ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

人新世の「資本論」

斎藤 幸平  著 「人新世の「資本論」」メモ  

 

斉藤 幸平 著
「人新世の「資本論」」メモ

 

第四章 「人新世」のマルクス
----------------------------------------------------------------------------------
【まとめ】
・<コモン>とは社会的に人々に共有され、管理されるべき富。
コミュニズムとは、知識、自然環境、人権、社会といった資本主義で解体された<コモン>を意識的に再建する試み。
・脱成長コミュニズムで、平等・持続可能な脱成長型経済を目指すべき。
----------------------------------------------------------------------------------

★<コモン>という第三の道
・<コモン><共>:社会的に人々に共有され、管理されるべき富
・水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として、自分たちで民主主義的に管理することを目指す。


宇沢弘文の「社会的共通資本」>---
・人々が「豊かな社会」で暮らし、繁栄するための一定の条件。
 自然環境(水、土壌など)
 社会的インフラ(電力、交通機関など)
 社会制度(教育、医療など)
・これらを社会全体にとっての共通財産とし、国家のルールや市場的基準に任せず、社会的に管理・運営する。
----


・コモンの発送も宇沢のものと基本的には同じ。
・<コモン>は専門家任せではなく、市民が民主的・水平的に共同管理に参加することを重視。
・最終的には、<コモン>の領域を拡張することで、資本主義の超克を目指す。


★地球を<コモン>として管理する
マルクスにとっての「コミュニズム」とは、生産者たちが生産手段を<コモン>として、共同で管理・運営する社会のことだった。
マルクスは、地球をも<コモン>として管理する社会を、コミュニズム(communisum)として構想した。


コミュニズムは<コモン>を再建する
コミュニズムとは、知識、自然環境、人権、社会といった資本主義で解体された<コモン>を意識的に再建する試み。
・「アソシエーション」=<コモン>が再建された社会
・労働者たちの自発的な相互扶助(アソシエーション)が<コモン>を実現する。


社会保障を生み出したアソシエーション
社会保障サービスの起源:あらゆる人々にとり生活に欠かせないものを、市場任せにせず、自分たちで管理しようとした数々の試みのうちにある。
・それが20世紀に福祉国家のもとで制度化されたにすぎない。


・アソシエーションから生まれた<コモン>を、資本主義のもとで制度化する方法のひとつが、福祉国家
・1980年代以降、新自由主義の緊縮政策により、労働組合・公共医療などのアソシエーションが解体・弱体化された。
 →<コモン>は市場へ呑み込まれた


新自由主義に対抗して福祉国家に逆戻りするだけでは不十分。
国民国家の枠組みだけでは、グローバルな環境危機に対応できない。
・国家による垂直的な管理も、<コモン>の水平性とは相容れない。
 →新しい道を模索する必要あり。


★新たな全集プロジェクトMEGA
・MEGA:新しい「マルクス・エンゲルス全集」(Marx-Engels-Gesamtausgabe)
 →新しい資本論解釈


★崩壊した文明と生き残った協同体
<マルク協同体>---
・古代ゲルマン民族の共同体
・持続可能な農業を営んでいた。
ゲルマン民族は土地を共同所有し、生産方法にも強い規制をかけた。
・土地を共同体の構成員以外に売ることはできなかった。
・木材、豚、ワインなども共同体の外に出すことは禁じられた。
・強い共同体規制により、土壌養分の循環が維持され、持続可能な農業が実現。
・長期的には地力の上昇さえもたらしていた。
---


★新しいコミュニズムの基礎ー「持続可能性」と「社会的平等」
・「持続可能性」と「社会的平等」は密接に関連がある。
ゲルマン民族は、土地を共有物として扱っていた。
・一部の人が得をしないよう、平等な土地の割り振りを行った。
・富の独占を防ぎ、構成員のあいだに支配・従属関係が生じないようにしていた。
・土地は誰のものでもなかったので、所有者による濫用から守られた。
 →土地の持続可能性を担保
・「持続可能性」と「社会的平等」の密接な関係が、共同体が資本主義に抗い、コミュニズムを打ち立てることを可能にする。


★真の理論的大転換ーコミュニズムの変化
・共同体内部には強い規制がかかっている。
・資本主義システムのような商品生産の論理は貫徹していない。
・共同体では同じような生産を伝統に基づいて繰り返す。
・経済成長しない循環型の定常型経済だった。
→長く働いたり、生産力をあげたりできる場合も、あえてそうしなかった


★脱成長へ向かうマルクス
マルクスの結論:定常型経済に依拠した持続可能性と平等が、資本への抵抗となり、将来社会の基礎になる。
・持続可能性と平等こそ、西欧近代社会が資本主義の危機を乗り越えるため、意識的に取り戻さなくてはならないもの。
・その物質的条件が、定常型経済。
マルクスが最晩年に目指したコミュニズム:平等で持続可能な脱成長型経済。

マルクスが目指していたもの
1840年代~1850年代 生産力至上主義 経済成長:○ 持続可能性:×
1860年代      エコ社会主義  経済成長:○ 持続可能性:○
1870年代~1880年代 脱成長コミュニズム  経済成長:× 持続可能性:○