小林晋平 「ブラックホールと時空の方程式」メモ
5章までは完全な理解には至らないものの、なとなく分かったような気になったけれど、6章は、”テンソル”とかいう得体の知れないものが登場して、サッパ分からなくなって、全くチンプカンプンになった。なので6章はあきらめ。
小林晋平 「ブラックホールと時空の方程式」メモ
第6章 空間の曲がりを表現する ~ベクトルと曲率~
・第5章まで扱ってきた空間や時空は、曲がりのない、平坦なもの。
・座標軸が曲がっていることと、空間や時空そのものが曲がっていることは別物。
・この章では空間の線素だけで考える。
・3次元空間ではなく、2次元空間(曲面)で考える。・一般に2次元の線素は、計量gνμを使い
ds^2 = g11dx~1dx~1 + 2g12dx~1dx~2 + g22dx~2dx~2 = gμνdx~μdx~ν (6.1)
のように表す。
・線素の見かけがデカルト座標と異なっていても、考えている空間が本当に曲がっているのか、曲がっているように見えているのかはわからない。
・曲率を使えば、本当に曲がっているのかどうかわかる。
・曲率は、ある場所の周囲に沿ってベクトルを1周させたとき、ベクトルがどう変化するかを計算したもの。6.1 一般座標変換とベクトル・テンソル
・任意の座標への変換を一般座標変換という。
・一般座標変換では、ベクトルの成分のようなものは座標変換に伴い変わる。
・空間の曲がり方など、「座標変換にとらわれないもの」を表すには、ベクトルおよびその一般化であるテンソルという幾何学的実在を使う。
・相対性理論では、座標に依存するベクトルの成分と、座標に依存しないベクトルそのものを区別することが大事。・2次元平面上のベクトルで、原点に始点を一致させたベクトルa~の終点が点(1,1)を差していたとき、
a~ = (1,1) (6.2)
のように書く。
・ベクトルはあくまで矢印そのものであり、(1,1)ではない。
・(1,1)という数字をベクトルに対応させているだけであり、数字自体はベクトルではない。
・(1,1)をベクトルの成分というが、使っている座標に応じて変わる「頼りない」量であり、幾何学的実在ではない。・一般相対論が仮定する基本原理:
すべての物理法則は、任意の系において同じ形をとる(一般相対性原理)
・「任意の系で」ということは、言い方を変えると
すべての物理法則は座標系にかかわらず同じ形をとる
・「同じ形である」ことを物理法則は一般座標変換に対して共変である
という。
⇒自然現象は、私たちがどんな座標系を使うかにかかわらず存在している。
・あらゆる物理現象は曲率「本体」やベクトルそのものといった幾何学的な実在で記述できる。
・物質や空間が内包している幾何学的な量を用意しておき、そうした座標変換に左右されないもので物理を記述すれば、本質に迫れる⇒リーマン幾何学
★物理におけるベクトル場
・位置ベクトル:座標原点から伸びた矢印で、その先端で物体の位置を指し示す。
・3次元空間における電場は、Ex、Ey、Ezの3成分をもつ。E~(x,y,z) = (Ex(x,y,z), Ey(x,y,z), Ez(x,y,z)) (6.7)
・電場には位置ベクトルと異なり、(x,y,z)という引数がつく。
・これは、電場の様子が場所ごとに異なるから(電場は位置の関数)。
・一般に位置(x,y,z)の関数であるベクトルA~(x,y,z)をベクトル場という。
・時間に依存するベクトル量であれば時間も引数に入り、A~(t,x,y,z)のように表す。
・物理では位置(と時間)の関数である量を「場」と呼ぶ。
・向きをもたない関数は、スカラー場という。★ベクトルとベクトルの成分
・位置ベクトルは物体の位置の「直接的な」表示方法。
・座標で物体の位置を表す方法は、「2次的」な表示法。
・位置ベクトル本体とそれが指し示す物体の座標は別物であるが、通常はこれらを等価なものとみなし、位置ベクトルの先端が指す点の座標が(x,y,z)であるとき、r~ = (x,y,z) (6.8)
と書いて、
位置ベクトルr~の成分は(x,y,z)である
という言い方をする。・位置ベクトルを使うと(x,y,z)をまとめてr~と表せるため、ベクトル場をA~(r~)と表すこともある。
★「ベクトルらしさ」とは何か?
