小林晋平 「ブラックホールと時空の方程式」メモ
小林晋平 「ブラックホールと時空の方程式」メモ
・ブラックホールを数式で表すことは、ブラックホールが存在する空間における三平方の定理を求めること。
・2次元平面の三平方の定理を、ブラックホールが存在する「曲がった」空間バージョンへ発展させる。
・三平方の定理に「無限小」の意味をもつ "d" をつける。s^2 = x^2 + y^2 → ds^2 = dx^2 + dy^2 ・・・(2.1)
2.1 三平方の定理
・測ることは科学の基本。
・科学は、測量を基本とする天文学と幾何学から始まった。
・数式を使うメリツト
①言葉で書くと長くて面倒だから。
②正確さを期すため。
③目に見えない世界も扱えるようになる。
→4次元やそれ以上の多次元の物体も数式で表すことができる。
・さまざまな空間を数式表現することは、それぞれの空間において、離れた2点間の距離を求めるための数式を書くこと 。
s^2 = x^2 + y^2 ・・・(2.7)
図2.1 2次元平面と直角三角形:その1
・直角三角形の辺の長さを
ヨコ=OA=Δx、タテ=OB=Δy、ナナメ=AB=Δs ・・・(2.8)
と書く(図2.2)と、三平方の定理は次式となる。
(Δs)^2 = (Δx)^2 + (Δy)^2 ・・・(2.9)
図2.2 2次元平面と直角三角形:その2
図2.3の直角三角形の3点を以下とする。
R(x1,y1), A(x2,y1), B(x1,y2) ・・・(2.15)
Δx、Δyは
Δx = x2 - x1, Δy = y2 - y1 ・・・(2.16)
ABの長さをΔsと表すと、三平方の定理より次式となる。
Δs = √(Δx^2 + Δy^2) = √((x2 - x1)^2+(y2 - y1)^2) ・・・(2.17)
図2.3 2次元平面と直角三角形:その3
2.2 局所的に考える・瞬間的に考える
・「d」の意味を考える。
・「速度」は、速さに向きを与えたもの。
・慣性の法則
物体に力が働いていない、または働く力が釣り合っているとき、物体は同じ運動状態を維持する。
・同じ運動状態を続ける=等速直線運動、等速度運動
・等速円運動している物体の速度は接線方向。・向心力:円軌道(や楕円軌道)をキープするために中心方向へ引っ張る力
・等速円運動は、等速直線運動して逃げようとしている物体を、向心力により絶えず向きを変えて円軌道を保たせている
、ダイナミックな運動。
・円運動をする物体の各点各点での加速度は円の中心方向を向く。
・局所的に考える:空間中の一点(x,y)や、ある瞬間tごとに物理量を考えること。
・空間の歪みが一定でないところでは、三平方の定理も一定でない。
・下式はΔという有限の幅が入っており、これは、この三平方の定理が有限の大きさをもつ現実的な直角三角形からつく
られたものであることを示す。
ΔS^2 = Δx^2 + Δy^2 (2.14)
・この直角三角形を無限に小さくして平面上のどこか1点で成立する三平方の定理、「局所的な三平方の定理」を考える
。☆有限Δと無限小d
・無限小変位:有限の幅Δx、Δyを無限に小さくしたもの
dx, dy ・・・(2.18)
・「ds^2= dx^2 + dy^2」は、「無限小変位を使い、三平方の定理を局所的に考えたもの」。
・図2.3において、点Aと点Bのそれぞれを点Rに近づけること。
x2→x1、y2→y1 ・・・(2.19)
・何らかの値に近づけていく操作を極限をとると言う。
x2、y2のそれぞれをx1、y1に近づけると
Δx→0、Δy→0 ・・・(2.20)となり、このときに得られる三平方の定理を
ds^2 = dx^2 + dy^2 ・・・(2.21)
と書く。
・dx、dyには「Δx、Δy→0という極限のもとで成り立つことについて考える」という意味がこめられている。
Δs^2 = Δx^2 + Δy^2 ・・・(2.22)
は有限の幅をもち、平面上のどこか1点の上で成立する式ではないが、式(2.21)は点Rという1点で成立する局所的な式
。
・"d"の導入は「有限の幅から無限小の幅を考えることで、三平方の定理を局所かする」という操作にあたる。
・このようにして得られた局所的な三平方の定理の式(2.21)のことを「線素(line element)」と言う。
