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社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

サピエンス全史

ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

 ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ

第3部 人類の統一

第12章 宗教という超人間的秩序

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【まとめ】
・宗教は貨幣や帝国と並び、人類を統一する三つの要素の一つで、その役割は、脆弱な社会秩序やヒエラルキーの構造に超人間的な正当性を与えること。
一神教信者たちは、多神教信者たちよりも熱狂的で宣教に熱心で、グローバルな政治秩序は一神教の土台のうえに築かれている。
・人間至上主義の宗教は、ホモ・サピエンスを崇拝し、三つの競合する宗派に分かれている。
 ①自由主義的な人間主義:個人の自由はこの上なく神聖である
 ②社会主義的な人間至上主義:ホモ・サピエンスという種全体が神聖なもの
 ③進化論的な人間至上主義:人類は進化も退化もする変わりやすい種
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・宗教は貨幣や帝国と並び、人類を統一する三つの要素の一つだった。
・宗教の歴史的役割は、脆弱な社会秩序やヒエラルキーの構造に超人間的な正当性を与えること。
・宗教の定義
 超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度
・二つの基準
①宗教は、超人間的な秩序の存在を主張する。
②宗教は超人間的秩序に基づいて規範や価値観を確立し、それには拘束力があるとみなす。
・宗教が備えるべき二つの特性
①いつでもどこでも正しい普遍的な超人間的秩序を信奉している必要がある。
②この信念をすべての人に広めることをあくまで求めなければならない。
→宗教は普遍的であると同時に、宣教を行うことも求められる。


・古代の宗教の大半は、局地的で排他的だった。
・普遍的で、宣教を行う宗教が現れ始めたのは、紀元前1000年紀。
・そのような宗教の出現は、歴史上屈指の重要な革命。
・普遍的な帝国・貨幣の出現と同じく、人類の統一に不可欠の貢献をした。


★神々の台頭と人類の地位
・狩猟採集時代、動植物はホモ・サピエンスと対等の地位にあると見なされた。
・農業革命の最初の宗教的結果として、動植物は霊的な円卓を囲む対等なメンバーから資産に格下げされた。
・神々の主な役割は、人間と口の利けない動植物との仲立ちだった。
・王国やネットワークの拡大により、人々は王国や交易圏全体に力と権威が及ぶ存在と接触する必要が出た。
・こうした必要に答える試みが、多神教の出現につながった。
多神教が出現しても、アニミズムは完全に消えてなくなることはなかった。


・神々の台頭がもたらした最大の影響は、ホモ・サピエンスの地位に対してのもの。
多神教信者たちは、世界を神々と人間の関係の反映と見るようになった。
多神教信者は神々の地位だけでなく、人類の地位も高めた。
・人間以外の物たちは零落した。


偶像崇拝の恩恵
多神教は全宇宙を支配する単一の神的存在や法の存在に意義を唱えるわけではない。
多神教の根本的洞察は、世界を支配する至高の神的存在は関心や偏見を欠いており、人間のありきたりの欲望や不安や心配には無頓着というもの。
・宇宙の至高の神的存在に近づく唯一の理由は、欲望を捨て、善きものと悪しきものを受け容れるため。
・信徒のほとんどは行者ではなく、日常的な関心事に浸かっている。
・人間は戦争に勝ったり病気から快復するため、力の限られた神的存在(人間に関心をもち、えこひいきしてくれる神々)と取引し、彼らの助けを借りる。
・小さな神的存在は数が多くなるので、多神教になる。
多神教は本来、度量が広く、「異端者」や「異教徒」を迫害することはめったにない。


★神は一つ
多神教信者の一部は、自分の守護神を気に入り、多神教の基本的考えから離れていった。
・自分の神が唯一の神で、その神こそが宇宙の至高の神的存在である。
・同時にその神は関心をもち、えこひいきすると考え続け、取引できると信じた。
一神教

一神教の大躍進は、キリスト教とともに起こった。
パウロの考えから、イエスについての喜ばしい言葉(福音)を世界中に広めることが必要となった。
キリスト教は全人類に向けた、広範な宣教活動を組織した。
キリスト教の成功は、別の一神教イスラム教の手本となった。


一神教信者たちは、多神教信者たちよりもはるかに熱狂的で宣教に熱心な傾向にあった。
一神教信者はたいてい、自分は唯一絶対の神の全メッセージを有すると信じている。
→他の宗教はすべて偽りとみなす
・過去2000年間、一神教信者は、暴力によりあらゆる競争相手を排除することで、自らの立場を繰り返し強めようとしてきた。
・今日、東アジア以外の人々は、一神教を信奉し、グローバルな政治秩序は一神教の土台のうえに築かれている。


・神学の理論と歴史の現実との間には、つねに隙間が存在した。
一神教の考え方を完全に消化し切れずにきた。
キリスト教は、聖人たちが居並ぶ独自の万神殿を築いた。
・こうした聖人たちのカルトは、多神教の神々のカルトと大差ない。


★善と悪の戦い
多神教一神教だけでなく、二元論の宗教も産んだ。
・二元論の宗教:善と悪、二つの対立する力の存在を認める。
・二元論では、悪の力は独立した力(善き神の力とは独立)。
・全宇宙はこれら二つの力の戦場で、世界で起こることはすべてその争いの一部
・二元論が魅力的なのは、「悪の問題」に短くて単純な答えが出せるから。(世界にはなぜ悪があるのか? なぜ苦しみがあるのか? なぜ善い人に悪いことが起こるのか?)