・
ベクトルは互いに1次独立なベクトルを使って分解できる。
・1次独立:大きさが0でなく、かつ互いに平行でないという意味。
・2次元ベクトルは1次独立な2本のベクトル場、3次元ベクトルは1次独立な3本のベクトルで分解することができる。
・分解に使われるベクトルの組を基底ベクトルという。・基底ベクトルとしてよく使われるのが、大きさが1で、互いに直交するベクトルの組。
・2次元デカルト座標であればx、y軸に沿う長さ1のベクトルの組e~x, e~y
がそれに当たる。
・3次元デカルト座標であれば、e~x, e~y, e~z
を使うのが標準的。
これを使うと、成分を(x,y,z)にもつ位置ベクトルr~をr~=xe~x + ye~y + ze~z (6.9)
と分解できる。
・座標(x,y,z)とは、
r~を基底ベクトルe~x, e~y, e~zで分解したときの展開係数
のこと。
・基底ベクトルとして異なるものを用いると、展開係数も変わってしまう。
・座標とはものの見方により変わってしまう「頼りない」量であり、幾何学的実在ではない。・ベクトルそのものは幾何学的な量。
・位置ベクトルは、物体が実在しているという事実がまずあり、適当な原点からその物体に向かって引いた矢印が位置ベクトル。
6.2 ベクトルと曲率・ベクトル本体が幾何学的実在であることを利用すると、「本当に曲がった空間」なのか「曲がったように見えるだけの空間」なのかも判別できる。
・曲がり具合を表すのが「曲率」。
・曲率がゼロなら平坦、それい以外なら何らかのまがりをもつ空間。
・空間が曲がっていることの幾何学的表現
ある領域の周りでベクトルを1周させたとき、もとのベクトルに一致しないこと
6.3 ベクトルを微分する・共変微分:ある線に沿うベクトルの平行移動
・ベクトルの変化を見るため、離れた2点でのベクトルの始点を揃え、引き算する必要がある。
・ベクトルの始点を揃えるため、平行移動しなくてはならない。
・「ベクトルの成分の変化+基底ベクトルの変化」を表す微分が共変微分。
●ベクトル場の成分と基底ベクトル・デカルト座標以外の座標系では、各点ごとに基底ベクトルが変わり、それに応じてベクトル場の成分が変わる。
・一般的なベクトル場を数式で表現する。
A~(r,θ) = A^r(r,θ)e~r(r,θ) +A^θ(r,θ)e~θ(r,θ) (6.12)
・A~はrとθの2変数をもつベクトルなので、その変化を求めるため、rとθの二つで微分することができる。
●共変微分とは?・何らかの曲面上にベクトル場A~があるとする。
・曲面上に曲線Cを考え、C面上に点P、Qをとる。
・曲線は一つのパラメーターで表示でき、それをλとする。
・点Pはこのパラメターではλ、点Qはλ+εに当たる点とする。
・εは微小量を表す文字で、実際には無限小、計算の最後にε→0とする量。
・ベクトル場A~の点Pにおける微分を考える。
・点Pから少し離れたところに点Qをとり、点Pと点Qでベクトル場の差A~(Q)-A~(P)
を求め、それは微小量εで割って、ε→0という極限をとればよい。
・点P、Qの座標がそれぞれP(xμ)、Q(xμ+dxμ)のように表されるとき、A(Q)-A(P)は
A(Q)-A(P) = [A~(x^μ+dx^μ) - A~(x^μ)] = (∂A~/∂x^μ)dx^μ (6.16)
となるはず。
・A(Q)-A(P)という量は明確に定義された量ではない。
・A(P)、A(Q)はそれぞれ別の点である点Pと点Qにおける接平面上に存在するベクトル。
・点PにあるベクトルA~(P)を平行移動し、点Qでの接平面上に二つのベクトルを集めてから差をとる必要がある。
↓
点Qの接平面上に存在するベクトルにより、A~(P)を点Qに平行移動したものに「ふさわしい」ベクトルA~(P→Q)を定義しなければならない。
・式(6.16)に現れた量を基底ベクトルとその成分に分解する。(∂A~/∂x^μ)dx^μ = ∂/∂x^μ(A^ν(x)e~ν(x))dx^μ
= {(∂A^ν(x)/∂x^ν)e~ν(x) + A^ν(x)∂e~ν(x)/∂x^μ}dx^μ
