ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

宇宙が始まる前には何があったのか?

 

宇宙が始まる前には何があったのか?

宇宙が始まる前には何があったのか?

 

ローレンス・クラウス 「宇宙が始まる前には何があったのか?」メモ

第10章 物質と反物質の非対称

・空っぽの空間は複雑
・直接的には観測できないほど短時間のうちに、仮想粒子が生まれては現れて消えていく世界。

・仮想粒子は、量子的な系が持つ基本的性質を体現している。
 →誰も見ていなければ、何をやってもよい。
・量子ゆらぎ:系が、それを取りうるあらゆる状態間をつねに動き続ける。
・ほんの短い時間に、何もないところからつねに何かが生まれている。
・量子的な系が、エネルギー保存即に照らして違法な活動を許されるのは、限られた短い時間だけ。

 

・静電場が生じるのは、その場を生み出している荷電粒子が、全エネルギーが事実上ゼロであるような仮想粒子を放出しているから。
・それらの仮想粒子のエネルギーはゼロなので、消滅することなく宇宙の果てまで進むことができる。
・多くの仮想粒子を重ね合わせることで生じる場は、実在する。

・条件次第では、空っぽの空間から質量を持つ実在の粒子が合法的に飛び出すこともある。

 

ブラックホールの蒸発
ブラックホールが粒子を放出する。

ブラックホールの中心部を取り囲むように「事象の地平線」と呼ばれる半径がある。
・事象の地平線より内側からは、なにものも逃げ出すことはできない。
・脱出速度が光速より大きいため、光もブラックホールの外へでるこはできない。

 

・事象の地平のすぐ外側の領域で、量子ゆらぎにより空っぽの空間から粒子-反粒子ペアが生じたとする。
・ペアの一方が、事象の地平線よりも内側に落ち込むと、その粒子が失う重力エネルギーは、ペアの静止質量よりも大きくなることがあり得る。
 →エネルギー保存則を破ることなく、パートナーの粒子が無限遠に飛び去り、われわれに観測されることが可能になる。
ブラックホールのすぐ近くで発生した粒子の全エネルギーは正の値をもち、ブラックホールに落下したパートナー粒子により失われたエネルギーを埋め合わせても、まだお釣りがくる。
・こうしてブラックホールは粒子を放出できる。

 

ブラックホールに落ち込んだ粒子により失われたエネルギーは、その粒子の静止質量に含まれる正のエネルギーよりも大きい。
→粒子がブラックホールに落ち込むとき、ブラックホールとその粒子とを合わせた系の全エネルギーは、粒子が落ち込む前よりも小さくなる。
ブラックホールは、いずれはすべてのエネルギーを放射して消える。

 

○10億分の1の非対象性
量子力学相対性理論より、反物質は必ず存在していなければならない。
・初期宇宙で粒子が作られたのであれば、反粒子も同じくらい容易に作られたはず。
→なぜわれわれの宇宙は物質が存在しているのか。

 

・高温高密度のビッグバンの時期には、もともと物質と反物質が同じだけ存在していた。
・ある量子プロセスにより、物質の方が反物質よりもわずかに多くなる、小さな非対称が生じた。
→「何もないところから何かが生じる」ことができた。
・わずかに過剰だった物質が打ち消しあう相手がいないために残り、それが今日の宇宙に見られる星や銀河になった。

 

・10億分の1程度の非対称性がこの宇宙に必要なもの。
・今日の宇宙では、陽子1個に対し、宇宙マイクロ波背景放射としておおよそ10億個の光子が存在する。
宇宙マイクロ波背景放射の光子は、時間がはじまって間もない頃に、物質と反物質が打ち消し合ったために生じた残り物。

・初期宇宙の高温にある素粒子が関与する量子的なプロセスが、空っぽの宇宙を物質または反物質が支配的であるような宇宙へと容赦なく追い立てた。

 

