ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

人新世の「資本論」

斎藤 幸平  著 「人新世の「資本論」」メモ  

 

斉藤 幸平 著
「人新世の「資本論」」メモ

第七章 脱成長コミュニズムが世界を救う
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【まとめ】
人新世の「資本論
①使用価値経済への転換
②労働時間の短縮
③画一的な分業の廃止
④生産過程の民主化
⑤エッセンシャル・ワークの重視


・「価値」重視の資本主義から脱却、「使用価値」経済へ転換し、必用なものだけを生産して労働時間の短縮を図る。
・画一的分業をやめ、労働をより創造的、自己実現の活動に変え「、社会的所有」により生産手段を<コモン>として民主的に管理する。
・労働集約型産業を重視する社会に転換。
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★コロナ禍も「人新世」の産物
・気候変動もコロナ禍も「人新生」の矛盾の顕在化。
・どちらも資本主義の産物。
・資本が自然深くまで入り込み、未知のウィルスとの接触機会が増える。
・現代のモノカルチャーが占める空間はウィルスを抑え込めない。
・ウィルスは変異し、グローバル化した人・物の流れに乗り、瞬間的に世界中に広がる。
・「人命か、経済か」のジレンマに直面すると、根本的問題は先送り。
・対策を遅らせると、大きな経済損失を生み、人命も失われる。


★国家が犠牲にする民主主義
・中国のコロナ対応は国家権力発動による上からの抑え込み。
・ヨーロッパも同様の措置を採用。
→危機が深まれば、国家による強い介入・規制が要請され、人々も個人の自由の制約を受け入れる。


★商品化によって進む国家への依存
・危機の時代には、剥き出しの国家権力が全面に出てくる。
新自由主義は、相互扶助の関係性を貨幣・商品関係に置き換えてきた。
・相互扶助のノウハウが失われた。
→危機において、人々は国家に頼ろうとする。

★国家が機能不全の陥るとき
・危機が深まると、国家自体が機能しなくなる可能性がある。


・危機の瞬間には帝国的生活様式の脆弱さが露呈。
・先進国でマスクも消毒液も手に入らなかった
→海外にアウトソーシングした結果
・先進国の巨大製薬会社が儲かる薬の開発に特化、抗生物質や抗ウィルス薬の研究から撤退していた。
→先進国の大都市は、レジリエンス(障害からの復元力)を失った。
・気候危機の場合、食糧難が深刻化。
・食料自給率が低く、レジリエンスのない国はパニックに陥る。


★「価値」と「使用価値」の優先順位
・コロナ禍の場合、「使用価値」は薬が病気を直す力のこと、「価値」は商品としての薬につく値段。
・資本主義では、人命を救うかどうかより、儲かるかどうかが優先。
・高価でも売れる薬が重要。
・「価値」を重視し、「使用価値」(有用性)を蔑ろにする資本主義では、野蛮状態に陥る。
→資本主義と決別し、「使用価値」を重視する社会に移行する必要あり。


★「コミュニズムか、野蛮か」
・野蛮状態を避けるには、コミュニティの自治と相互扶助が必要。
・生活に必要なものを、自分たちで確保、配分する民主的方法を生み出さなければならない。
・平時から自治と相互扶助の能力を育む必要あり。
自治管理、相互扶助の道を模索すべき。


★トマ・ピケティが社会主義に「転向」した
・ピケティは、「参加型社会主義」(socialisme participatif)を要求するようになっている。
「新しい社会的所有、教育、知と権力の共有に依拠した新しい普遍主義的で、平等主義的な未来像を描くことができる。」


自治管理・共同管理の重要性
・労働者による企業の「社会的所有」と経営参加。
・労働者たちが自分たちで生産を「自治管理」(autogestion)・「共同管理」(cogestion)。
・ピケティの結論:資本主義では民主主義を守ることができない。民主主義を守るためには「社会主義」が必要で、生産
の場における労働者の自治が不可欠。
・「参加型社会主義」のキーワード:「自治管理」「共同管理」=<コモン>
・参加型社会主義ソ連社会主義とは異なるもの。
・市民の自治と相互扶助の力を草の根から養い、持続可能な社会へ転換しようとする試み。


★物質代謝の亀裂を修復するために
マルクスの物質代謝論:資本の無限の価値増殖を求める生産が、自然本来の循環過程と乖離、人間と自然の関係のうち
に「修復不可能な亀裂」を生む
・亀裂を修復する唯一の方法:自然の循環に会わせた生産が可能になるよう、労働の領域を抜本的に変革すること。