= {A^ν,μ(x)e~ν(x) + A^ν(x)e~ν,μ(x)}dx^μ (6.17)
・ここで積の微分公式(ライプニッツ則)がベクトルの成分と規定ベクトルの積A^ν(x)e~ν(x)に対して成り立つことを用いた。
d/dx(f(x)g(x)) = (df(x)/dx)g(x) + f(x)(dg(x)/dx) (6.18)
また、次式のように偏微分をコンマで表した。
∂A^ν(x)/∂x^μ = A^ν,μ(x) (6.19)
次の表記も使用した(∂/∂x^μ=∂μ)。
∂A^ν(x)/∂x^μ = ∂μA^ν(x) (6.20)
・式(6.17)の第一項(A^ν,μ(x)e~ν(x))は基底ベクトルの変化を考えていない。
・ある一点でのスカラー量であるA^ν(x)の微分を考えていることに相当し、普通の偏微分と同じ。
・式(6.17)の第二項のe~ν,μ(x)の部分は、基底ベクトルの変化を計算している。
・ベクトルの変化、すなわち差を計算しているので、二つのベクトルの引き算をしていることになる。
・A(Q)-A(P)の計算で難しいのは、点P、Qにおける基底ベクトルの差
e~ν(Q) - e~ν(P) (6.21)
をどう考えるにある。
・ここで、点Qへe~ν(P)を平行移動したものを
e~ν(P→Q) (6.22)
と書くこととし、この量について考える。
●基底ベクトルの平行移動・一般のベクトルでも基底ベクトルでも、差をとるには始点を揃える必要があり、そのために平行移動が必要。
・ポイントは二つある。
①各点ごとに基底ベクトルは異なる。
一般に e~ν(Q)≠e~ν(P)
②曲面では各点ごとに接平面が異なる。
平行移動する際、同じ点へ移動させても、どんなルートを通るかにより結果が異なる。・段階を踏んで基底ベクトルの平行移動を見る。
1. 2次元平面上
で、デカルト座標を使っている場合。
2. 2次元平面上で、極座標を使っている場合。
3. 2次元平面上で、一般の座標を使っている場合。
その1:2次元平面で、デカルト座標を使っている場合
・この場合、平面上の任意の点で基底ベクトルは変わらない。
e~x(x,y) = ex~ = 一定、e~y(x,y) = e~y = 一定 (6.23)
・平行移動させても変化することはない。
e~ν
(P→Q) = e~ν(P) = e~ν(Q) (6.24)
その2:2次元平面上で、極座標を使っている場合
・2次元極座標の基底ベクトルe~r、e~θは、デカルト座標とは以下の関係にあり、r、θに応じて変化する。
e~r = cosθ e~x + sinθ e~y
e~θ = -rsinθ e~x + rcosθ e~y (6.25)
・e~ν(P)≠e~ν(Q)なので、二つの基底ベクトルにはズレがある。
・ズレを同一点で比べるため、e~ν(P→Q)を考える。
・これは、点Pで定義されていた基底ベクトルe~ν(P)を、点Qまで平行移動してつくられたベクトルなので、これとの差は点Qでの基底ベクトルの差となる。
e~ν(Q) - e~ν(P→Q) (6.26)
・点Pと点Qが十分近ければ、この差はわずかなので、微分を用いて
e~ν(Q) - e~ν(P→Q) ≒ (∂e~ν/∂x^μ)dx^μ = e~ν,μdx^μ (6.27)
と書ける。
・この式は、基底ベクトルの微分の定義と見ることができ、次式のように書ける。
e~r(Q) - e~r(P→Q) ≒ (∂e~r/∂x^μ)dx^μ = e~r,μdx^μ (6.28)
e~θ(Q) - e~θ(P→Q) ≒ (∂e~θ/∂x^μ)dx^μ = e~θ,μdx^μ (6.28)
これが基底ベクトルの差に当たるもの。・実際には点Qに始点をもつベクトルなので、
∂e~r/∂x^μ = e~r,μ = Γru^r(Q)e~r(Q) + Γrμ^θ(Q)e~θ(Q)
=Γrμ^ρ(Q)e~ρ(Q) (6.30)
∂e~θ/∂x^μ = e~θ,μ = Γθu^r(Q)e~θ(Q) + Γθμ^θ(Q)e~θ(Q)
=Γθμ^ρ(Q)e~ρ(Q) (6.31)