○「何もない」は不安定
・「なぜ何もないのではなく、何かが存在するのか」
 →「何もない」状態は不安定だから

 

アインシュタインのいう神とは
・「神が宇宙を創造したときに、他にも選択肢はあったのか」

量子力学一般相対性理論を融合させようとすると、空間そのものがそこから出現したところの「何もないところ」ー空間さえも生じさせるような真空ーを定義できるようになる。

 

<経歴総和法>
・二点間で粒子が取りうるすべての軌跡を考える。
・それぞれの軌跡に対し、よく定義された量子力学の原理にもとづき、粒子がその経路を取る確率を重みとして与える。
・最終的にすべての経路を足しあげ、粒子がじっさいにとる運動を(確率的)に予測する。
・粒子がとりうるすべての経路を考慮に入れるため、個々の経路上のあらゆる点の位置と時刻にどんな値が割り当てられても、最終的な結果には影響が出ない。

・量子的な非決定性がすべてを支配するような場合に経歴総和法を適用しようとすれば、あらゆるプロセスと中間段階で、空間がとりうるすべての幾何学を記述できる、ありうる限りの配位をすべて考慮にいれなければならない。
→短い距離と時間のなかで、どれだけでも大きく湾曲できる空間を考えること。

 

○仮想粒子のような仮想宇宙
・重力の量子論とよべるような理論では、ほんの一瞬の間、何もなかったところから空間が生まれる可能性を考慮に入れることになる。

 

<「仮想」宇宙>
・直接的には測定できないほど短時間のうちに生まれては消える、小さくてコンパクトな宇宙

・ゼロのエネルギーを運ぶ仮想粒子が放出されても、エネルギー保存則は破られない。
ハイゼンベルク不確定性原理は、それらの仮想光子に対し、生じたらすぐに真空に吸収されるべしという条件を課さない。
→ふたたび吸収されるまでに長時間存在可能で、どれほど遠くまで進むこともできる。

 

○エネルギーがゼロの宇宙
・全エネルギーがゼロであるような宇宙が少なくともひとつは存在する。
→それは、物質とエネルギーの密度が、空間をくるりと丸めたのに足りるだけの大きさをもつ、閉じた宇宙。

・もしも閉じた宇宙の全エネルギーがゼロで、もしも経路積分が量子重力を扱う適切な方法ならば、量子力学的には、そんな宇宙が正味のエネルギーを持たずに、自発的にぽっかりと生じてもお咎めはない。
・このような宇宙は、それ自体として自立した時空であり、われわれの宇宙からは完全に切り離されている。
・小さなとじた宇宙の寿命は短く、プランク時間ほど(10^-44秒程度)

 

・もしもそんな宇宙の内部にある場の配位が、宇宙が収縮する前にインフレーションを引き起こすようなものだったとすると、初めは小さな閉じた宇宙だったとしても、インフレーション期に指数関数的に膨張し、無限に大きくて平坦な宇宙に近づくことができる。

 

○無から生じてよい
・何もないところから始まった宇宙の「境界条件」を求めるための枠組み
1.量子重力においては、宇宙は無から自発的に生じることが可能であるばかりか、むしろたえず生じている。無から自発的に生じた宇宙は空っぽである必要はなく、重力による負のエネルギーを含めて、全エネルギーがゼロでありさえすればよく、物質と放射が含まれていてもよい。

2.そのメカニズムで生まれた閉じた宇宙が、無限小の時間よりも長く存在できるためには、インフレーションのようなものが必要。結果的に、そのようなシナリオで生じた宇宙の中で、寿命が長いと期待できるものは、今日、ちょうどわれわれの宇宙のように平坦に見える。

 

・量子重力は、宇宙が生じずにはすまないということを示しているように見える。
・「何もない」(空間も時間もない)状態は、不安定。
・そんな宇宙が一般的に持つはずの特徴は、もしもその宇宙の寿命が長ければ、今日われわれの宇宙で観測されているようなものになると予想される。