ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

量子力学で生命の謎を解く

ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン 「量子力学で生命の謎を解く」メモ 

ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン 「量子力学で生命の謎を解く」メモ

 

第8章 心

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【まとめ】
・脳のなかで量子力学的現象が起きているかもしれない場所は、神経細胞の膜のなかにあるイオンチャンネル。
・電磁場は神経細胞の発火により発生し、脳の神経発火のパターンと同じ情報をコードしている。
・電磁場は、脳の互いに離れた場所にあるコヒーレントなイオンチャンネルをすべて一つに結びつけて、無意識から意識的思考への移り変わりに役割を果たしているかもしれない。
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・意識とはいったい何だろうか?
・意識は科学分野のどこにどのように当てはまるか、誰も知らない。
・意識はすべての生命が持っている性質?
・意識は神経系を持つ生物に限られる?
・意識を持つににはどの程度の神経系が必要?


◎意識はどれほど奇妙なのか?
・意識のおかげで我々が宇宙について多くの事柄を知っている。
・意識の奇妙な性質がどのように機能しているかは分かっていない。


・意識を必要とする活動に共通する特徴は、「観念」により進められること。
・観念:ある複雑な情報の塊で、我々の意識はそれを一つにまとめることで、自分にとって意味のある概念を作る。


・意識は「さまざまな部分」からなる複雑な情報を「理解」することができ、その意味を「丸ごと」把握できる。
・我々の心は意識をもっているおかげで、観念や概念に促されて働くことができる。
・複雑な神経情報はどのように結びつけられて一つの観念になるのか?
  ↓
<結びつけ問題>
・脳の異なる領域にコードされた情報が、意識のなかでどうやって一つにまとめられるのか。


・風景や音は、一体となった感覚印象や記憶や概念として経験する。


・一つ一つの神経信号は、それぞれの神経細胞のなかに閉じこめられている。
・からみ合った何千億個という神経細胞間の何兆という連結の一つ一つがパルス列を受け渡すことで、情報が脳のなかを伝わる。
・パルスにコードされたそれぞれ別個の情報が、どのようにしてひとまとまりの知覚認識を生み出すのか、それが結びつき問題。


・意識を形作るのは、意味を含んだ観念、概念。
・観念はどのようにして人間の心、さらには身体を動かすことができるのか。


・自発的行動を引き起こすと信じている「自己」の感覚、意識はパルス信号のどこにあるのか?
・その「意識」とは正確に何ものであり、どのようにして脳という物体と相互作用し、腕や足や舌を動かすのか?
決定論的な宇宙からは、意識や自由意志は現れない。


・意識が何ものであり、どのようなしくみなのか誰も知らないため、意識に関するどんな説も推論の域を出ない。


◎思考のメカニズム
・神経信号は電線を伝わる電気信号とは異なる。
・電流に相当する電荷の移動は、活動電位の伝わる方向とは垂直に、細胞膜のイオンチャンネルを通じて外側から内側へ向かって起きる。
・イオンチャンネルは活動電位により開いた直後に再び閉じ、イオンポンプによりもとの膜電位差が回復する。
・イオンの扉が波のように次々と開いたり閉じたりすることで、電気パルスが細胞体から神経末端へ伝わっていく。


・1個1個の神経細胞の神経体は、コンピュータの論理ゲートのように作用し、入力に応じて出力ー発火するかしないかーを決める。
神経細胞が論理ゲートのようなものだとしたら、ある種のコンピュータとして考えることができるかもしれない。
→「心の計算理論」


◎心はどうやって物体を動かすのか
・ほとんどの神経生物学者は、心と体は同じ一つのものだとする「一元論」の考え方を好む。
・意識は量子力学的現象?
・人間の心は量子コンピュータ


◎キュビットを使った計算
量子コンピュータのしくみ>
・古典的なコンピュータの「ビット」を球形のコンパスにたとえる。
・その針は1(北極)または0(南極)を向くことができる。
・コンパスを180度回転させると、この二つの状態のあいだで切り替わる。
量子コンピュータでビットに相当するのが「キュビット」。
・空間内で好きな角度で回転させることができる。
・コヒーレントな量子重ね合わせ状態として同時にいくつもの方向を指すことができる。
・キュビットは自在性が高いため、古典的なビットよりも多くの情報をコードできる。


・計算能力が真に増大するのは、いくつものキュビットを組み合わせたとき。
・キュビットは「量子もつれ状態」を取ることができる。
量子もつれ:1個の粒子に起きたことが瞬時に別の粒子に影響を与える。
・それぞれのキュビット級がほかのすべてのキュビットと伸縮性のひもでつながっているとイメージできる。
量子もつれに相当するすべてのひもが計算リソースとなり、その本数はキュビットの数に対して「指数関数的」に、急速に増える。


