ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ファインマン物理学Ⅳ 電磁波と物性

ファインマン物理学〈4〉電磁波と物性

ファインマン物理学〈4〉電磁波と物性

第21章 曲がった空間 メモ

20-1 2次元の曲がった空間

・空間と時間(時空)は大きな質量の近くでは曲がっている。
 物体が見られるような運動をするのは、この曲がった時空の中で物体が”直線”にそって進もうとするため。


・重力の影響、時空、曲がった時空


・「幾何学的な測定」により空間に何か問題があるような、平面上の幾何学とは幾何学が違う空間を「曲がった空間」と定義する。


・球面上では内角が三つとも直角な三角形もある。
・球面上では、三角形の角の和は常に180°よりも大きい。
 余剰分は三角形の面積に比例する。三角形の面積が非常に小さい時は180°に近くなる。

・球面上の円周は半径の2π倍よりも小さい。
 (球面上に沿った半径は、本当の半径よりも長い)
・円周の長さCを2πで割り

   rpred=C/2π    (21.1)


 とする。球面に沿う半径をrmeas、余剰の半径をrexcessとすると次式となる。

   rmeas−rpred=rexcess    (21.2)


・曲がった空間:幾何学的な差が生じる空間
        (三角形の角の和が180°と異なる、円周を2πで割った値が半径と等しくない、正方形が閉じた形にならない)


・鞍の形をした面上の円は、円周は2πrで計算したよりも大きくなり、C/2πよりも小さく、余剰な半径は負となる。

・球面や西洋梨などの面はすべて「正」の曲率をもつ。
・鞍の形の面などは「負」の曲率をもつ。


ユークリッド幾何の規則が成り立たなくて正あるいは負の食い違いを示す空間を曲がった空間という。


・円筒は曲がっていない。
・円筒上では、局所的な測量では空間が曲がっていることを知り得ない。
 ⇒空間は曲がっていない

・真正(intrinsic)曲率:局所的領域だけにおける測量によって知ることができる曲率のこと
 (円筒は真正曲率をもたない)


21-2 3次元空間の曲率

・空間の中に与えられた1点から等しい距離にある点をつらねて一つの球が決定する。
 この球面上に細かい正方形の格子を張りめぐらせてせその小さな面積を足しあわせ、球の面積を測定する。
 全面積Aは4πと半径の2乗との積なので、予測される半径は√(A/4π)で求められる。
 測定した半径から予測された半径を引いたものをとり、これを余剰半径とする。

   rexcess=rmeas−(測定した面積/4π)^1/2


 上式は、3次元世界の平均曲率。


21-3 我々の空間は曲がっている。

アインシュタインは空間が曲がっていると言い、その曲率の原因は物質であると言った。
・物質は連続的に分布し、場所により好きなだけ変化しているとする。

<空間の平均曲率に関するアインシュタインの法則>
・物質が存在する空間領域があるとき、その中の密度が一定であるような充分小さな球をとる。
 その球の「余剰半径」は球の中の質量に比例する。

   余剰半径=rmeas−√(A/4π)=GM/3c^2    (21.3)


 ここでGは重力定数、cは光速度、M=4πρr^3/3は球の中の質量。


・地球の表面のずっと外における平均曲率はゼロ。曲率成分のすべてがゼロであることを意味しない。
・中に質量がない球の表面をとれば、その上の平均はゼロということ。
・曲率のいろいろの成分と平均曲率の場所による変化の間にはある関係が存在する。
・あらゆる場所の平均曲率がわかれば、各点における曲率を詳しく知ることができる。
・地球の外の平均曲率は高さにより違うので、空間は曲がっている。
 この曲率が重力として観測される。


・物質のかたまりがあるところで3次元空間は局所的な曲率をもつ。



21-4 時空の幾何学

特殊相対性理論より、空間の測定と時間の測定とは関連している。

・宇宙船で飛んでいる人の時計は我々の時間よりも”ゆっくり”進む。


<時空における直線>
・空間における直線に相当するものは、時空では一様な速度で一定の方向に進む運動のこと。
・空間における最短距離に相当するものは、時空においては”最長”の時間。
・直線運動は、時計をある地点、ある時刻から別の地点、別の時刻へ移すときにその時計の時間の読みが最大になるような運動。


21-5 重力と等価原理

等価原理の基礎>
・もしも完全に一様な重力場ならば、それは一定の加速度をもつ装置の中で完全にまねすることができる。
・宇宙船内にいる場合(宇宙船の外を観察できず、エンジン音等がないとする)、宇宙船が1gで加速しているのか、地上にとどまっているのか区別できない。



21-6 重力場における時計の速さ

・加速しているロケット船の先端に時計A、後端に時計Bを固定する。
 先端の時計が1秒ごとに閃光を発し、後端で閃光の到着を時計Bの読みと比べる。
 第1の閃光は距離L1を、第2の閃光はより短い距離L2を通過する。
 (L2>L1となるのは、ロケットが加速しているため、第2の閃光のときはより大きな速さになっているから)
 第2の閃光の方が短い時間で達するため、これらの閃光が時計Bにたっするときの時間間隔は1秒よりも短い。
 ⇒ロケット船が加速されているとき、後端の時計に比べて先端の時計は速く進む。


