ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

驚異の量子コンピュータ

藤井啓祐 「驚異の量子コンピュータ」メモ  

驚異の量子コンピュータ: 宇宙最強マシンへの挑戦 (岩波科学ライブラリー)
 

藤井啓祐 「驚異の量子コンピュータ」メモ

 

第Ⅱ部 量子コンピュータの仕組み

第6章 量子とノイズのせめぎ合い
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【まとめ】
・量子的な重ね合わせ状態はノイズに対して非常に脆い。
エンタングルメントを用いた「量子誤り訂正」でノイズに対抗する。
量子コンピュータは確率振幅というアナログ量で計算を加速し、量子情報に発生するアナログエラーはデジタル化して訂正する。
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◎エラーとの戦い
・コンピュータの使命:計算をより速く、正確に行うこと。
・計算結果の精度が低いと意味がない。
・現実世界のデバイスは、製造段階の微妙なずれ、制御誤差でエラーが発生する。
ノイマンが誤り耐性のあるコンピュータ理論を構築した。
(個々の演算子そのものが一定確率で誤動作しても、エラーを訂正しながら計算を行うコンピュータ)
・デジタルコンピュータでエラーを小さくできた要因は、アナログな物理量(電圧・電流)に一定のしきい値を設け、0か1という離散的な値で情報を表現するデジタル化を行ったこと。
・アナログな物理量がゆらいでも、0や1の意味が変わらないようにした。


量子ビットはノイズに弱い
・量子情報の方が古典情報よりも圧倒的にノイズに弱い。
・量子的な重ね合わせ状態がノイズに対して非常に脆い。


・あらゆる要因が量子ビットに悪影響を及ぼす。
(量子チップ上の不純物、制御パルスのゆらぎの影響による量子ビットの意図しない回転、真空中に電磁波としてエネルギーを放出して量子ビットが初期化されるなど)
量子ビットを取り囲む環境系が、量子ビットの状態が0なのか1なのかを覗き見てしまい、可能性の重ね合わせを収縮させる。


・量子コヒーレンス量子ビットが重ね合わさった状態。
・デコヒーレンス:古典的なランダムな状態に戻ること。


◎量子情報はコピーできない
・古典情報でのエラーへの対処法は、情報をコピーして冗長化すること。
・複製不可能性定理:未知の量子情報を完全に複製することはできない。
→エラーから守るために量子ビットを複数コピーして保存することはできない。
・量子状態は確率振幅という連続的な値をとるアナログなパラメータで記述される。
・確率振幅は量子ビット数に対して指数関数的に増える。
ランダウアの問い:膨大な量の連続的パラメータで記述する量子状態を精密に制御することが物理的に許されているか?


◎アナログコンピュータ
・無限精度の実数の四則演算ができる、理想的アナログコンピュータが存在すれば、チューリングマシンで指数関数的な時間がかかる問題を瞬時に解ける。
・現実世界では、ノイズの影響のために無限に高い精度を保証することは不可能で、意味のあるアナログデータとノイズを切り離すことができない。
・理想的な計算モデルが高い計算能力をもつだけでは不十分。
・計算の原理的限界、物理法則で許された最強のコンピュータを知るうえで、原理的にそれを実現し、設計どおり正確な答えを出力することを物理法則が許しているかが重要。


エンタングルメントで戦え
<量子誤り訂正>
・複数の量子ビットを用いて複雑にエンタングルした状態として守られた「論理」量子ビットを構築することで、アナログエラーから量子ビットを守る


・同時に異なる相手とは完全にエンタングルすることができない。
・環境系との相互作用で生じるデコヒーレンスは、量子ビットと環境系との望ましくないエンタングルメント。
・情報を保持している量子ビットたちを強くエンタングルさせてタッグを組ませることで、環境とエンタングルする余地を奪えばよい。


・複数の量子ビットエンタングルさせ必ず同じようにふるまうようにして論理量子ビットを構成する。
・エラーが発生するとエンタングルが壊れ、同じふるまいをしなくなる。
・これを検出し、残った情報から元の状態を復元する。


しきい値定理の証明>
量子コンピュータの部品となるデバイス、状態初期化、量子演算、測定においてノイズが含まれていても、その大きさがあるしきい値よりも小さければ、計算結果の精度をいくらでも上げることができる。
量子コンピュータが物理法則で許された現実的なモデルなのか、計算機科学の新たな基礎となりうるかの点に関して、理論の完全勝利。


・当初、しきい値が要求するエラー率は0.001%程度だったが、現在では1%程度でも許容できる理論が構築されている。


量子コンピュータは確率振幅というアナログ量を使い計算を加速する。
・量子情報に発生するアナログエラーはデジタル化して訂正可能。
量子力学はデジタルとアナログが両立するような、美しい構造をもつ。