のようにe~r,μ、e~θ,μもまた、点Qにおける基底ベクトルe~ρ(Q)で展開できる。
ここで、
∂e~σ/∂x^μ = e~σ,μ = Γσμ^ρe~ρ (6.32)
で定義される展開関数 Γσμ^ρには、接続という名前がついている。
・点Pの基底ベクトルe~μ(P)を点Qへ平行移動したベクトルe~r(P→Q)を用いれば、ベクトルの変化を各点ごとににかんがえることができ、その具体的な形は接続を使って次式となる。
e~ν(P→Q) = e~ν(Q) - Γνμ^ρ(Q)e~ρ(Q)dx^μ (6.33)
・式(6.17)で計算した∂A~/∂x^μを改めて定義する。
∂A~/∂x^μ=∂/∂x^μ(Aν(x)e~ν(x))
=A^ν,μ(x)e~ν(x) + A^ν(x)e~ν,μ(x)=A^ν,μ(x)e~ν(x) + A^ν(x)Γνμ^ρ(x)e~ρ(x)
=A^ν,μ(x)e~ν(x) + A^ρ(x)Γρμ^ν(x)e~ν(x)
={A^ν,μ(x) + A^ρ(x)Γρμ^ν(x)}e~ν(x) (6.34)
・最後の式の{}のなかの量が、A^νの共変微分。
・共変微分は∇μA^νまたはA;μ^νなどと書く。
∇μA^ν = A;μ^ν = A,μ^ν + A^ρΓρμ^ν (6.36)
・基底ベクトルをつけてベクトル量であることを強調する場合は次式となる。
∇μA^ = (∇μA^ν)e^ν = A;μ^νe^ν
= (A,μ^ν + A^ρΓρμ^ν)e~ν (6.37)
※ここまでの話は、次元を変えても同様に成り立ち、4次元時空であれば、式(6.37)のμやνは0から3を走る。
・一般のベクトル場A~の平行移動を定義する。
点PにおけるベクトルA(P)を点Qへ平行移動したベクトルA~(P→Q)は
A~(P→Q) = A^ν(P)e~ν(P→Q)=A^ν(P){e~ν(Q) - Γνμ^ρ(Q)e~ρ(Q)dx^μ}
={A^ν(P) - A^ρ(Q)Γρμ^ν(Q)dx^μ}e~ν(Q)
≒{A^ν(P) - A^ρ(P)Γρμ^ν(P)dx^μ}e~ν(Q) (6.38)
と書ける。(A^ρ(Q)Γρμ^ν(Q) ≒ A^ρ(P)Γρμ^ν(P)dx^μ)
・成分だけ抜き出すと次式となる。
A~ν(P→Q) = A~ν(P) - A^ρ(P)Γρμ^ν(P)dx^μ (6.39)
・これを使い共変微分を定義することもできる。
・点P,Qの座標をそれぞれP(x^μ)、Q(x^μ+dx^μ)とすると
A^ν(Q) = A^ν(x+dx) ≒ A^ν(x) + A,μ^ν(x)dx^μ
= A^ν(P) + A,μ^ν(P)dx^μ (6.40)
であることも使い、点Qと点Pの距離を無限小にする極限(ε→0)では、
A(Q)-A~(P→Q) = A^ν(Q)e~ν(Q) - A^ν(P)e~ν(P→Q)
= {A^ν(Q) - A^ν(P)}e~ν(Q) + A^ν(P)Γνμ^ρ(Q)e~ρ(Q)dx^μ
= {A,μ^ν(x) + A^ρ(x)Γρμ^ν(x)}e~ν(x)dx^μ
= A;μ^ν(x)e~ν(x)dx^μ (6.41)
となり、共変微分が得られる。
その3:2次元平面上で、任意の座標を使っている場合・2次元曲面の場合について考える。
・曲がった空間で平行移動を作図するときは、点Qの接平面に乗るように「回転させる」操作が必要。
・回転させて、点Qでの接平面に乗ったベクトルをe~ν(P→Q)と考える。
・これは平行移動により基底ベクトルの大きさを変えないことを意味する。
・「大きさを変えない」点に注目すると、接続を求めることができる。
・ベクトルの大きさは、内積という量により与えられ、内積は計量と深く関係している。
6.4 接続と計量の関係
・曲面上の接続Γμν^σが内積や計量とどうつながるのかを考える。
・接続:離れた2点でそれぞれ使っている基底ベクトル同士の関係を表す換算係数。
・計量:空間の歪の様子は各点ごとの局所的な三平方の定理で表され、それが計量に集約されている。
・接続もまた計量やその変化で書けると想像できる。
●計量とはどんな量か?
