ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

宇宙が始まる前には何があったのか?

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)

ローレンス・クラウス 「宇宙が始まる前には何があったのか?」メモ


第6章 光速を越えて膨張する

・宇宙が厳密に平坦でないとすれば、どういうわけでこれほど平坦に近くなったのか?
・もろもろの初期条件が、どういうわけで宇宙を平坦にさせるような値になったのか?


○なぜ均一か?
・宇宙はなぜ、それほどまでに均一な状態になったのか?
・標準的ビッグバン・モデルによれば、今日観測可能な宇宙の中のひとつの領域が、角度にして1度以上離れた別の領域の存在や、その温度に影響されることはない。
→大きなスケールでガスが熱平衡になり、結果として宇宙全体がそれほど均一な温度になれるはずがない。


○グースのインフレーション宇宙
・宇宙が冷えるにつれ、ある種の相転移が起こったとすると、平坦問題が解決できる。

・一方の相の最低エネルギー状態が、他方の相の最低エネルギー状態よりもエネルギーが低いと、相転移にともないエネルギーが放出される。
そうして放出されたエネルギーを「潜熱」という。


・ビッグバンの膨張とともに宇宙の温度が下がると、膨張している宇宙の中に存在する物質と放射の混合物が、準安定状態に「ひっかかる」。
・宇宙の温度がさらに下がると、物質の放射は相転移を起こし、最低エネルギー状態に落ち着く。
・その相転移が完了する前に宇宙が引っかかっていた準安定状態(「偽の真空」)に蓄えられていたエネルギー(宇宙の「潜熱」)が総転移以前の宇宙の膨張に劇的な影響を及ぼしたはず。


・偽の真空のエネルギーは、宇宙定数のようにふるまう。
・宇宙が偽の真空にひっかかっているあいだ、膨張はどんどん加速する。
・ある時点で、われわれの観測可能な宇宙となる領域は、光の速度を越えて膨張する。
特殊相対性理論では、光の速度よりも大きな速度で空間の中を進むことはできない。
一般相対性理論によれば、空間そのものには、その制約はない。
・空間が膨張すると、二つの天体は空間に乗ったまま運ばれ、天体はそれぞれ元の位置に静止しているが、互いに超光速で遠ざかる。


・インフレーション期に宇宙は10^28倍以上に膨張した。
・インフレーション以前には、観測可能な宇宙に含まれているすべては、小さな領域に詰め込まれていた。
→領域全体が同じ温度になれた。


・インフレーション期の宇宙には、宇宙全域で同じ値を持つ、大きな偽の真空エネルギーが含まれていたため、宇宙は指数関数的に膨張した。
→インフレーションが終わる頃には、宇宙の曲率は途方もなく小さな値となり、結果として精密な測定を行うと、宇宙はほとんど平坦であるように見える。


○量子のゆらぎ
量子力学の法則より、非常に小さなスケールと時間間隔では、空っぽの空間は仮想粒子が生まれては消える世界であり、場の値は荒々しくゆれ動いている。
・この「量子ゆらぎ」は、一般には大きなスケールでは観測されない。
・インフレーション期には、量子ゆらぎが、小さな空間領域ごとに指数関数的膨張が終わるタイミングを決定する。
・インフレーションが終わったときに生じる密度ゆらぎのパターンは、宇宙マイクロ波背景放射の温度ゆらぎとして、大きなスケールで観測されたパターンと一致する。
・インフレーションが、重力の働きにより物質と放射が寄り集まり、銀河や星や惑星や人間になるための種となる密度ゆらぎが生じる原因であれば、われわれは真空(本質的に”無”であり、何もない空っぽの空間)の量子のゆらぎのおかげで、ここに存在する。
・量子ゆらぎは、インフレーションにより凍結され、今日われわれの見るものすべてを生じさせる種となった密度ゆらぎとして現れた。
→われわれは、量子的な無から生まれた


○「負」のエネルギーとは
・インフレーショの莫大なエネルギーはどこからきたのか?
・宇宙定数をもつ宇宙が膨張しているとき、どうすれば宇宙のエネルギー密度がつねに一定でありうるのか?
エネルギー保存の法則はどうなったのか?


・重力を考慮に入れると、物質や放射は「正」のエネルギーだけでなく、「負」のエネルギーをもつことができる。
・物質や放射など、正のエネルギーを持つものが生成されると、そのエネルギーとちょうど釣り合う負のエネルギーによりエネルギーの差し引きがゼロになる。


・ポテンシャル・エネルギーのゼロ点をどのように定義するかによらず、重力の作用だけしか受けない物体については、ポテンシャル・エネルギーと運動エネルギーの和は常に一定。


○ぴったりゼロに
・銀河の全エネルギーに対するニュートン方程式を、膨張宇宙に対する一般相対性理論から得られるアインシュタイン方程式となるよう厳密に書き換えると、銀河の全エネルギーに対応する項は、一般相対性理論の方程式では、宇宙の曲率を記述する項に対応する。

・曲率ゼロの平坦な宇宙では、そして平坦な宇宙である場合に限り、膨張とともに運動しているそれぞれの天体について求めたニュートンの全エネルギーは、厳密にゼロになる。
→平坦な宇宙では、運動が持つ正のエネルギーと重力による負のエネルギーとは、差し引きがちょうどゼロになる。


・空っぽの空間のエネルギーは、重力としては斥力働きをする。
・空っぽの空間のエネルギーは、空っぽの空間に「負」の圧力を持たせるから。
・宇宙が膨張するとき、宇宙は空っぽの空間に対して仕事をすることになる。そうして仕事がなされるおかげで、宇宙が膨張して大きくなっても、空間のエネルギー密度は一定に保たれる。