・二元論の弱点:秩序の問題には答えられない
・善と悪がこの世界の支配権をめぐり争っているなら、これらの戦いを支配する諸法則は誰が執行しているのか?
・善と悪が戦うとき、両者はどんな共通の法則に従い、それらの法則は誰が定めたのか?


・一神論と呼ぶものの最も基本的な概念の一部は、二元論を起源とし、その精神を受け継いでいる。
一神教は、一神教や二元論、多神教アニミズムの遺産が、単一の神聖な傘下で入り乱れている万華鏡のようなもの。
・混合主義こそが唯一の偉大な世界的宗教かもしれない。


★自然の法則
・インドのジャイナ教や仏教、中国の道教儒教、地中海沿岸のストア主義やキニク主義、エピクロス主義は、神への無関心を特徴とした。
・これらの教義はあ、世界を支配する超人的秩序は、自然法則の産物であるとする。


自然法則を信奉する古代宗教のうち最も重要な仏教は、今でも主要な宗教であり続けている
・仏教の中心的存在は神ではなく、ゴータマ・シッダールタという人間。
・苦しみは本人の心の振る舞いの様式から生じる。
・ゴータマの悟り:心は何を経験しようとも、渇愛をもってそれに応じ、渇愛はつねに不満を伴う
・物事をただあるがままに理解すれば、もはや苦しみはなくなる。
・「私は何を経験していたいか?」ではなく「私は今何を経験しているか?」に注意を向ける。
・涅槃:渇愛の火を完全に消してしまえば、それに代わり完全な満足と平穏の状態が訪れる。
ブッダ:悟りを開いた人


<ダルマ>
・苦しみから解放される唯一の道は、渇愛から完全に解放されること。
渇愛から完全に解放されるには、心を鍛え現実をあるがままに経験すること。


仏教徒はダルマの法則を自然の法則とみなしている。
一神教の第一原理「神は存在する。神は私に何を欲するのか?」
・仏教の第一原理「苦しみは存在する。それからどう逃れるか?」
・仏教は神々の存在を否定しないが、苦しみは渇愛から生じるという法則には何の影響力ももたない。
・仏教のような近代以前の自然法則の宗教は、神々の崇拝を完全に捨て去ることはなかった。
・いくつかの仏教の宗派は、さまざまな仏や菩薩を生み出した。
・多くの仏教徒は、神々の代わりに悟りを開いた仏や菩薩を崇拝するようになり、涅槃に入るだけでなく、俗世の問題処理を助けてくれるよう祈り始めた。


★人間の崇拝
・有神論の宗教について、過去300年間は、宗教が重要性を失っていく、世俗主義の高まりの時代として描かれる。
自然法則の宗教を考慮に入れると、近代は強烈な宗教的熱情や前例のない宣教活動、史上最も残虐な戦争の時代。
・近代台頭した自然法則の新宗教イデオロギー
 自由主義共産主義、資本主義、国民主義、ナチズム
・近代の新宗教の信念の間には明確な境界がなく、混合主義的。


・人間至上主義の宗教は、ホモ・サピエンスを崇拝する。
<人間至上主義の信念>
ホモ・サピエンスは独特で神聖な性質を持ち、その性質は他のあらゆる動物や他のあらゆる現象の性質と根本的に違う。


・すべての人間至上主義は人間性を崇拝するが、人間性の定義には意見が分かれる。
・人間至上主義は、三つの競合する宗派に分かれ、「人間性」の厳密な定義をめぐり争っている。
自由主義的な人間主義一神教に基づいている)
・「人間性」とは個々の人間の特性であり、個人の自由はこの上なく神聖である
自由主義的な人間至上主義の主要な戒律は、自分の内なる声を侵入や害から守るように意図されている
→「人権」


社会主義的な人間至上主義(一神教に基づいている)
・「人間性」は個人的ではなく集合的なもので、ホモ・サピエンスという種全体を神聖なものと考える。
・全人類の平等を求める。


③進化論的な人間至上主義(一神教とは縁切り)
・人類は進化も退化もする変わりやすい種。
・人類は超人に進化することもできれば、人間以下に存在に退化することもありえる。


ナチスの最大の野望は、人類を退化から守り、漸進的進化を促すことだった、


・進化論的な人間至上主義の将来は不明。
・生物学的方法を使い、ホモ・サピエンスを「アップグレード」することを提唱するのはダブーだったが、そのような事業が再び流行している。
・人間の生物学的作用に関する知識を使い、超人を生み出そうと考えている人は多い。


自由主義の人間至上主義の信条と、生命科学の最新成果との間には、巨大な溝が口を開けつつあり、それを無視し続けるのは難しい。
・現在の政治制度と司法制度は、誰もが不可分で変えることのできない神聖な内なる性質を持っているという信念に基づいている。
(各個人の中に自由で永遠の魂が宿るという伝統的キリスト教の信念の生まれ変わり)
・その性質が世界に意味を与え、あらゆる倫理的権威や政治的権威の源泉となっている。
・過去200年間で、生命科学はこの信念を徹底的に切り崩した。
・科学者たちは、人体内部に魂は発見できず、人間の行動は自由意志ではなくホルモンや遺伝子、シナプスで決まると主張する。