ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ヒトはなぜ自殺するのか:死に向かう心の科学

ジェシー・ベリング 著 鈴木幸太郎 訳  「ヒトはなぜ自殺するのか」メモ  

ジェシー・ベリング著 鈴木幸太郎 訳

「ヒトはなぜ自殺するのか:死に向かう心の科学」メモ   

 

6章 生きる苦しみを終わらせる
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【まとめ】
・自殺が伝染性の想念としてリスクの高い人々の間に広がる可能性があり、よかれと思い、自殺の問題に注意を向けさせることは危険を伴う。
・インターネットの膨大な情報量は、自殺を考えている人に大きな影響を与え、「ネット心中」や「ネットいじめ」の場も提供する。
・SNSの発展による「死のライブ配信」や「ネットでの死者の追悼」が自殺防止の足枷になっている。
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・メディアを介しての自殺の伝染は新しいものではない。
・1774年のベストセラー小説 ゲーテ「若きウェルテルの悩み」
 「ウェルテル効果」でたくさんの死傷者がでた。
・1966年~73年のカリフォルニア州の自殺率
 新聞の第一面に自殺の記事が載った時はつねに、その後の一週間は、単独自動車事故の死傷者が有意に増加した


・自殺が伝染性の想念としてリスクの高い人々の間に広がる可能性がある。
・自殺の衝動を経験している人が、自殺の記事を読むことで「シロクマ思考」を導く。
・シクロクマ思考:シロクマのことを考えるなと言われると、逆にシロクマのことを頻繁に考える。


・テレビドラマ「一三の理由」の放映後、自殺に関する単語・表現のグーグル検索が劇的に増加。
・初回から最終回までの放映期間、自殺に関する検索が19%増加。
→よかれと思い、自殺の問題に注意を向けさせることは危険を伴う。


<自殺の伝染>
①伝染は芸能界のスターの自殺報道のあとに起こることが多い。
マリリン・モンローの自殺時、自殺率は通常値から12%上がった。
・ニュース報道の程度と模倣自殺との間には生の相関がある。
・自殺のニュース報道は、必ずしも自殺死の増加を招かないにしても、自殺行動の顕著な増加を引き起こす。
→自殺をセンセーショナルにではなく、できるだけ目立たないよう伝えるべき

②インターネット
・最近まで自殺に関する資料をみることができたのは、専門家に限られていた(精神科医、警察官、監察医)。
・いまは誰でもそういった資料にアクセス可能。
・自殺を考えていて、その影響を大きく受ける人もいる。


・ネットユーザーの多くは好奇心から自殺関連サイトを訪れる。
・自殺関連サイトを頻繁に訪れる人の多くは、ネットいじめの被害者。
・これらのサイトは「選択尊重(pro-choice)」を標榜するが、実際は危険で無責任な助言をしている。


・インターネットの役割の問題が最初に顕在化したのは2003年に日本で起きた心中事件。
・1998年の香港人練炭自殺の方法が、アジアの国にそれを模倣した自殺を誘発した。
・2003年、埼玉で、互いに知らない3人の若い男女が自殺サイトで出会い、オンラインで自殺の約束をし、練炭自殺した。
→「ネット心中」

・今では、主要な自殺方法が練炭から硫化水素ガスに変わった。
・2008年の硫化水素ガスによる心中事件後、広まった。
・手軽に致死性のガスを作る方法をオンラインで閲覧できることが、状況を悪化させている。


・現代の問題:死を準備する能力を持つ、一緒に死んでくれる他人を見つけるのが容易なこと。
・インターネットは膨大な情報の宝庫で、社交場。
・そこは、「死ぬほど孤独な」人間にはきわめて危険な場。
・自殺しようとする人は、友人が一緒に死ぬことを望まない。
 理由:友達としての思いやりや感情があるから
・自分の敵とは、嫌悪感のゆえに一緒に死ぬことを望まない。
・見知らぬ人:グループであることの安心感と、個人ではなくグループで選択をしたという充足感が生み出される。


・ネット心中は、単身の死が好まれないアジアの集団主義的文化でよく見られる。
・世界でもっとも自殺率の高い国、韓国では、ネット心中が自殺全体の3分の1を占める。


ソーシャルメディアの急速な技術発展により、自分自身の死のライブ配信が、自殺防止に関して問題を生じさせている。
・以前は、ショッキングな事件は、テレビの実況中継でしか起こらなかった(きわめて稀)。
・衝撃的な死の場面が一度ネットに上がれば、消し去るのは不可能。
・劇的な死を演出することでしか、有名になる方法を見いだせない人にとり、インターネットはその暗い瞬間を閉じこめる琥珀を提供する。


ライブ配信の自殺は急速に増えつつある。
・なぜ人の見ているまえで自殺しようとするのか?
・インターネット研究者:ミヒャエル・ヴェスタールント
「・自殺する人間は、その行為により、受け取る側が逃れようのないなにかをなしとげる。
・それは社会環境を調整するひとつの方法。
・自殺の行為は、力をもたない人間が世間に影響をおよぼすための武器。
・受け取る側は言い返すことができず、それが肝心な点。」


<ネットでの死者の追悼>
・生前の死者を讃えるヴァーチャールな追悼式
ソーシャルメディアに認められることを熱望する若者にとって危険なほど魅惑的。
・インターネット時代は、クリック数、閲覧数、いいね数、フォロワー数、コメント数が重要。
・死はそのような注目を集めやすい。
・自殺者を悼み讃えることは危険がつきまとう。


<問題が深刻になる三つの点>
①SNSの利用は、欝、不安や自殺の想念を含むメンタルヘルス上の問題と正の相関がある。
②SNSは「ネット依存」を引きお越しやすい。
③ネットいじめは、推定で中高生の20%に影響をおよぼしている。


・ネットいじめは「現実世界」のいじめよりひどいものになる。
・ネットいじめはどんなときも起こりえる。
・ネット環境のあるところへならどこでも、家のなかにも入り込む。
・嫌がらせのメッセージ等が即時に送られ、ネットを介して全く関係ない人間にも届く。
→犠牲者は自分の評判に悩まされるだけでなく、身の安全も脅かされる。


・ネットいじめに遭うことは、伝統的ないじめの標的になるよりも、自殺の想念を導きやすい。
アメリカ疾病管理予防センターは「国民の健康への重大な脅威」に位置づけている。


・人間の感情は他者からどう思われているかに緊密に結びつく。
→インターネットは強い不安を喚起する扇動的装置になる。


・オンラインで無視されることは、それだけで不快な体験。
・SNSはもはやプラットフォームではなく、それを通してお互いに作用し合う人間社会になっている。
・一部の人々は、それぞれのアカウントの背後に生身の人間、強さも弱さももつほかの人間がいることを忘れこのプラットフォームを使っている。


・インターネットは多くのよいものも喚起する。
・自殺予防へのメディアのよい影響:「パパゲーノ効果」
・オペラ「魔笛」のパパゲーノは、自殺しかけた時に3人の童子により自殺しないよう説得される。
・主要ソーシャルメディア企業は、ユーザーの自殺の兆候を示す書き込みがみられた場合、匿名で通報できる簡便な体制を備えている。
・通報のあった書き込みは、そのための訓練を受けたスタッフチームにより、即座に相対的リスクが評価され選別される。
・ネットワークはその相対的リスクにより対応を決める。


・ネットでの人間関係は、唯一有意味な社会的絆になっていることも多い。
・忙しく、似たストレスをもつ他者と問題を共有する機会をもてない人々にとり、オンラインのサポートシステムは救命隊になりうる。