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量子力学で生命の謎を解く

ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン 「量子力学で生命の謎を解く」メモ 

量子力学で生命の謎を解く

量子力学で生命の謎を解く

 

 ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン「量子力学で生命の謎を解く」メモ

 

第2章 生命とは何か?

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【まとめ】
・遺伝子は1個1個の原子や分子のようなものであり、量子力学に支配されている。
・遺伝は「秩序から秩序へ」という新しい原理に基づいている。
・生命は、比較的少数のきわめて秩序立った粒子が、生命体全体に影響をおよぼすことができる。
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・科学最大の疑問
 岩石のなかに存在する生きていない原子や分子が、どのようにして生き物に姿をかえているのか。
・生命のパズルに欠けていたピースは、量子力学の世界のなかに見つかった。
・生命は量子の縁に生きている。


・生命にまつわる重大な難問
 生命体を形作る物質はなぜ岩石を形作るときと違った振る舞いを示すのか。


・生きていない存在の二つの分類
①粒子からできている目に見える物質。
②そのあいだに作用する目に見えない力。


・熱力学:熱がどのように物質と作用するかを考える学問。
・物質を構成する粒子を、ニュートン力学の法則に従いランダムに衝突する膨大な数のビリヤード級のように扱う。


・熱力学は、それだけですべてを説明でき、ほぼあらゆる一般的な化学現象にあてはまる。
・熱交換が関係する化学プロセスは、分子レベルでは、ランダムな運動に基づく熱力学の原理により進行する。
→一つ一つのプロセスは構造化され秩序立っているようにみえるかもしれないが、すべて分子のランダムな運動により推進されている。


エントロピー:秩序の低さを表す
・秩序立った状態はエントロピーが低い。


・生命は、分子のランダムな運動(および化学反応)から得た自由エネルギーを使い身体を維持し、その複製を作る。
エントロピーの高い(無秩序な)衝突によるエネルギーを利用して自分自身をエントロピーの低い(秩序立った)状態に保つ)


・生命の細胞の構造はきわめて複雑。
 中心:染色体の詰まった核。
 細胞質:細胞小器官と呼ばれる分化した微小単位が点在。
 細胞小器官:ミトコンドリア(ヒトの細胞のなかで呼吸をおこなう)
       葉緑体(植物細胞のなかで光合成をおこなう)
・細胞全体は、せわしなく活動する微小な製造工場のように見える。
・その工場は何によって動き続けているのか?


・生物の材料は非生物を形作るのとほぼ同じ化学物質から成り、同じ化学に支配されている。
→生命は、重要な一点を除き、実際に複雑な熱力学的な系にすぎない(細胞は複雑な化学反応で作用する生体物質の入った袋であるが、その根幹をなすのは、分子のランダム運動)。


・遺伝子は染色体のなかに存在する。
・遺伝子は、たんぱく質と糖、デオキシリボ核酸(DNA)と呼ばれる生体物質からできている。
・重要な遺伝情報は、染色体のなかにあるDNAにより運ばれる。


<二重らせん構造>
・DNAのそれぞれの鎖は、リン原子と酸素原子およびデオキリボースという糖からできた分子状のひも。
・そのひもから「ヌクレオチド」と呼ばれる化学構造が、ひもに通したビーズのように突き出している。
ヌクレオチドのビーズ:アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C )、チミン(T)
ヌクレオチドがDNA鎖の上に並ぶことで、遺伝文字の1次元配列が作られる。


・細胞のなかで進行している化学反応はあまりに複雑。
・1個1個の細胞は、100万分の数マイクロリットルの液体で満たされた反応容器のなかで、何千種類もの生体物質をたえず合成し続ける。
[疑問]
①多種多様な反応がどうやって同時進行しているのか?
②ミクロな細胞のなかでそれらの分子の作用はどう統制されているのか?
→「システム生物学」という研究分野のテーマであるが、答えは謎のまま。


・生命に関するもうひとつの謎:死
・化学反応はつねに可逆であるが、生命はそうではない。


<量子>
・熱放射、光を含むすべての電磁気放射は連続的でなく「量子化」されおり、不連続な塊、光子という粒子として伝わる。
・電子はいくつかの決まった(量子化された)軌道しかとることができない。
・電子は二つの軌道のエネルギー差と正確に同じ量の電磁気エネルギーの塊、つまり量子(光子)を放出または吸収する。


<振動数とエネルギーの関係>
素粒子は波動としての性質も持つ。
・広がった波のように波長と振動数を伴う。
・振動が速ければ速いほどエネルギーは高くなる。


ハイゼンベルク不確定性原理
・電子の位置と運動量の両方を同時に、正確に測定することはできない。


波動力学
シュレーディンガー方程式は、粒子の運動の様子ではなく、波動の発展の様子を記述する。
・観測していないときには電子は実在する物理的波動であり、観測すると「収縮」して独立した粒子になる。


古典力学運動方程式の解は一つまたは複数の数であり、それによりある瞬間の物体の正確な位置が決まる。
量子力学シュレーディンガー方程式の解は波動関数と呼ばれる量であり、もし観測した場合にその電子がそれぞれの位置にみつかる”確率”を表した、一連の数を与えるもの。
・量子波動関数は空間全体に広がっており、ある電子の様子を記述する場合、同時に空間内のすべての点に見つかる確率を与える一連の数を導き出すしかない。
・その量子確率は、ミクロスケールにおける自然界の基本的性質。
・我々が示すことができるのは波動関数だけであり、それは同時に至る所に存在する。
・観測(測定)という行為を行わない限り、電子を局所的な粒子に「変えさせる」ことはできない。


・生体論者:生命の謎は原理的には未発見の物理法則や化学法則で説明できるはずと主張。


・熱力学で予想可能なのは大量の分子の平均的振る舞いであり、1個1個の分子の振る舞いではない。
・熱力学の法則などの統計的な法則では、少数の粒子からなる系を正確に記述することはできない。
・古典的な物理や化学の法則は、すべて「多数の粒子の平均化」つまり「無秩序から秩序へ」の原理に基づく。
・法則からのずれの大きさは関係する粒子の個数の平方根に反比例する。
・古典的法則に規則正しく従う系は、必ず多数の粒子からできていなければならない。


・遺伝の法則などの秩序立った振る舞いは、統計的法則で説明可能か?
・微小な生物学的仕掛けの少なくとも一部は、あまりに小さくて古典的な法則には支配されない。
・遺伝子は1個1個の原子や分子のようなものであり、量子力学に支配されている。
・遺伝は「秩序から秩序へ」という新しい原理に基づいている。


・デコヒーレンス:入念に整列させた量子力学系が、分子のランダムな運動によりばらばらになるプロセス。
・生きていない大きい物体の内部では、デコヒーレンスのせいで量子効果がすぐに消し去られる。
→温かい生物の身体が微細な量子状態を維持できるという考え方は、はじめのうちは怪しまれた。


・生命が生きていない物体と違うのは、比較的少数のきわめて秩序立った粒子が、生命体全体に影響をおよぼすことができること。
・生きていないマクロな物体で、量子力学が支配する基本的レベルの細かい構造に敏感なものは、既知の宇宙には一つも存在しない。
→このために生命は特別な存在になっている。