ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ワープする宇宙

リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ  

リサ・ランドール  監訳 向山信治 訳 塩原通緒

「ワープする宇宙」メモ

 

Ⅰ部 空間の次元と思考の広がり

第4章
理論物理学へのアプローチ
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【まとめ】
理論物理学へのアプローチには、ボトムアップ方式の「モデル構築」と、トップダウン方式の「ひも理論」がある。
素粒子物理学素粒子のふるまいを説明する自然法則を見つけようとするもので、その理論とは、素粒子がどう相互作用するかを予言する一定の規則と方程式を伴った明確な原理原則のこと。
・標準モデルは物質の基本構成単位(電子、アップクォークダウンクォーク)と、それ以外の一時的に現れる基本素粒子の相互作用を記述する従来の素粒子物理理論をさし、素粒子に相互作用を果たさせる四つの力のうち三つ(電磁気力、弱い力、強い力)についても説明される。
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<モデル構築>
・物理学上の特定の問題を解決する方法を見つけ、そこを出発点として理論を組み立てようとするもの。
ボトムアップ方式。
・経験的な観測に基づくアリストテレス的アプローチ。

素粒子物理学のモデルは、標準モデルの根底にあるかもしれない別の物理理論を推測したもの。
・理論の原則が適用される距離やエネルギースケールはさまざま。
・モデルは、各理論の違いを識別する特徴の核心に迫る一手段となる。

・理論をケーキづくりの全般的な手引きとすれば、モデルは個々の詳細なレシピに相当する。
・基盤となる物理理論のどの部分が既存の観測結果を説明し、実験でわかった事柄のあいだの
関係性を明らかにするかを突き止めようとしている。
・優れたモデルには貴重な特質がある。

・高エネルギー実験は新粒子を探す実験であるが、モデルを検証し、よりよいモデルをつくる手がかりを見つけるためのものでもある。
素粒子物理学のモデルに含まれる新しい物理の原理・法則は、測定可能なエネルギー範囲に適用される。
→モデルは、新粒子とともに、その粒子間の検証可能な関係性を予言する。
・高エネルギー実験の目的:根底にある物理法則と、その法則に説得力をもたせる概念構成を明らかにすること。


<ひも理論>
・ある一定の理論から普遍的な予言を導こうとするもの。
トップダウン方式。
・根本的な真理から洞察を得ようとするプラトン的アプローチ。
・基本的な原則:粒子が自然界の最も基礎となる物体である。
・ひも理論は、現在の装置を使い実験的に調べられるエネルギースケールの1兆倍の1万倍のスケールで定義される理論。
→理論と現実世界のつながりを見つけるのは困難。
・ひも理論の対象は、極小の物体と高エネルギーのプロセスであり、現在の検出器では見ることができない。
・ひも理論の基本的な構成要素の配列方法が未確定のため、その配列により予言される粒子も変わる。
・推論から正しい物理原則をすべて抽出し、ひも理論の予言を実世界と合致させるのは困難。


素粒子物理学
素粒子のふるまいを説明する自然法則を見つけようとするもの。
・理論とは、これらの粒子がどう相互作用するかを予言する一定の規則と方程式を伴った明確な原理原則のこと。
・できるだけ簡素な規則とできるだけ少ない基礎的な要素であらゆる観測結果を説明できる理論が見つかるのが望ましい。


・エレガントな理論を見つけるには障害がある。
・そのような理論から現れてくるはずの単純性は見あたらない。
・この世界は複雑。
・実際の宇宙は、理論上で理想的に記述されるほど純粋・単純で秩序正しくはない。


●物質の中核
素粒子:物質の中核にあり、それ以上分解できないもの。
素粒子物理学の最終目標:物質の最も基本的な構成要素と、その構成要素をつかさどる最も基礎的な物理法則を発見すること。
素粒子物理学者が微少な距離スケールを研究するのは、素粒子がこのスケールで相互作用を果たし、自然界の基本的な力を整理しやすいから。

・調べる距離スケールを小さくしていくと、より基礎となる物理法則にもとづく新しい世界が開ける。
・基礎的な物理法則は、もっと大きなスケールにおいて重要な影響を与える。


・すべての物質は原子からできている。
・原子と原子が化学作用により結びついて分子となる。
・原子のサイズ:1オングストローム(1センチの1億分の1)
・原子は中心部にある正の電荷を帯びた原子核と、その周囲を回る負の電荷を帯びた電子からなる。
原子核は、正の電荷を帯びた陽子と、電気的に中性の中性子からなる。
・陽子と中性子を総称して核子という。


・陽子と中性子にも下部構造がある。
・基礎的な構成単位をクォークという。
・陽子には二つのアップクォークと一つのダウンクォークが含まれる。
中性子には二つのダウンクォークと一つのアップクォークが含まれる。
・これらのクォークを結びつけるのが「強い力」とよばれる核力。
・電子は基礎的な単位で、内部に下部構造を含まない。


・標準モデル:物質の基本構成単位(電子、アップクォークダウンクォーク)と、それ以外の一時的に現れる基本素粒子の相互作用を記述する従来の素粒子物理理論をさす
・標準モデルでは、素粒子に相互作用を果たさせる四つの力のうち三つ(電磁気力、弱い力、強い力)についても説明される。
・弱い力と強い力は基本素粒子に働き、核過程に重要な役割を果たす。
・これらの力がクォークを結合させたり、原子核を崩壊させたりする。


・重いクォークや電子に似た粒子もある。
・電子の質量は陽子の2000分の1だが、電子と同じ電荷を帯びたミューオンという素粒子は、電子の200倍の質量がある。
・電子と同じ電荷を帯びたタウ粒子は、ミューオンの10倍の質量をもつ。
・重い粒子を生み出すには、高度に凝縮されたエネルギーが大量に必要で、今日の高エネルギー粒子加速器がそれを実現させている。
・重い素粒子は、物質世界に安定して存在する物質の内部にはない。
・私たちの知る物質を構成する素粒子よりも重い素粒子は、物質の構成要素にはなっていない。
・これらの素粒子は、ビッグバン直後の初期宇宙の一部をなしていた。
・標準理論に含まれる重い素粒子がなぜ存在するかはわからない。
→標準モデルが抱える大きな謎の一つ。
・そのほかの謎
 ①なぜ四つの力があり、それ以外はないのか?
 ②まだ検出されていない別の力がある可能性はないのか?
 ③重力はほかの力に比べてなぜ弱いのか?
 ④どうしたら量子力学と重力をどの距離スケールでも矛盾なく両立させられるか