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ワープする宇宙

リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ  

リサ・ランドール  監訳 向山信治 訳 塩原通緒

「ワープする宇宙」メモ

 

Ⅲ部 素粒子物理学

第10章
素粒子の質量の起源 ー 自発的対称性の破れとヒッグス機構
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【まとめ】
・自発的に破れる対称性は、物理法則によっては保存されるが、この世界で実際にものが配置 されることにより保存されなくなる対称性。
・弱い力を伝えるゲージボソンは質量ゼロではありえないが、ゲージボソンに質量があったら、この理論の高エネルギーの予言は意味をなさない。
・ヒッグス機構が弱い力の対称性を自発的に破り、その自発的な破れが質量のあるゲージボソンの問題解決の基盤となる。
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・対称性が完全でないとき、それを対称性が「破れている」という。
・最良の理論は、対応理論のエレガントさを保持しながら、この世界の現象と矛盾しない予言をするのに必要な対称性の破れを組み込んでいなければならない。


・ヒッグス機構:粒子は質量を獲得していながら、質量をもつ粒子が問題を起こすようなエネルギーでは質量がないかのごとく作用する。


自発的対称性の破れ
・自発的に破れる対称性は、物理法則によっては保存されるが、この世界で実際にものが配置されることにより保存されなくなる対称性。
自発的対称性の破れがおこるのは、本来なら存在するはずの対称性を系が保存できないとき。


・円の中心にたつ1本の鉛筆を考える。
・鉛筆が倒れる物理は、鉛筆がどの方向に倒れても同じ。
・対称性を破るのは鉛筆そのもの。
 →その系の状態


・どんな対称性も、保存しない。
・からっぽの空間にはあらゆる対称性が存在するが、空間はからっぽではない。
・恒星、太陽などの構造が存在し、それらが特定の位置を占め、特定の方向に伸びている。
→もとの対称性は保存しない。


・弱い力にかかわる対称性も、自発的に破れる。


●問題点
・弱い力は近距離にある物質にしか作用しない(10^ー19センチ)


・場の量子論:弱い力が近距離にしか働かないことから導かれる帰結
 →弱い力を伝えるゲージボソンは質量ゼロではありえない。


・力の理論では質量のある粒子の存在は問題あり。
ゲージボソンに質量があったら、この理論の高エネルギーの予言は意味をなさない。

・問題を解決するには、ヒッグス機構のプロセスを通じて弱い力の対称性を自発的に破らせる


・質量のないゲージボソンに存在する偏極は二つ。
・質量のあるゲージボソンには偏極が三つ存在する。
→質量のないゲージボソンは高速で進み、決して静止しない。
 運動方向はつねに一つに決まっている
 進行方向に垂直な方向をそれ以外の平行な偏極と区別可能
 偏極は二つ


・質量のあるゲージボソンは、静止できる。
・静止しているゲージボソンには三つの方向がすべて同等。
→三つの偏極が存在


・おかしな高エネルギーのふるまいを排除するには対称性が必要。
・この対称性は三つめの偏極を排除することで誤った予言を避ける。
・その偏極は質量のあるゲージボソンには不可欠なもの。
→対称性により質量も排除されてしまう


・高エネルギーのゲージボソンと低エネルギーのゲージボソンの違いを認識すること
・高エネルギーの問題ある予言を避けるには、内部対称性が不可欠。
・質量のあるゲージボソンのエネルギーが低い場合、対称性は保存されなくていよい。


・ヒッグス機構:自発的対称性の破れにもとづき、低いエネルギーにおいてのみ、弱い相互作用の内部対称性を破る。
・もう一つの偏極が必要となる低エネルギーにおいて、その偏極が存在することになる。


●ヒッグス機構
・ヒッグス機構には「ヒッグス場」が必要。
・ヒッグス場ではヒッグス粒子が生成される。
・ヒッグス場は非ゼロ値をとることができる。
・非ゼロ値の場:その場が帯びている荷量をもちながら、実際の粒子はいっさ含んでいない空間。


・非ゼロ値の場は、ウィーク荷を宇宙のいたるところに分布させている。
ウィークボソンは真空のウィーク荷とも相互作用する。
・真空いっぱいに広がったウィーク荷は、ウィークボソンが長い距離にわたり力を伝えるのを妨害する。
・弱い力を遠くの粒子に伝えようとすると、力を運ぶウィークボソンはヒッグス場にぶつかり行く手を阻まれる。


・短距離は進むことができ、遠距離は進めない粒子は、非ゼロの質量をもつ。
ウィークボソンが移動を妨害される
 →ウィークボソンには質量がある


・ヒッグス機構はクォークレプトンの質量も決めている。
クォークレプトンウィークボソンと似た経緯で質量を獲得する。


・ヒッグス機構が弱い力の対称性を自発的に破り、その自発的な破れが質量のあるゲージボソンの問題解決の基盤となっている。


●弱い力の対称性の自発的破れ
・二つのヒッグス場がどちらもゼロ値なら、その二つは入れ替え可能、弱い力の対称性は保存する。
・ヒッグス場の片方が非ゼロ値をとると、ヒッグス場は弱い力の対称性を自発的に破る。


●おまけ
・光子だけがウィーク荷を帯びた真空のなかを邪魔されずに進むことが可能。
→質量ゼロでいられる
・光子の移動はヒッグス場の非ゼロ値により妨げられない。
・真空はウィーク荷を帯びているが、電荷は帯びていない。
・光子は電磁気力を伝える粒子なので、電荷を帯びたものとしか相互作用しない。
→光子は真空から妨害を受けることなく遠くまで力を伝えられる。
 光子は非ゼロ値のヒッグス場があっても質量ゼロでいられる唯一のゲージボソン