ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

宇宙が始まる前には何があったのか?

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)

ローレンス・クラウス 「宇宙が始まる前には何があったのか?」メモ


第4章 ディラックの方程式

アインシュタインの宇宙項
一般相対性理論の方程式
 左辺:宇宙の曲率を記述し、物質と放射に働きかける重力の強さを表す
 右辺:宇宙に存在するさまざまなタイプのエネルギーと物質の密度を表す


方程式の左辺に小さな定数項を付け加えること
=物体間の距離が大きくなるにつれて弱まる引力的な重力に加え、全空間でつねに一定の強さであるような、小さな斥力を付け加えること

・その斥力の強さは全空間で一定のため、銀河系ほどのスケールになれば、遠く離れた天体同士に作用する引力に対抗できるほどの強さになる。
→「宇宙項」、今日では「宇宙定数」


・宇宙項を左辺から右辺に動かすと、「無」を表すようになる。
・空間の中にある領域を考え、その領域の内部に存在するすべて(チリ、ガス、人間、その領域を進む放射を含めたすべて)を取り去ったとき、あとに残された空っぽの空間になんらかの重さがあるなら、それを宇宙項として表すことができる。


量子力学的拡張
・原子内の電子は、「量子準位」とよばれる安定した軌道を占める
・電子が準位間を移動するには、特定の離散的な値の振動数をもつ光(量子)だけを吸収・放出しなければならない。
・電子は粒子として振る舞うだけでなく、空間に広がる波としても振る舞う。
・電子の性質を測定して得られる結果は確率的にしか予測できず、同時に正確に測定できない物理量の組み合わせがある(ハイゼンベルクの「不確定性原理」)。
シュレーディンガーハイゼンベルクの理論が記述するのは、古典的な系(ニュートン力学)からの類推で作り上げられた系。


・電子が光の速度よりもはるかに小さな速度で運動していれば、シュレーディンガーの方程式は電子の振る舞いを正確に記述する。
・電子がもっと大きな速度で運動する場合、行列を用いてシュレーディンガー方程式を書き換えればよい。
・そのような書き換えを行えば、相対性理論量子力学を矛盾なく組み合わせ、電子が大きな速度で動くときの系のふるまいを記述できる。


反粒子の存在
ディラックの方程式が正しいとすると、「反粒子」が存在する。
陽電子は電子と同じ性質をもち、電荷の符号が電子と逆の粒子
 →電子の「反粒子
・自然界のほとんどすべての素粒子には反粒子が存在する。
・粒子と反粒子が出会うと、両者は互いを打ち消しあって消滅し、後には放射だけが残る。


○時間を逆行する電子
・もしも物体が光の速度よりも大きな速度で運動できるとしたら、その物体は時間を逆行するように振る舞う。


ハイゼンベルク不確定性原理
・位置と速度のような物理量のペアについて、同時に正確な値を得ることはできない。
・ある有限な時間について測定を行えば、その系の全エネルギーを正確に求めることはできない。
  ↓↓↓
・高い精度で粒子の運動速度を測定することができないほど短い時間であれば、その粒子は光よりも速い速度で動いてかまわない。
・光よりも速い速度で動いているとしたら、その粒子は時間を逆行しているように振る舞う。


・測定不可能なほど短時間に出現しては消滅する粒子のことを「仮想」粒子という。
・宇宙の特徴のほとんどすべては、仮想粒子の間接的な影響で生じている。
ディラック方程式を使えば、水素の近くに現れては消えるあらゆる仮想粒子が、水素原子のスペクトルに及ぼす影響を高精度で計算でき、観測結果と10億分の1またはそれ以下の精度で一致する。
→仮想粒子は実在する。


クォーク間で起きていること
・物質のほとんどは陽子と中性子からできており、陽子と中性子クォークからできている。
・陽子の内部には3個のクォークがあり、クォーク間に働く強い力を伝える粒子と場を反映した仮想粒子が、たえず生まれたり消えたりしている。
・仮想粒子が自発的に生じたり消えたりしながら、場は陽子の内部でお互い同士やクォークと相互作用する。
・陽子の静止エネルギーの大半は、仮想粒子が作り上げる場からの寄与。


○空っぽの空間のエネルギー
・系のエネルギーの測定値は、それを見ている時間の長さに反比例する。
・エネルギーの高い粒子であればあるほど、何もないところから出現したのであれば、より短い時間で消滅しなければならない。
・ほとんど無限小の時間で消滅するのであれば、粒子はほとんど無限大のエネルギーを持てることになる。
プランク時間よりも短い時間は考えないことにし、それに相当するエネルギーかそれより低いエネルギーを持つような仮想粒子だけを考えれば、仮想粒子が空っぽの空間に及ぼすエネルギーの推定値として有限な値が得られる。
→こうして得られた推定値は、暗黒物質を含めた宇宙に存在する物質すべてのエネルギーよりも10^120倍も大きい。
・この問題は未解決で、今日の物理学におけるもっとも基本的な未解決問題。