・ロケット線が地球の重力場の中で静止していても「同じことがおこる」。
・高い棚の上にある時計の方が、棚の下にある時計よりも速く時を刻む。
重力場の中では、ちがう場所においた時計はちがう速さで進む。
・高いところにおいた時計はすべて速く進むように見え、心臓の鼓動もその他すべても速く進む。
・誰かが押してくれない限り、重力場と加速度座標系とは区別できない。


・光源と受信器の相対速度をvとすると、受信された周波数ωと発信された周波数ω0の関係は、

   ω=ω0(1+v/c)/√(1−v^2/c^2)    (21.4)


 である。

・加速しつつあるロケット船において、発信器と受信器は常に同じ速度。
 加速度をg、光がAから高さの差がHのBへ達する時間をtとする。
 ロケットはその間gtだけ速度を得て、この時間は約H/c。
 光がBに達する間にロケット船の速さはgH/c(=v)だけ増す。
 加速度もロケット船の長さも充分小さく、速度がcに比して小さいとするとv^2/c^2の項は無視できる。

   ω=ω0(1+gH/c^2)    (21.5)


 を得る。

 宇宙船の中の二つの時計に対して関係式は、

   (受信される周波数)=(発信される周波数)(1+gH/c^2) (21.6)


 となる。Hは受信器の上の送信器の高さ。


等価原理により、自由落下加速度がgの重力場では高さがHだけ異なる二つの時計の間に、これと同じ関係が成り立たなければならない。


21-8 曲がった時空の中の運動

<重力下における運動の法則>
・一つの場所から他の場所へ移動する物体は、その物体と共に移動する時計が、ほかの可能な経路を通ったときよりも長い時間を与えるような経路をとる。
・運動する時計が刻む時間は”固有時間”とよばれ、自由落下の軌道はその物体の固有時間を最大にするようなもの。


・運動している時計の余分な速さが

   ω0gH/c^2    (21.13)


 であるとする。運動の速度のための正の符号をもった補正がある。

   ω=ω0√(1−v^2/c^2)


 速度が常に光速度よりもずっと小さい場合

   ω=ω0(1−v^2/2c^2)


 となり、時計の速さの減少は

   −ω0v^2/2c^2     (21.14)


 となる。(21.13)と(21.14)の2項を組み合わせると

   ⊿ω=(ω0/c^2)(gH−v^2/2)    (21.15)


 運動する時計のこのような振動数変化により、静止した時計が時間dtを刻む間に運動している時計は

   dt[1+(gH/c^2−v^2/2c^2)]    (21.16)


 の時間を刻む。
 軌道全体についての余剰な時間はこの余剰項を時間に関して積分したもの

    1/c^2(∫(gH−v^2/2)dt    (21.17)


 であり、これは最大値をとる。


 上式でgHは重力ポテンシャルφである。物体の質量をm、定数因子−mc^2を掛けると、負の符号は極大を極小にかえるので、運動する物体の満たすべき条件は、

   ∫(mv^2/2−mφ)dt=極小     (21.18)


 を与える。ここで被積分関数は運動エネルギーと位置エネルギーの差。
 最小作用の原理において任意のポテンシャルの中における物体に対するニュートンの法則は(21.18)の形に書かれる。


21-9 アインシュタインの重力理論

<重量の中における運動の法則>
・粒子は常に最も長い固有時間−”最も短い距離”に類似する時空の距離−がかかるような運動をする。


<重力についての二つの法則>
(1) 質量の存在により時空はどのような幾何学的変化を受けるか
  ―余剰半径により定義された曲率は、式(21.3)のように球面内に含まれる質量に比例する。
  ⇒アインシュタインの場の方程式


(2) 重力以外の力がないとき、物体はどのような運動をするか
  ―物体は、初期条件と終末条件を結ぶ2点間の固有時間が極大になるような経路をとって運動する。
  ⇒アインシュタインの運動法則


重力場では時間の尺度が場所によって変わるように、長さの物差しも変化する。
・空間と時間が大変密接に混ざり合っているので、時間的に起こった事柄が空間的に何等の影響も与えないことはあり得ない。


<重力の法則についてのアインシュタイン理論の内容>
・時間と長さの尺度はそれを測る空間的位置と時間に依存する。
 測った球の面積から予言された半径√(A/4π)を定義できるが、実測された半径はこれよりも大きく、その差は球の中に含まれる質量に比例(比例定数:G/3c^2)する。
 この考えにより曲率が定義される。
 曲率はそれを見ている人がどのような運動をしていても同じでなければならない。
 この曲がった時空において、物体は”直線”(固有時間が極大になる軌道)上を運動する。