ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ワープする宇宙

リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ  

リサ・ランドール  監訳 向山信治 訳 塩原通緒

「ワープする宇宙」メモ

 

Ⅰ部 空間の次元と思考の広がり

第2章
秘密のパッセージ ー 巻き上げられた余剰次元
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【まとめ】
・次元の数や形状によらず、無限に伸びた次元上の各点には、巻かれた次元をすべて内包したコンパクトな空間がつねに存在する。
・巻き上げられた次元は有限であり、力線は無限の次元の方向だけに拡がる。
・巻き上げられた次元の大きさよりも長い距離で離れた物体間の重力を測定している限り、余剰次元の存在は知り得ず、余剰次元が重力の距離依存に関係していくるのは、コンパクトな空間のわずかな領域においてのみ。
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余剰次元の証拠はなんらかのしくみで隠れてしまうことがあるのか?
余剰次元をもつ宇宙も、私たちに見えているような空間次元が三つの構造に見えることがあるのか。


・巻き上げられた次元:極端に小さく「コンパクト化」された次元
・この次元はどこにも伸びない
・三次元のように広がらず、糸巻きに巻き付いた糸のようにすぐに巻き戻る。
・コンパクト化された次元では、二つの物質の距離が長くあくことはない。
・コンパクト化された次元が存在していても、これを検出するのは至難の業。


●物理学における巻き上げられた次元
・ひも理論:量子力学と重力を結びつける理論の最有力候補
・ひも理論は、余剰次元について考えるべき具体的な理由を示している。
・ひも理論よりも前に、余剰次元の考え方は存在していた。


アインシュタイン相対性理論余剰次元の可能性に扉を開いた。
相対性理論は特定の空間次元の数だけで成り立つわけではない。
・三次元でも、四次元でも十次元でも通用する。


・オスカー・クラインの説:余剰次元は円状に巻かれていて、大きさは10^-30cm、この巻き上げられた極小次元はあらゆるところにあり、空間のどの点も10^-30の微少な円をもっている。
・この小さな物理量をプランク長さという。
プランク長さは重力の量子論に自然に現れてくる唯一の長さで、重力は空間の形状に関連している。


・クラインの考えた識別できないほど小さいものは、物体の厚みではなく、空間そのもの。
・空間が小さいとはどういうことか?
・巻き上げられた次元をもつ宇宙とは、その内部の生物からはどう見えるのか?
・答えは、巻き上げられた次元の大きさしだい。


<ホース型宇宙>
・ホースは長いゴムシートが巻き上げられ、小さい円の断面をもつ管になったもの。
・宇宙がホースのような形状をしていたら、
 ①非常に長い次元が一つ、
 ②非常に小さい巻き上げられた次元
がある。


・ホース表面に張り付いている虫には、宇宙は二次元に見える。
・虫が進めるのは、ホースの長さに沿った方向と、ホースの円周に沿った方向。
・ここにいる虫が周囲を観測できたら、ホースの長さに沿った次元はとてつもなく大きい(無限に長いかもしれない)。
・もう一つの次元はとてつもなく小さい。


・虫よりも大きく、粗い解像しかできない生き物からは、余剰次元は見えず、ホースの長さに沿った一つの次元しか見えない。
・物理効果が余剰次元の存在を暴くこともない。
・大きな生き物は、物質やエネルギーの小刻みな揺れなど、微変動を関知できなければ、余剰次元の存在は記録されない。


<カルツァ-クラインの宇宙>
・この宇宙は三つの空間次元と、目に見えない空間次元がもう一つある。
・巻き上げられた小さな次元を一つ含む四次元のカルツァ-クライン宇宙も、私たちから見れば次元の数が実際よりも一つ少なく見える。
・コンパクト化された余剰次元は、その大きさが小さければ決して発見されない。


余剰次元空間のなかの点は、人体のなかの細胞のようなもの。
・三次元空間の各点に、コンパクト化された円がそっくり乗せられる。
・巻き上げられた次元がどんな形状をしていても同じこと。
・次元の数が多ければ、膨大な数の「コンパクトな空間」が考えられる。
・空間ごとに、次元はそれぞれ厳密に異なるかたちで巻き上げられている。
・ひも理論にとって重要なのが、カラビーヤウ多様体
 →複数の余剰次元をきわめて特殊なかたちで巻き上げ、絡み合わせたもの。


・巻き上げられた次元がいくつあり、どのような形状をしていても、無限に伸びた次元上の各点には、巻かれた次元をすべて内包したコンパクトな空間がつねに存在する。
・ひも理論が正しければ、空間のあらゆるところに、微少な六次元のカラビ-ヤウ多様体が存在している。


ニュートンの重力の法則と余剰次元
ニュートンの重力の法則:重力が質量のある二つの物体間の距離に依存する。
・逆二乗即:重力の強さは距離が長くなるとともに、距離の二乗に逆比例して弱まる。
・重力の逆二乗則は、物理法則のなかで最も古く、最も重要なものの一つ。
・重力法則の距離依存は、空間次元の数と密接に関連する。
・重力が空間に広がるときにどれだけ急速に拡散するかを、次元の数が決める。


・二つ以上の次元に均一に分散されるものが特定の対象に及ぼす影響力は、その対象が遠くにあればあるほど小さくなる。
・重力も遠ければ遠いほど広く分配される。


ニュートンの重力法則は、二つの事実から得られる。
 ①重力がどの方向にも等しく作用する。
 ②空間次元が三つあること。
・放射状の力線が惑星の中心から外に向かって広がっているとする。
・この力線の密度が、惑星が近傍の物質に及ぼす重力の引く強さを決定する。
・物体を突き抜ける力線が多ければ、それだけ重力による引力が強く、力線が少なければ、引力が弱い。
・どの距離にある球殻にも一定の数の力線が交差する。
・遠くても、近くても力線の数はつねに変わらない。
・力線は球面のすべての点に散らばるため、遠いところにかかる力は弱くなる。
・球面を通過する力線の数はつねに一定、その球の面積は、半径の二乗に比例する。
→一定の重力線の数が球面全体に散らばるので、重力は半径の二乗にしたがい低下する。この重力の拡散が、重力の逆二乗の法則の起源。


ニュートンの法則とコンパクトな次元
・距離との逆二乗の関係がでてくるのは、空間次元が三つのときだけ?
余剰次元を含めた理論からニュートンの逆二乗法則が出てくるのはなぜか?


・ホースの中に水を通すと、水は最初は三次元に広がるが、その後はホースの長さに沿った次元だけに広がる。
 ↓
・力線はコンパクトな次元には勝手にどこまでも広がっていかない。
・コンパクトな次元の大きさは有限。
・力線は最初は全次元に広がるが、余剰次元の大きさを超えて広がった時点で、無限の次元の方向だけに広がるしか選択肢がなくなる。
余剰次元の大きさより短い距離のところでは、それらの力線も全方向に拡散する。
・その小さなスケールでの重力が測定できれば、高次元重力のふるまいが測定されたことになる。


余剰次元の大きさよりも長い距離のところでは、力線は無限の方向だけに広がる。
余剰次元の大きさより距離が長いところでは、余剰次元が存在しなかったかのように、重力の法則がニュートンの逆二乗法則に戻る。
・巻き上げられた次元の大きさよりも長い距離で離れた物体間の重力を測定している限り、余剰次元の存在は知り得ない。
余剰次元が重力の距離依存に関係していくるのは、コンパクトな空間のわずかな領域においてのみ。