ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ヒトはなぜ自殺するのか:死に向かう心の科学

ジェシー・ベリング 著 鈴木幸太郎 訳  「ヒトはなぜ自殺するのか」メモ  

ジェシー・ベリング著 鈴木幸太郎 訳

「ヒトはなぜ自殺するのか:死に向かう心の科学」メモ   

 

ジェシー・ベリング 訳 鈴木光太郎
「ヒトはなぜ自殺するのか」メモ

4章 自殺する心に入り込む
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【まとめ】
・自殺する人間は自殺に至るステップを順に踏んで移動し、ステップは6つあり、その移動ごとに危険度が増す。
<段階1:期待値に届かないこと>
・自殺に先行するプロセスで役割を果たすのは、個人的基準と現在の生活状態との落差の程度。
<段階2:自己への帰属>
・歪んだ自己像と他者から切り離されているという感覚が高まる。
<段階3 自意識の高まり>
・自分の欠点への執着により、自意識が耐えられない苦痛をもたらし、他者への関心の欠如という認知的歪も生じる。
<段階4 否定的感情>
・圧倒的な否定的感情(精神痛)から逃げたいという欲求により意識が正常に機能せず、身体的苦痛に逃避し、意識の喪失を求める。
<段階5 認知的解体>
・「時間的展望」が変わり、時間は這うように過ぎ、無意味な心的作業に没入して圧倒的な情動を避け、「感情死」の状態になる。
<段階6 抑制解除>
・二分法的思考にはまりこみ、通常から逸脱した変性意識状態になり、精神的苦痛が弱まらなければ、死に対する恐怖の低減と身体的苦痛への耐性が増加する。
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<ロイ・バウマイスター 「自己逃避としての自殺」>
・ロイの逃避説は、逃避を1連のステップ、段階として見る。
・自殺する人間は自殺に至るステップを順に踏んで移動する。
・その移動ごとに危険度が増す。
・ステップは6つある。


<段階1:期待値に届かないこと>
・自殺者の大部分は平均以上の生活をしている。
・平穏無事で快適な状態から、突然生活水準が大きく落ち込むと、それがその人を危険な方向に向かわせることがある。
・自殺に先行するプロセスで役割を果たすのは、個人的基準と現在の生活状態との落差の程度。
・貧乏なだけでは自殺のリスクにはならない。
・富裕から貧困への転落はリスク要因になる。
(自殺率は発展途上国よりも先進国で高い。
 アメリカでは、生活水準が高いほど、自殺率が高い)
・不合理、不可能な要求に答えようとすることも破滅の原因。


<段階2:自己への帰属>
・自殺に至る道を歩み始めるのは、段階1の不運な出来ごとで、自分を非難する時から。
・困った状態になったことを自分で呪うなら、それが赤信号。


・暗い性格で自分のことをよく思わない人間は、自分に対する期待もなく、逆にそれが自殺に対する防御装置になる。
→自分を批判的に見るだけでなく、ほかの人々に対してもそうする傾向がある:厭世家


・自殺する人間:自分自身を嫌悪するが、他方でほかの人々はよいのに自分だけが悪いという謝った印象をもち、それに苛まれる。
・自分にのしかかる他者の思考の耐えがたい重さを感じる。
・「鏡に写った自我」に相当。
・ほかの人にどう評価されているかという仮定に基づくが、その仮定が謝っていることが多い → 自己像は歪む
・精神的に健康な人:自己像は実際よりよく見える。
 欝状態の人:自己像はより正確になり、よいものとしては見えない。
・鏡のなかの壊れやすい自己像は、私たちに自己嫌悪を生じさせ、この世界で生きている価値がないように感じさせる。


・自殺につきまとう感情:ふつうの人々から完全に切り離されているという感覚。
・心を開くことはその人にとっては恐ろしいこと。
・打ち明けるよりも自殺するほうが相対的に苦しみが少ない選択肢として感じられる。
・自殺しかけている人は、自分だけが並外れて我慢できない状況におかれていてると感じる。


