ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

不確実性を飼いならす:予測不能な世界を読み解く科学

イアン・スチュアート  著 徳田 功 訳  「不確実性を飼いならす」メモ  

 

イアン・スチュアート著 徳田 功訳
「不確実性を飼いならす 予測不能な世界を読み解く科学」メモ

 

11 天気工場
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【まとめ】
・天気とは数時間から数日間という短い時間スケールで起こること、気候は数十年という長い期間における典型的な天気のパターン。
・天気はアトラクタを通る単一の経路で、気候はアトラクタ全体。
・気候変動が起こるのはアトラクタが変動するときだけで、その変動が大きいほど、気候変動も劇的となる。
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・天気の根底にある物理は理解していて、支配方程式を知っているのに、なぜ天気は予測不可能なのか?
・天気の予測は初期値の問題。
・系がカオス的であれば、天気の状態の計測誤差が指数関数的に膨らみ、予測は価値がなくなる。
・実際の天気の予測可能領域は数日にすぎない。


★世界初の天気予報
・大気を扱う現実に即した方程式は数値的に不安定。
数値計算では、格子点での値が微小時間でどれだけ変化するかを、物理法則を基に近似計算し、状態を更新する。
・気圧などの変数は、ゆっくり、長い時間スケールで変動する。
・大気には音波(急速で微小な圧力変動)を伝える役割がある。
・音波の解が格子グリッドと共鳴して膨らみ、天気予報を台無しにすることがある。
・平滑化で音波を減衰させ、モデル方程式を非現実的化することで、予報を改善できることもある。


バタフライ効果と天気予報
バタフライ効果数理モデルで起こるが、現実世界でも起こるのか?
・カオスは公式で解けるような単純な方程式には出現しない。
・カオスは合理的で一般的な運動。
・状態空間のある領域が局所的に引き伸ばされ、有界領域に閉じこめられると、バタフライ効果が必然的に起こる。
・カオスは三次元以上では容易に起こる。
・カオスは物理系ではありふれた現象。
・攪拌が起こるプロセスの多くはカオス。
・実際の天気も初期条件に鋭敏である。
バタフライ効果は単純化されすぎたモデルに生じた不備ではない。


・元々の天気予報の考え方:
 方程式は決定論的なので、観測精度を上げ、現在のデータを未来に投射する数値計算法を改善すればよい。

・現在の天気予報:
 確率的方法を採用し、一定範囲の予報とその正確性を示す。

<アンサンブル予報>
・たくさんの予報を行う。
・1組の観測データに対し、10日先の予測プログラムを走らせる。
・データにランダムな変動をわずかに加え、再びプログラムを走らせる。
・たとえば50回繰り返す。
 →50個の標本を得る。
・実際の観測値に近いデータから得られるさまざまな予報を検討していることになる。
・最後に、ある地域で雨が降るというよう予報がいくつあるか数え、確率を求める。


★一週間先の天気予報は可能か?
・ハリケーンをどれだけ先まで予測できるか?
・ハリケーンを予測するのに最も重要なのはどの規模の構造か。
・複数のスケールを持つ気象システムには三つの特徴がある。
1.大規模スケールの構造では、誤差が3日ごとに倍になる。
2.微細スケール構造では、1時間程度で倍になる。
3.微細構造の誤差はより大きなスケールの構造に伝搬する。
・三つの特徴を組み合わせると、2週間先の正確な予報を出すのは問題外。
・予測可能領域には絶対的上限が存在し、観測がどれだけ正確でも、上限を延長することはできない。


ブロッキングを予測する
ブロッキング現象が生じている域内では、ほぼ同じ大気の状態が1週間以上続く。
・その後突然、一見するとランダムに、別の長期間続く大気の状態に遷移する。
ブロッキングされた大気状態は、大規模スケールの大気の非線形動力学において、ヘテロクリニックサイクルが発生していることと関係あり。
ヘテロクリニック接続:二つの鞍点を結ぶもの。
・複数の鞍点をヘテロクリニック接続でつないでできたヘテロクリニックサイクルは、長時間持続する気流のパターンを作り出し、唐突に別のパターンに遷移する。
・このサイクルには予測不能性という要素がある。
・その力学は比較的単純で、予測可能。
・挙動の特徴:長期にわたる不活性状態がときおり中断し、急激に活発な状態になる。
・不活性状態が生じるのはシステムが平衡点付近にあるときで、予測可能。
・不確実性が生じるのは、不活性状態が終わり、新しい気象パターンに遷移するとき。
・大西洋地域において、ブロッキングされた気流のさまざまなパターンが、共通する動的なサイクルでつながっている。
北大西洋振動と北極振動は関係しており、それぞれが部分的要因となり、互いを引き起こしている。


★天気と天候の違い
・天気:数時間から数日間という短い時間スケールで起こること
・気候:数十年という長い期間における典型的な天気のパターン
・気候の定義:天気の30年間の移動平均


・短期間のゆらぎがあっても、平均はあまり変わらない。
・長期間のゆらぎは、より強く平均に影響を与える。
・平均が変わるのは、平均値と異なる気温が非常に長期間続く場合。
・それらはすべて同じ方向に変化していなければならない。


・気候変動:地球全体の気候
・人間活動により、大気中の二酸化炭素濃度は400ppmを越えた。
・過去80万年のほとんどの期間で、二酸化炭素濃度は170~290ppmの間を変動していた。
・300ppmを越えたのは産業革命以降。
・地球の気温は、過去150年間の間に1℃近く上昇した。
・物理原理より、この温度上昇は、二酸化炭素の増加によるものと示唆される。


非線形動力学で天気を考える
・ある地点における大気の状態空間:温度、圧力、湿度の組み合わせ
・状態空間における各点は、天気を観測して得られた値の集まり
・時間経過により点は移動し、軌道を形成。
・移動する点を追従し、状態空間のどの領域を通過するかを見ることで、天気を読みとることができる。
・短期的に異なる推移パターンを示す気象データは、それぞれが異なる軌道上にある。
・すべての軌道は同じ(カオス的な)アトラクタ上にある。


・天気:アトラクタを通る単一の経路
・気候:アトラクタ全体
・気候変動が起こるのはアトラクタが変動するときだけ。
・アトラクタの変動が大きいほど、気候変動も劇的なものとなる。