ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

不確実性を飼いならす:予測不能な世界を読み解く科学

イアン・スチュアート  著 徳田 功 訳  「不確実性を飼いならす」メモ  

 

イアン・スチュアート著 徳田 功訳
「不確実性を飼いならす 予測不能な世界を読み解く科学」メモ

 

9 法則と無秩序
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【まとめ】
・ある系で、N通りのミクロ状態がすべて同じ確率で出現するなら、エントロピーSはS=kBlogNで与えられ、原理的にこの系が取りうるミクロ状態の対数に比例。
・相互作用が許される場合、系のエントロピーは二つの相互作用しない系のエントロピーの和より大きくなる。
エントロピーは、系に対して私たちが入手できる情報に依存し、現在より過去の方がエントロピーが低かったように見えるから、エントロピーが増大しているように見える。
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・熱力学:熱がどのようにしてある物質(あるいは系)から別の物質に伝わるかを扱う。

・熱力学の変数:温度、圧力、体積
理想気体の法則:熱力学の変数がどのように関係しているかを教える

    気体の圧力 × 体積 は 絶対温度に比例する

・もう一つの熱力学変数:熱
・熱は温度とは別の概念。


エントロピー:非公式にはある熱力学系の無秩序さを表す量
・外界の要素から影響を受けない系では、エントロピーは常に増大する。
・ここでの「無秩序」は定義ではなく比喩。


・時間の矢:熱力学の第二法則では、時間がどちらの向きに流れても変わらないが、エントロピーは過去から未来に向けた一方向だけに時間の流れを限定しているように見える。


・気体分子運動論:気体中の分子の運動を表す単純な数学モデルで、分子は衝突すると跳ね返る小さな硬い球として表す

・気体分子運動論の特徴は、分子の運動が実際にはランダムに見えること。
・跳ね返る球のモデルは決定論に基づき、その運動はカオス的。


★熱力学と気体の運動論
<古典熱力学>
・気体の重要な特徴は、全体の状態を表すマクロ(巨視的)な変数。
 (温度、圧力、体積)
・分子の正確な位置・速度は考慮しない。
・巨視的な変数同士の関係を説明し、得られる方程式(法則)を用いて気体の振る舞いを特定する。
蒸気機関の熱効率の理論限界の解析がきっかけとなり、エントロピーの概念が生まれた。


<量子熱力学>
・気体の個々の分子の位置・速度などのミクロ(微視的)な変数が主役。
・「情報」などの新概念を取り入れ、古典版の熱力学に詳細な理論的基礎を与える。


<古典的エントロピーの定義>
・ある系のエントロピーは間接的に定義。
 ①系そのものが変化するとき、この変数がどう変化するかを定義。
 ②このような微少な変化をすべて足し合わせるとエントロピーを得る。
・系の状態変化が小さければ、エントロピーの変化は熱の変化を温度で割ったものとなる。
・多数の小さな変化が連続して起こったものと考え、対応するエントロピーの変化は各ステップにおける小さな変化の総和。


・数学的には、エントロピーの変化は、エントロピーを一意に定義するものではない。
・付加される定数が定義されていない。
 →絶対温度に基づいてエントロピーを選ぶ。
・ある系のエントロピーは、絶対温度がゼロのときにエントロピーがゼロになるよう定義する。


<現代の統計物理によるエントロピーの定義>
・ある系で、N通りのミクロ状態がすべて同じ確率で出現するなら、エントロピーSは次式となる。


      S=kBlogN

        kB:ボルツマン定数 1.38005 x 10^-23 J/K


・この系のエントロピーは、原理的にこの系が取りうるミクロ状態の対数に比例。


[例]
・トランプ1組からなる系を考える。
・ミクロの状態は、トランプ1組をシャッフルしたときにできる順序のいずれか。
・ミクロ状態の総数は、52!
 S=2.15897 x 10^-21

・2組目のトランプを取り出す。
・2組のトランプを混ぜ合わせ、大きな一つの組にしてシャッフルすると、ミクロ状態の総数は N=104!
→2組が混ぜ合わさった系のエントロピー
 T=5.27765 x 10^-21
となる。
・混ぜ合わされる前の、二つの部分系(トランプ1組ずつ)のエントロピーの和は
 2S=4.31758 x 10^-21
・T>2Sのため、混ぜ合わさった系のエントロピーは、二つの部分系のエントロピーの和より大きい。


・相互作用が許される場合、系のエントロピーは二つの相互作用しない系のエントロピーの和より大きくなる。
・因数の積の対数は、個々の因数の対数の和に等しい。
 →混合した系のミクロ状態の数が、混合前の系のミクロ状態の積よりも大きいとき、エントロピーは増大する。


★時間の矢のパラドックス
・運動している物体の系にニュートンの運動法則を適用したとき、導かれる方程式は可逆(時間反転可能)。
・実生活におけるほとんどのプロセスは時間反転不可。
 →時間の矢は過去から未来という方向に向いている。


・時間の矢の不可逆性を強固にしているのが熱力学。
熱力学第二法則により、時間が経過すればエントロピーが増大する。
・時間を逆転させるとエントロピーが減少することになり、第二法則が破綻する。


<なぜ時間の矢はただ一つの方向に進むのか?>
・時間反転対称性
 →初期条件の時間反転非対称性
・ある系のエントロピーは、細かい配置の違いを区別しないことにより定義される。
エントロピーは、系に対して私たちが入手できる情報に依存。
×:時間の矢がエントロピーの増大する方向に進むから、私たちがそれを経験している。
○:現在より過去の方がエントロピーが低かったように見えるから、エントロピーが増大しているように見える。


★割れた瓶のシナリオと熱力学の第二法則
・気体分子運動論は、単純化した仮定を含んでいる。
・共通したシナリオをモデル化したもので、モデルが有効なのは、このシナリオが当てはまるときのみ。
・単純化した仮定の一つは、系が「閉じている」こと。
「モデルに組み込まれていない外部からの影響を受けることが許されない」
・熱力学において時間の矢が一方向にしか進まない理由:
 想定されたシナリオが初期条件を使うことにより、時間の矢が組み込まれてしまうから


・時間の矢の議論では、内容に注目しすぎて文脈を無視している。
・内容は可逆であるが、文脈は可逆ではない。