・精神病患者は現実をありのままに見ていて、それが彼らを狂気に導く。
・妄想は度が過ぎると厄介であるが、多少であれば誰も傷つかず、健康的。


<段階3 自意識の高まり>
・自殺の動機は、不快で鋭利な自意識から逃れたいという欲求。
・自己破壊の思考回路にはまり込むと、自己中心的になる。
 それは自分の欠点への不必要な執着。
・個人的基準に対して自分をたえず厳しく比較する結果、自意識は私たちを侵害して呑み込み始め、耐えられない苦痛をもたらす。


・自殺者の他者への関心の欠如は、自殺者の心を特徴づけている認知的歪みの特徴。
・共感の不能、共感能力の一時的弱まりを経験している。
・自分の死が周囲に与える影響、自分を心配してくれている人のことを考えようとしても、その相手の身になるのが困難。


・本物の遺書には一人称単数が頻出する。
→高い自意識を反映
・自殺者のうち遺書を残そうとするのは30%にすぎない。
→ほかの人々から自分が切り離されているという感覚を反映。


<段階4 否定的感情>
・見えない苦悩が耐えられないレベルに達した人の自殺は、燃えている高層ビルにとり残されて最終的に窓から飛び降りる人のそれと同じ。
・精神的苦痛は人間を消耗させる。
 →信じられないほどの身体的苦痛のほうがまだ耐えられる。
・身体的苦痛は逃避に相当し、痛みそれ自体が逃避になる。


・自殺には意識の喪失という魅力がある。
・自殺はいま経験しつつある「否定的感情」という苦痛を終わらせることにある。


・段階4で重要な点:自殺の大部分が現在の圧倒的な否定的感情(精神痛)から逃げたいという欲求により動かされていること。
・ほんとうに自殺を考えている人間は、意識が正常に機能していない。


<段階5 認知的解体>
・認知的解体:認知的にものごとがバラバラになり、低次の基本的な要素になる。
・自殺する人間の「時間的展望」が変わり、時間は這うように過ぎる。
・時間的狭窄は実際には防衛機制
・過去の失敗にとどまり続けるのをやめさせ、耐え難く望みなき未来に思い悩ませないようにする。
→まえの段階からの否定的感情はある程度和らげられる。


・認知的解体のもうひとつの側面:具体的思考の劇的増加
・遺書のなかに「思考の語」が少なく、日常的な指示が多い。
・遺書のおもな目的:最後の指示と事実の情報を伝えること。
・本物の遺書:内省的思考を欠く。
・偽物の遺書:抽象的・哲学的なことばが多く出てくる。


・具体的思考が多くなる認知的変化は、脳が無意味な心的作業に没入することにより、圧倒的な情動を避けようとするから。
・自殺の想念をもつ学生は、自殺を図る直前の数週間、退屈なルーティンの勉強や作業に没入する
→「感情死」の状態
・自分の自殺を段取る作業も、一時的救済となる。
・遺書のなかに肯定的な感情が綴られることもある。
・迫り来る死は、現在だけに心を集中させてくれる。
・圧倒的多数の臨床心理士が、自殺のまえに危険を察知できない。


<段階6 抑制解除>
・人間は軽く触れただけで即死できるような消滅ボタンを腕のなかにもって生まれてきて、いつでも押せる状態にある。
アメリカでは、銃が関係した死の大多数は自殺。
 2014年の銃による自殺:2万1334件、銃による殺人:1万0945人
・銃による自殺は殺人の2倍。


・自殺しようとする人間は、有意味な思考をする能力が著しく損なわれている。
・具体的詳細に自動的に焦点が合い、抽象的思考が少なくなる。
・自殺を決心した人は、二分法的思考にはまりこむ。
→生か死のどちらかしかない。


・段階が進むにつれ、通常から逸脱した変性意識状態になる。
・精神的苦痛が弱まらなければ、耐えられる身体的苦痛が驚くほどのもになる。
・自殺しようとする人間は、自殺のための能力を獲得する必要がある。
・この能力は、死に対する恐怖の低減と身体的苦痛への耐性の増加を含む。
・それは、恐怖や痛みに対する耐性を生み出す状況にさらされることで獲得する。
→自殺を的確に予測する指標のひとつがそれ以前の自殺未遂である理由。


・自分に起きていることを理解するには、自分のもつ自己破壊的性質の裏をかかなくてはならない。
・必要なのは第二の自己。
・問題を別の角度から見て、いまの考えがいかどうか判断する。
→来月もこれと同じように感じているのなら、その時には自殺を考えよう。