ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

サピエンス全史

ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

 ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ

第2部 農業革命

第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇

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【まとめ】
・農業革命により、手に入る食糧の総量は増えが、より良い食生活や長い余暇にはつながらず、人口爆発と飽食エリート層の誕生につながった。
・以前より劣悪な条件下であってもより多くの人を生かしておく能力こそが農業革命の神髄で、農業革命は罠だった。
・家畜化された動物にとって農業革命は恐ろしい大惨事で、彼らの進化上の「成功」は無意味。
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・人類は250万年にわたり、植物を採集し、動物を狩り食料としてきた。
・これらの動植物は、人間の介在なしに暮らし、繁殖していた。


<農業革命>
・1万年ほど前、サピエンスが動植物たちの生命を操作することに、ほぼすべての時間と労力を傾け始めた。
・これは人間の暮らし方における革命、すなわち農業革命。


・農耕への移行
紀元前9500~8500年:トルコの南東部とイラン西部とレヴァント地方の丘陵地帯で始まった。
~紀元前9000年:小麦が栽培植物化、ヤギが家畜化
~紀元前8000年:エンドウ豆とレンズ豆の栽培化
~紀元前5000年:オリーブの木の栽培化
~紀元前4000年:馬の家畜化
~紀元前3500年:ブドウの木の栽培化

・紀元前3500年までには、家畜化・栽培化のピークは過ぎた。
・私たちが摂取するカロリーの9割以上は、紀元前9500年~3500年にかけて栽培化された、ほんの一握りの植物に由来する。
→小麦、稲、トウモロコシ、ジャガイモ、キビ、大麦
・私たちの心は狩猟採集民のもので、料理は古代の農耕民のもの。


・農耕は中東の単一の発祥地から世界へ拡大したものではなく、各地でそれぞれ完全に独立した形で発生した。


・農業革命が中東と中国と中央アメリカで勃発した理由。
→ほとんどの動植物は家畜化や栽培化ができないから。
・農耕や牧畜の候補として適したものは、特定の地域に生息しており、そこが農業革命の舞台となった。


・農耕民は狩猟採集民よりも一般に困難で、満足度の低い生活を余儀なくされた。
・農業革命により、手に入る食糧の総量を増やすことはできたが、より良い食生活や長い余暇にはつながらなかった。
人口爆発と飽食エリート層の誕生につながった。
・平均的な農耕民は、狩猟採集民より苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は少なかった。
・農業革命は史上最大の詐欺だった。


ホモ・サピエンスが小麦・稲・ジャガイモなどに家畜化された。
・小麦は植物のうちでも地球の歴史上で指折りの成功を収めた。
・世界全体では、小麦は225万平方kmの地表を覆い、これは日本の面積の約6倍。
・小麦は自らに有利な形でホモ・サピエンスを操ることにより、それを成し遂げた。
・2000年ほどのうちに、人類は世界の多くの地域で、朝から晩まで小麦の世話ばかり焼いて過ごすようになった。
・新しい農業労働は時間がかかるので、人々は小麦のそばに定住せざるをえなくなり、生活様式が変わった。


・小麦はより優れた食生活は提供しなかった。
・小麦は経済的安定を与えてくれなかった。
・人類同士の暴力から守られる安心も与えてくれなかった。
→小麦は個々の人々には何も提供しなかった。
 ホモ・サピエンスという種全体には、授けたものがあった。
 小麦を栽培すれば、単位面積当たりの土地からはるかに多くの食物が得られ、そのおかげでホモ・サピエンスは指数関数的に数を増やせた。


・ある種が多数のDNAの複製を誇っていれば、それは成功であり、その種は繁栄する。
・この視点に立つと、以前より劣悪な条件下であってもより多くの人を生かしておく能力こそが農業革命の神髄。
→農業革命は罠だった。


★贅沢の罠
・農耕の台頭は、何百年~何千年にわたる、非常に漸進的な出来事。
・この変化は段階を追うもので、各段階では日々の生活がわずかに変わるだけだった。
・しだいに労力の大半を穀類の栽培に向けるようになり、野生種の採集や狩猟の時間が減り、狩猟採集民は農耕民になった。
・食糧の供給量が増えると、人口が増加し始めた。
・急上昇した子供の死亡率の増加を出生率の増加が上回り、さらに多くの子供を産み育て続けた。


・人々は自らの決定がもたらす結果の全貌を捉え切れない。
・増えた子供を余剰の小麦で養うため、母乳が減ることで免疫系が弱まり、永続的定住が感染症の温床と化すことも理解していなかった。
・単一の食糧源への依存を強めれば、旱魃の害に自分をさらすことになるのを予見できなかった。


・もくろみが裏目に出たとき、なぜ人類は農耕から手を引かなかったのか?
・小さな変化が積み重なり社会を変えるまでには何世代もかかり、社会が変わったころには、かつて違う暮らしをしていたことを思い出せる人が誰もいなかったから。
・人口が増加したため、もう引き返せなかった。


・歴史の鉄則の一つ:贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる。


・教訓:より楽な生活を求める人類の探求は、途方もない変化の力を解き放ち、その力が誰も想像したり望んだりしていなかった形で世界を変えた。


★聖なる介入
・トルコのギョベリ・テペの遺跡の場合、何らかの文化的目的のための神殿の建設と運営を支えるため、農耕が始まった可能性が高い。


★革命の犠牲者たち
・ヒツジ、ニワトリ、ロバなどの家畜化された動物は、食料(肉、乳、卵)や原料(皮革、羊毛)、労力を提供した。
・ほとんどの農耕社会では動物の飼育は副次的な活動だったが、一部の場所では大規模な牧畜を行う部族も現れた。


・1万年前:アフロ・ユーラシア大陸の限られたニッチに、数100万程度のヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリが住んでいた。
・今日の世界:ヒツジが10億頭、ブタが10億頭、牛が10億頭以上、ニワトリが250億羽以上。
・広範に分布した大型ほ乳動物の順位
 1位:ホモ・サピエンス
 2位:家畜化された牛
 3位:家畜化されたブタ
 4位:家畜化されたヒツジ


・進化の視点に立つと、農業革命は家畜化された動物たちにとってすばらしい恵み。
・進化の視点は成功の物差しとしては不完全。
・進化の視点は、個体の苦難や幸福は考慮に入らず、生存と繁殖という基準で判断される。


・家畜化されたニワトリと牛は、これまで生を受けた生き物のうちでも、極端なまでに惨めかもしれない。
・動物の家畜化は、一連の残酷な慣行の上に成り立っており、歳月を
経るごとに酷さを増した。
・野生のニワトリの寿命は7~12年、牛は20~25年
・家畜化されたニワトリや牛の大多数は、生後数週間~数ヶ月で殺される。
・動物を家畜化するための行為
 檻や囲いに動物を閉じこめる
 引き具や引き綱につなぐ
 鞭や突き棒で訓練したり、彼らの体を傷つける
 鼻先をそぎ落とす
 目をえぐる
 乳を出させるため、生まれた直後に子を殺す
 等々


・家畜化された動物の大多数にとり、農業革命は恐ろしい大惨事だった。
・彼らの進化上の「成功」は無意味


・サピエンスの集合的な力の劇的な増加と表向きの成功が、個体の多大な苦しみと密接につながっている。