・大きさ(長さ)を決めるのが三平方の定理なので、その一般化を表す計量もベクトルの大きさ(長さ)に関わる量。
・線素の式はそれを表している(無限小変位dx^μの大きさそのもの)。
ds^2 = gμνdx^μdx^ν (6.47)
・無限小の変位は無限に小さい位置の変化なので、ベクトルで表される。
・3次元ユークリッド空間で、デカルト座標を使えば次式で表される。
dr~ = dxe~x + dye~y + dze~z (6.48)
・x=x^1、y=x^2、z=x^3のように番号を振り、アリンシュタインの縮約を使って書くと
dr~ = dx^μe~μ (6.49)
・dx^μは無限小変位ベクトルdr~のx^μ方向成分になる。
・ここでdr~の大きさを内積を使って計算する。
・3次元ユークリッド空間で2本のベクトルA~、B~を考え、それらがデカルト座標において
A~ = (A^x, A^y, A^z), B~ = (B^x, B^y, B^z) (6.50)
という成分をもつとする。
・このとき、A~とB~の内積は次式で定義される。
A~・B~ = A^xB^x +A^yB^y + A^zB^z (6.51)
・内積は順序を交換しても同じ結果になる。
B~・A~ = B^xA^x + B^yA^y + B^zA^z
= A^xB^x +A^yB^y + A^zB^z
= A~・B~ (6.52)
・また次の性質ももつ。
(kA~ + lB~)・C~ = kA~・C~ + lB~・C~ (6.53)
・x=x^1、y=x^2、z=z^3という書き方を使うと次式となる。
A~・B~ = A^1B^1 + A^2B^2 + A^3B^3 = Σ(i=1|3)A^iB^i (6.54)
e~x = (1,0,0), e~y = (0,1,0), e~z = (0,0,1) (6.55)
なので、e~x同士の内積は
e~x・e~x = 1・1 + 0・0 + 0・0 = 1 (6.56)
となる。同様に計算すると次式となる。
e~y・e~y = e~z・e~z = 1, (6.57)
e~x・e~y = e~y・e~z = e~z・e~x = 0 (6.58)
・まとめると次式となる。
e~i・e~j = δij = 1 (i=jのとき)
0 (i≠jのとき) (i,jは1,2,3のいずれか) (6.59)
・δijはクロネッカーのデルタ。
・この性質をもつ基底ベクトルの組を正規直交基底と言う。
・一般のベクトルで基底ベクトルを使って内積を計算する。
・基底ベクトルを使うとA~、B~は次式となる。
A~ = A^xe~x + A^ye~y + A^ze~z, B~ = B^xe~x + B^ye~y + B^ze~z (6.60)
・内積は次式となる。
A~・B~ = (A^xe~x + A^ye~y + A^ze~z)・(B^xe~x + B^ye~y + B^ze~z)
= A^xB^x + A^yB^y + A^zB^z (6.61)
A~・A~ = A^xA^x + A^yA^y + A^zA^z = (A^x)^2 + (A^y)^2 + (A^z)^2 (6.62)
・これはベクトルの大きさ|A~|の2乗で、
|A| = √(((A^x)^2 + (A^y)^2 + (A^z)^2) (6.63)
となっている。
・内積によりベクトルの大きさを決められることが、内積を導入する重要な理由。
・ベクトルの「ベクトルらしい」性質は、平行移動して重なるものは同じベクトルであるとみなすとか、線型独立なベクトルに分解できる(合成もできる)ところにある。
・ベクトルの「大きさ」という概念は、ベクトルには備わっていない。
●内積は物差しの目盛り間隔を決める・そのベクトルを何らかの物差しを用意して、測ることで初めて大きさが決まる。
・基底ベクトルを選ぶことは、どの方向に伸びている物差しを使うかを指定すること。
・さらにその物差しにどんな目盛りを振るかを指定するのが、基底ベクトル同士の内積を指定することに対応する。
・内積がベクトルの成分によりどのような値をとるかという結果は、基底ベクトル同士の内積がどのような値をとるかに直接的に関係する。
・2本のベクトルの内積を成分で定義しているということは、暗に考えている空間と、そこで使っている基底ベクトルに対して、内積の関係、e~i・e~jというベクトルの「交わり方」を指定しているということ。