ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ワープする宇宙

リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ  

リサ・ランドール  監訳 向山信治 訳 塩原通緒
「ワープする宇宙」メモ


Ⅴ部 余剰次元宇宙の提案

第20章
ワープしたパッセージー階層性問題に対する回答
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【まとめ】
・五次元時空の五番目の空間次元をはさんだ二枚のブレーンからなるモデルでは、ブレーンがエネルギーを帯びていることにより五番目の時空が歪む。
・時空の歪みにより、グラビトンの確率関数は五番目の次元に沿って変わり、最初のブレーンを離れ、二番目のブレーンに向かうところで急激に減少する。
・標準モデルが置かれている二番目のブレーン(ウィークブレーン)ではグラビトンの確率関数はきわめて小さいため重力の強さがきわめて弱くなり、これがこの世界の重力が弱い原因(階層性問題の解決)。
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●歪曲した幾何と、その驚くべき帰結
・この章の幾何は、五次元時空の五番目の空間次元をはさんだ二枚のブレーンからなる
・標準モデルのすべての粒子は、ヒッグス粒子とともに二つのブレーンの片方に閉じこめられている。
・五番目の次元に存在する唯一の力が重力。
・重力がなければ、それぞれのブレーンはふつうの四次元世界と同じに見える。
・ブレーンに閉じこめられたゲージボソンと粒子は、五番目の次元など存在していないように力を伝え、相互作用する。
・標準モデルの粒子はブレーン上の三つの平坦な空間次元を移動する。
・力もブレーンの平坦な三次元の表面にしか広がらない。

・重力は違う
・重力はブレーンに閉じこめられない。
・五次元バルクのいたるところに存在する。
・重力がすべてのところで等しくかんじられるとは限らない。
・ブレーン上のエネルギーと五次元バルク内のエネルギーが時空を曲げるので、これがきわめて大きな重力場の違いを生じさせる。


・エネルギーが重力場を生み出す。
・ブレーンがエネルギーを帯びていれば、それにより時間と空間が曲がる。


・エネルギーを帯びた二枚のブレーンが空間の余剰次元をはさんでいる場合、時空がどのように曲がるか?
アインシュタインの重力方程式の解より、そのエネルギーは重要な意味をもち、時空は劇的に曲がる。


・五番目の次元の両端にある二枚のブレーンに着目する。
・この二枚の境界ブレーンは、完全に平坦。
・どちらの端のブレーン上にいても、そこは三プラス一次元の世界。
・三つの空間次元において無限に伸び、固有の重力効果がない、平坦な時空のように見える。
・五番目の次元には両端にしかブレーンがないが、五番目の次元のどこか一点にとどめられることにより得られる三プラス一次元の表面の幾何は、平坦に見える。
・四次元の平坦な時空のスライスが五番目の次元方向に沿って張り合わされたようなもの。

・この五次元幾何は「歪曲(ワープ)している」という。
・各スライスが平坦でありながら、全体のワープ係数で組み合わされる幾何。
・ワープ係数:五番目の次元の各点における位置、時間、質量、エネルギーに関して全体のスケールを変える関数のこと。


・歪んだ時空ではあらゆるところが曲がっている。
・この曲がりにより、空間のものさしと時間の刻み速度は全面的に修正され、五番目の次元のどの点においても違う。
・歪曲した時空の曲がりを表すのがグラビトンの確率関数の形状。
・グラビトン:重力を伝える粒子で、その確率関数は、空間のどの定点でグラビトンが見つかりやすいかを表す。
・重力の強さはこの関数に表されている。
・値が大きければ、その特定の点での重力の相互作用が強く、重力も強くなる。


・平坦な時空:グラビトンの見つかりやすさはすべてのところで等しい。
→平坦な時空におけるグラビトンの確率関数は一定

・曲がった時空:グラビトンの確率関数の値は時空の各点で異なる。

・歪曲した幾何では時空の各スライスが完全に平坦なので、グラビトンの確率関数も三つの標準的な空間次元に沿っては変わらない。
・変わるのは五番目の次元に沿ってだけ。
・五番目の次元においては各場所によりグラビトンの確率関数が異なる値をとるとしても、ある二つの点が五番目の次元に沿い等距離で離れているかぎり、その値は同じとなる。
→グラビトンの確率関数は、五番目の次元における位置だけにより決まる。
・それは歪曲した時空の曲がりの特徴を完全に表す。
・この関数は一つの座標、五番目の次元の座標だけで変わる。


・確率関数は最初のブレーンを離れ、二番目のブレーンに向かうところで急激に減少する。
・最初のブレーンを重力ブレーン、二番目のブレーンをウィークブレーンと称する。
・重力ブレーン:正のエネルギーを帯びる
・ウィークブレーン:負のエネルギーを帯びる
・このエネルギーの割り当てが、グラビトンの確率関数を重力ブレーンの近辺でとても大きくする原因。


・グラビトンは、その受け渡しにより重力の引く力を生み出す粒子。
・グラビトンがウィークブレーンの近辺では見つかりにくい。
→ウィークブレーンでのグラビトンの相互作用は大きく抑えられる。


・重力の強さは五番目の次元での位置に依存する。
・この歪曲した五次元世界の両端をなす二枚のブレーン上で感じられる重力の強さは、大きく異なる。
・重力が局所集中する最初のブレーンでは重力が強くなる。
・標準モデルが置かれている二番目のブレーンではきわめて弱くなる。
・二番めのブレーンにとどめられている標準モデルの粒子とグラビトンとの相互作用はきわめて弱い。


・この歪曲した時空では、観測される質量とプランクスケール質量とのあいだに階層性が生じる。
・ウィークブレーン上でのグラビトンの確率関数はきわめて小さい。
・このシナリオが世界の正しい記述なら、その小ささこそ、この世界の重力が弱い原因。


・このモデルではウィークブレーン上の重力が弱くなるのに、二つのブレーンが大きく離れている必要はない。
→このモデルは大きな余剰次元説よりも現実的な可能性がある。
・歪曲した幾何のなかでのブレーン間の距離は、プランクスケール長さよりもほんの少し大きい必要があるだけ。
・歪曲した幾何では、不自然な大きな数字がなくても階層性の説明が可能。
・指数関数が自動的に控えめな数字をきわめて大きい数字かきわめて小さい数字に変えるから。
・ブレーン間の距離を最も単純な推量より16倍ほど大きくするだけで充分に階層が説明できる。