・局所的な「距離」を(無限個)つなげていけば、有限の長さをもつ「線」になる。
2.3 微分積分の考え方
・平均の速さ:一定の速さで進んだとモデル化した場合の速さ
・瞬間の速度:時々刻々変化する瞬間ごとの速度
平均の速さ=進んだ距離/かかった時間 ・・・(2.23)
・進んだ距離をΔx、かかった時間をΔtとして
v = Δx / Δt ・・・(2.24)
・x-tグラフでは、速度は直線の傾き。
・速度が一定でない場合、グラフは曲線になる。
・速度が一定でない場合の速度も、ある時刻におけるグラフの傾きを求めることと同じ。
・有限の経過時間Δtを考え、次にΔt→0の極限をとり、その結果求まった量を瞬間の速度と呼ぶ。
・時刻t1からほんの少ししか経過していない時刻をt1+Δtと書く。
・時刻t1での瞬間の速度に非常に近いと考えられる平均の速度は
v^ = (x(t1 + Δt) - x(t1))/((t1 + Δt) - t1)) ・・・(2.28)
となる。
・時間間隔Δtをゼロに近づけていけば、時刻t1におけるx-tグラフの接線が現れていくる。その接線の傾きが、時刻t1で
の物体の速度。
・時刻t1での瞬間の速度は
v(t1) = lim(Δt→0) (x(t1 + Δt) - x(t1))/((t1 + Δt) - t1)) ・・・(2.29)
となる。
・位置の変化と時間の変化をΔx、Δtで表せば、時間経過Δtをゼロに近づける操作は
lim(Δt→0) Δx/Δy ・・・(2.30)
と書け、dを使うと
dx/dt = lim(Δt→0) Δx/Δy ・・・(2.30)
となる。
・求めた量v(t1)を、位置xの時刻t1における微分係数と言う。
・任意の時刻tでは次式となる。
v(t) = dx/dt = lim(Δt→0) (x(t + Δt) - x(t))/((t + Δt) - t)) ・・・(2.32)
・v(t)はxの時刻tにおける微分係数。
・微分係数を求めるために極限をとる操作のことを「xをtで微分する」と言う。
・瞬間の速度v(t)とは、時刻tでの位置x(t)の時間微分。
・微分係数は、横軸に変数、縦軸にそれを引数にもつ量をとって書いた曲線の「接線の傾き」のこと。
・曲線=接線の集合体なので、曲線の性質を知るにはその接線を調べればよい。
・式(2.32)から近似的に導ける式
x(t + Δt)=x(t) + v(t)Δt
は、十分小さいΔtについて成り立つ近似式。Δt→0の極限では厳密に成り立つ。
・一般に、f(x)の微分係数をf'(x)として
f(x + Δx)=f(x) + f'(x)Δx
が成り立つ。
☆積分
・接線の様子からもとの曲線を求める操作のことを積分と言う。
v(t) = dx/dt ←→ x(t) = ∫v(t)dt ・・・(2.33)
・位置と速度は互いに微分積分でつながり合っている。
・線素を積分することで有限の長さを計算することができる。
・線素を積分したもの
l = ∫ds ・・・(2.31)
は有限の長さを与える。
2.4 力学は微分積分の式で書かれる
・力学の目標:任意の時刻における、物体の位置と速度を求めること
・加速度:速度の微分(速度の時間変化)
ある時刻t1から別の時刻t2に成る間に、速度がどれだけ変化したのかを表す量。
・ある時刻における瞬間の加速度
a^ = 速度の変化/かかった時間 = Δv/Δt ・・・(2.35)
であり、時刻tにおける瞬間の加速度は
a(t) = dv/dt = lim(Δ→0) Δv/Δt ・・・(2.36)
・加速度は速度の時間微分で、逆に加速度を積分すれば速度になる。
a(t) = dV/dt ←→ v(t) = ∫a(t)dt ・・・(2.37)
・ニュートンの「運動の三法則」
○第1法則:慣性の法則
○第2法則:運動の法則(運動方程式)
○第3法則:作用反作用の法則
・運動方程式は、
物体の運動量の時間変化は、物体に加えられる力に比例する
というもの。
・物体の質量が変化しない単純な場合、
物体に生じる加速度は、ぶったいに加えられる力に比例し、物体の質量に反比例する
・物体に加えられる力をF、物体の質量をmとすると
a = F/m ・・・(2.38)
が成り立つ。
・物体がどんな加速度で動くかは加えられた力と質量で決まる。
・位置と速度を求めるのに必要な加速度は、物体に働く力とその質量がわかれば運動方程式から求まる。