ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スティーヴン・W.ホーキング,Stephen W. Hawking,林一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1995/04/01
- メディア: 文庫
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第9章 時間の矢 メモ
・科学法則は過去と未来を区別しない。
・科学法則はC,P,Tの操作に対して不変。
C:粒子と反粒子の入れ換え
P:鏡像をつくり、右と左を入れ換えること
T:すべての粒子の運動方向を逆にすること
・普通の生活では実時間の前向きと後ろ向きの方向の間には大きな違いがある。
・熱力学の第二法則
どんな閉じた系の中でも、無秩序あるいはエントロピーは時間とともに常に増大する。
・無秩序、エントロピーの増大時間の矢と呼ばれる
・三つ時間の矢
(1)熱力学的な時間の矢・・・無秩序あるいはエントロピーの増大する時間の方向
(2)心理学的な時間の矢・・・過去は憶えているが未来は憶えていないこと
(3)宇宙論的な時間の矢・・・宇宙が膨張している方向
(1)熱力学的な時間の矢
・無秩序はつねに秩序状態よりも多い
・系が秩序の大きい状態という初期条件にしたがっているとき、無秩序は時間とともに増大する傾向にある。(2)心理学的な時間の矢
・脳の内部で熱力学的な時間の矢により決定されている。
・無秩序が時間ととともに増大するのは、われわれが無秩序の増大する方向に沿って時間を測るから。(3)宇宙論的な時間の矢
・宇宙の可能な経歴が無境界条件を満たしているとき、宇宙は有限だが境界、縁、特異点をもたない。
・その場合、時間のはじまり時空の中の正常な、なめらかな一点であり、宇宙は非常になめらかで秩序ある状態で膨張をはじめる。
・無境界条件は、密度と粒子の速度のゆらぎが不確定性条件のそむかぬ限度で、できるかぎり小さくなることを意味する。
・宇宙はなめらかで秩序ある状態から出発し、時間がたつにつれてでこぼこで無秩序になる。
・無境界条件は、収縮期がかならず膨張期の時間反転でなくてはならないとは要求しない。
・宇宙が再収縮をはじめるとき、あるいはブラックホールの中でも、熱力学的および心理学的な時間の矢はけっして反転しない。
・なぜわれわれは熱力学的な時間の矢と宇宙論的な時間の矢が同じ方向を指していると観測するのか
・なぜ無秩序は、宇宙が膨張するのと同じ時間の方向に増大するのか
・われわれはなぜ膨張期にいて、収縮期にいないのか
↓
知的生命の働きには強い熱力学的な時間の矢が必要なため、宇宙の収縮期には存在しえない。・宇宙の膨張が無秩序の増大を引き起こしているのではなく、境界条件が無秩序を増大させるのであり、膨張期の諸条件だけが知的生命に適している。