・労働は人間と自然の媒介活動
・人間と自然は労働でつながっている。
・労働のありかたを変えることが、自然環境を救うために決定的に重要。
・肝心なのは、労働と生産の変革。
・生産の場における変革が、システム全体の大転換に向けたエンパワーメントになる。


★社会運動による「帝国的生産様式」の超克
・生産という場はコミュニティを生み出す。
・コミュニティは社会全体にインパクトを与える力を持つ。
・労働から生まれる運動は、政治を動かす可能性も秘めている。
・重要なのは「帝国的生産様式」の超克。


★人新世の「資本論
資本論に秘められた真の構想
①使用価値経済への転換
②労働時間の短縮
③画一的な分業の廃止
④生産過程の民主化
⑤エッセンシャル・ワークの重視


・経済成長が減速する分だけ、脱成長コミュニズムは持続可能な経済への移行を促進する。
・「加速主義」(accelerationism)ではなく、「減速主義」(deaccelerationism)こそが革命的。


★脱成長コミュニズムの柱①ー使用価値経済への転換
<「使用価値」に重きを置いた経済に転換、大量生産・大量消費から脱却>

・「価値」ではなく危機への適応に必要なものを優先。
・生産の目的を商品としての「価値」の増大ではなく、「使用価値」にする。
・生産を社会的な計画のもとに置く。
・GDPの増大ではなく、人々の基本的ニーズを満たすことを重視する。
→脱成長の基本的立場
・必要なものの生産に切り替え、同時に自己抑制する。


★脱成長コミュニズムの柱②ー労働時間の短縮
<労働時間を削減、生活の質を向上させる>
・社会の再生産にとり必要な生産に労働力を意識的に配分する。
・必要ないものをつくるのをやめれば、社会全体の総労働時間は削減できる。
・社会の実質的繁栄は維持できる。
・労働時間削減は人々の生活、自然環境にも好ましい影響をもたらす。
ワークシェアGDPには表れないQOL(生活の質)の上昇を目指す。
・労働時間の短縮はストレスを減らし、子育てや介護をする家庭の役割分担を容易にする。


化石燃料のエネルギー収支(EROEI):1単位のエネルギーを使い何単位のエネルギーが得られるか。
・1930年代の原油:1単位のエネルギーで100単位のエネルギーを得ることができた。
・現在、1単位のエネルギーで得られるのは10単位程度。
・太陽光は5~4.3単位、トウロモコシのエタノールは1体1。
・脱炭素社会では、再生可能エネルギーに切り替える
 →エネルギー収支の低下により、経済成長は困難になる。
  「排出の罠」
・「排出の罠」で生産力が低下するため、「使用価値」を生まない意味のない仕事を削減、ほかの必要な部門に労働力を割り当てる必要あり。


★脱成長コミュニズムの柱③ー画一的な分業の廃止
<画一的労働をもたらす分業を廃止、労働の創造性を回復させる>
・労働をより創造的、自己実現の活動に変えていく。
・第一歩:分業の廃止
・多種多様な労働に従事できる生産現場の設計。
・分業をやめれば、経済成長のための効率化は最優先事項ではなくなる。
・利益よりも、やりがいや助け合いが優先


★脱成長コミュニズムの柱④ー生産過程の民主化
<生産プロセスの民主化を進め、経済を減速させる>
・労働者達が生産における意志決定権を握る。
・「社会的所有」により生産手段を<コモン>として民主的に管理する。
・生産過程の民主化は経済の減速を伴う。
・民主的に意志決定を行うことは、意志決定の減速。
・トップ・ダウンの素早い意思決定は「資本の専制


★脱成長コミュニズムの柱⑤ーエッセンシャル・ワークの重視
<使用価値経済に転換、労働集約型のエッセンシャル・ワークの重視を>
・「労働集約型産業」:機械化が困難で、人間が労働しないといけない部門
・脱成長コミュニズムは、労働集約型産業を重視する社会に転換。
・その転換により経済は減速する。


・ケア労働は「使用価値」を重視した生産。


★ブルジット・ジョブ vs エッセンシャル・ワーク
・ブルジット・ジョブ(クソくだらない仕事):社会の再生産そのものには役に立っていない仕事(マーケティング、コ
ンサルティング、金融業、保険)
・「使用価値」を生まない労働が高給。
・社会の再生産に必要な「エッセンシャル・ワーク」が低賃金で、恒常的人手不足。
→「使用価値」重視の社会への移行が必要。


★ブエン・ビビール buen vivir(良く生きる)