・量子物理学者は、キュビットのコヒーレント状態を維持するため、高度で慎重に制御された物理系を使い、数個程度の原子でキュビットをコードし、その系を絶対零度近くまで冷やし、装置を環境からの影響を完全に遮断しようとしている。
・現世代の未熟な量子コンピュータから役に立つマシンへ成長させるには、難題が残っている。
・最大の問題がスケール問題。
・キュビットを増やすと、量子コヒーレンスともつれ状態を維持するのが
困難になる。
・細胞はデコヒーレンスを長時間食い止めることで光合成複合体のなかで励起子を運び、酵素のなかで電子や陽子を移動させている。
・中枢神経系のなかでも同様にデコヒーレンスが食い止められており、脳が量子計算を行っている可能性はあるのか?


◎量子イオンチャンネル?
・脳のなかで量子力学的現象が起きているかもしれない場所は、神経細胞の膜のなかにあるイオンチャンネル。
・イオンチャンネルは、脳のなかで情報を運ぶ活動電位、神経信号の伝達に携わり、神経情報処理において中心的役割を果たしている。
・イオンチャンネルの長さは10億分の1メートル(1.2nm)、幅はその半分以下なので、イオンは1列でしか通れない。
・1秒間に約1億個というスピードでイオンが出入りしている。
・イオンチャンネルはきわめて選択性が高い。


・きわめて速い通過速度と選択性が相まって、活動電位のスピード、脳のなかで思考を伝える能力を支えている。
・イオンがどのようにして速く選択的に運ばれるのかは、謎が多い。
・脳のなかのイオン輸送も、光合成と同様、量子力学により促進されているのでは?
 ↓↓↓
・イオンはチャンネルを通過する際に非局在化して広がり、粒子というよりもコヒーレントな波動になることが分かった。
・イオンはきわめて高い振動数で振動し、一種の共鳴プロセスにより周囲のたんぱく質にエネルギーが移動する。
・イオンチャンネルは「イオンの冷蔵庫」として作用し、イオンの運動エネルギーを半分ほどに下げる。
・冷却によりデコヒーレンスが食い止められ、イオンの非局在量子状態が維持され、チャンネルを通した電子輸送が促進され、選択性も実現する。
神経細胞のイオンチャンネルを通したイオン輸送には量子コヒーレンスが欠かせない役割を果たし、思考プロセスにも欠かせない部分。


・結びつけ問題を解決するのに必要な、互いに異なる神経細胞内のイオンチャンネルどうしがもつれ状態にあるということは、脳という暖かく湿った活動的な、デコヒーレンスを引き起こすような環境ではありえない。


・脳のなかの1個1個の物質粒子から、脳全体の電磁場へ視点の先を帰ることで、結びつけ問題を解決し、意識の存在する場所を明らかにできるかもしれない。


・電磁場は神経細胞の発火により発生し、脳の神経発火のパターンと同じ情報をコードしている。
・神経情報はパルスを発する神経細胞内に閉じこめられているが、そのパルスにより生じる電気活動は、脳の電磁場に含まれるすべての情報を一つにまとめ上げている。
・これが結びつけ問題の答えかもしれない。
・電位依存性イオンチャンネルが開閉すると、この電磁場はそのチャンネルを通る量子コヒーレントなイオンと相互作用する。


・神経発火により発生する脳自体の電磁場も神経発火に影響を与えている可能性があり、そのフィードバックループが意識の重要な構成要素かもしれない。
・脳の電磁場により神経発火が同期する現象は、神経活動の特徴のなかでも意識と関係があることが知られているごく少数の例の一つ。


・視野のなかに物体があることに気づいたときと、気づく前で、神経発火そのものは変化しない。
・気づく前は神経細胞の発火は互いに同期しておらず、気づくと同期する。
・電磁場は、脳の互いに離れた場所にあるコヒーレントなイオンチャンネルをすべて一つに結びつけることで、無意識から意識的思考への移り変わりに役割を果たしているのかもしれない。


・電磁場もイオンチャンネルも一つの脳のなかでおこなわれる神経プロセスにしか影響を与えることはできない。
・異なる脳のあいだで意志疎通することはできない。
・意識を説明するのに量子力学が必要であるという証拠はない。
量子力学の奇妙な性質が、生命のもっとも謎めいた産物である意識にまったく関係していないということが考えられるだろうか?