り出しうる最小エネルギーは、パイオンの静止質量に相当するエネルギーで、この最小エネルギーがパイオンが一つの核子から他方の核子へと移ろうとするときの最長時間を決める。
・核子の到達距離を測ることによりパイオンの核子の質量が予言された。
・電磁相互作用が長距離力であるのは、光子が質量のない粒子であったことによるもの
・重力相互作用も遠距離力であることから、重力子も質量のない粒子であると考えられている。
○戦後のブーム
・ストレンジネスが強い相互作用においては保存される。
・電荷のように、ソトレンジネスという保存量が存在する。
・強い相互作用によってだけ運ばれる一つの物理的属性。
○名前の由来
ー核子:陽子と中性子
ーバリオンー|
| ーハイペロン
ハドロンー|
|ーメソンたとえばパイオン光子
○秩序づけ
・すべてのハドロンはアイソスピン多重項に属さねばならない
→すべてのハドロンは、アイソスピンの多重項として整理される。
○物理学のサイコヒストリー
・似たような粒子の集団があることより、自然はそのデザインとして、アイソスピンよりも大きな対称性を利用している
・基本的作用がある変換群のもとで不変であるならば、たがいに移りうる量子状態が存在し、その状態は群の構造として表現される。
・こうした量子状態を粒子として観測する。
・対称性が厳格であれば、たがいに移り変わる粒子は同じ質量をもたねばならない。
○自然の裏切り
・バリオンはSU(3)の三次元表現ではなく、八次元表現。
○ニルヴァーナへの八つの道
・SU(3)の群論を使うと、オクテットは1組の三つ子と二組の双子と一組の一人子に分かれる。(8→3+2+2+1)
・八つのバリオンのうち、Σハイペロンはアイソスピン三重項をなし、核子と[I]ハイペロンは二重項、Aハイペロンは一重項をつくる。
・メソンも同じ
○家を離れる必要はない
・マレー・ゲルマンは、対称性の考察により、知られていなかった共鳴状態の存在とそのすべての性質を予言した。
○スリー・クォークス
・なぜ自然はSU(3)の三重項、三次元表現を使わないのか?・自然は既約表現を利用しており、それに対応する基本粒子が存在する
アップ・クォーク、ダウン・クォーク、ストレンジ・クォーク
・三つのクォークはSU(3)群の基本表現を与える。
・基本表現から別の表現を構成する群論的手続きは、クォークの結合として視覚化される。・物理学者たちはクォークの存在を確信しているが、それはハドロンの中に永久に閉じこめられている。
・クォークはハドロンからたたき出すことができない。
・二つのクォークがたがいに近接すると、あたかも自由であるかのように振る舞い、ほとんど相互作用しない。
・ひき離そうとすると、強い力が突然それらを一緒にさせるように働く。