ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

人新世の「資本論」

斎藤 幸平  著 「人新世の「資本論」」メモ  

 

 人新生の「資本論」を読み終えた。

 マルクスとか資本論とかコミュニズムとか、そういった思想をきちんと読んだことがなかったので、とまどいもありつつ、新鮮だった。

 

 今の資本主義の拡大・成長主義を終わりにしないと、気候変動、資源枯渇等々により地球がもたないということだ。

 環境危機について、多少は考えているつもりだったけれど、SDGsみたいなものは現実逃避にすぎず、もっと現実と向き合い、対策しないといけないようだ。

 

 資本主義と決別し、脱成長・脱炭素社会を目指すには、脱成長コミュニズムに移行する必要があるとのことだ。

 資本主義にどっぷりつかって生きてきたので、脱成長とかコミュニズムとか言われても、いまいちピンとこないけれど、そっちへ行くのが正解なんだろう。

 

 脱成長コミュニズムを目指すには、国主導のトップ・ダウンではダメで、住民・市民・自治体が中心のローカルな運動から拡げて行く必要があるとのことだ。バルセロナの市政やフランスの市民議会などで、ローカル運動からの成果が出ているようだ。

 気候変動対策は待ったなしのようなので、日本を含めた先進国や世界中が、より現実的な対策に向けて進む必要があると思われるけれど、間に合うのか?

 

斉藤 幸平 著
「人新世の「資本論」」メモ

第八章 気候正義という「梃子」
----------------------------------------------------------------------------------
【まとめ】
・「資本主義の超克」、「民主主義の刷新」、「社会の脱炭素化」の三位一体のプロジェクトで社会システムの大転換を
迫る必用あり。
・三位一体プロジェクトの基礎は信頼と相互扶助で、市民中心のローカル運動を世界で連携させて大きくすれば、政治家をも動かす。
・「3.5%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わる。
----------------------------------------------------------------------------------

★自然回帰ではなく、新しい合理性を
・晩期マルクスの主張:都市の生活や技術を捨て、農耕共同体に戻ろうというものではない。
・都市や技術発展の合理性を完全に否定する必要はない。
・現在の都市の姿は問題含みで、修正が必要。
・コミュニティの相互扶助が解体され、大量のエネルギーと資源を浪費する生活は持続可能ではない。
・都市化が行き過ぎている。
二酸化炭素排出量の7割を占めるのは都市。
→都市生活を変えなくてはならない。
・資本が生み出した都市空間を批判、新しい都市の合理性を生み出すこと。


★恐れ知らずの都市・バルセロナの気候非常事態宣言
<フィアレス・シティ>---
・国家が押しつける新自由主義的政策に反旗を翻す革新的地方自治体のこと。
・国家・グローバル企業に対しても恐れず、住民のために行動することを目指す都市。
---

・さまざまな都市の政党・市民団体が「フィアレス・シティ」のネットワークに参加している。
・世界中の都市や市民が連携し、知恵を交換しながら、新しい社会を作り出そうとしている。


・最初に「フィアレス・シティ」の旗を立てたバルセロナ市政の取り組みは野心的。


バルセロナの「気候非常事態宣言」>---
・2020年1月に発表。
・2050年までの脱炭素化の数値目標を掲げ、数十頁に及ぶ分析と行動計画を備えたマニフェスト
・宣言は、市民の力の結集。
・行動計画には、包括的・具体的な項目が240以上。
・都市公共空間の緑化、電力・食の地産地消、公共交通機関の拡充、自動車・飛行機・船舶の制限、エネルギー貧困の解消、ごみ削減・リサイクルなど、全面的な改革プランを掲げている。
---
・グローバル企業と対峙しなくては実現できないものも多いく、闘う姿勢が表れている。
・経済成長ではなく、市民の生活と環境を守る意思が読みとれる。


★社会運動が生んだ地域政党
・2011年、「15M運動」と呼ばれる広場占拠運動開始。
・その成果のひとつがバルサローナ・アン・クムー(バルセロナ・イン・コモン)という地域密着型の市民プラットフォ
ーム政党。
・党の中心人物が市長に就任。
・草の根の声を市政に持ち込むシステムを整備。
・市庁舎は市民へ解放され、市議会は市民の声をまとめ上げるプラットフォームとして機能するようになった。
・社会運動と政治がつながっている。
・気候非常事態宣言の起草プロセスも、生産現場の各分野の専門家、労働者と市民の共同執筆。


★気候変動対策が生む横の連携
・シングル・イシューごとのバラバラな取り組みだった運動を、互いに結びつけたのが気候変動問題。
・さまざまな運動が、気候変動問題を媒介につながることで、経済、文化、社会に及ぶ、より大きなシステム変革を目指している。
・目指すのは、資本主義の生み出した人工的希少性を、<コモン>の「ラディカルな潤沢さ」で置き換えていくこと。


★協同組合による参加型社会
バルセロナの成功は、ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)の伝統にある。
・もともとスペインは協同組合が盛んな土地柄。
バルセロナは「社会連帯経済」の中心地として名高い。
自治体は公共調達の発注先の決定に、ローカルなもの、公正なものを優先し、協同組合が受注することが増えた。
・協同組合の声が市政に届くようになり、政治も社会運動も活性化。
・「参加型社会主義」への転換に向けた第一歩
・ここには、マルクスの言う「アソシエーション」が存在。


★気候正義にかなう経済モデルへ
・先進国の大都市が、気候変動に与えている甚大な影響を認め、その是正が「気候正義」を実践する第一歩。
<気候正義(climate justice)>---
・気候変動を引き起こしたのは先進国の富裕層だが、その被害を受けるのは化石燃料をあまり使わないグローバル・サウスの人々と将来世代である。
・この不公正を解消し、気候変動を止めるべきだという認識のこと。
---
・気候正義にかなう経済システムに変化するため、もっとも被害を受けやすい、グローバル・サウスの女性から届けられる声をくみ上げなければならない。
・持続不可能で、不公正な経済モデルを転換しなければならない。
バルセロナの宣言:先進国の大都市は「協働的なケア労働」、他者や自然との「友愛的関係」を重視し、「誰も取り残されない」社会への移行を先導する責任がある。
・その費用を担うのは、「最も特権的な地位にある人々」であると訴える。
→「ケア階級の叛逆」


★ニュニシパリズムー国境を超える自治体主義
・重要なのは、バルセロナがグローバル・サウスへのまなざしをもっていること。
・「フィアレス・シティ」のネットワークは、アフリカ、南米、アジアに広がり、77の拠点が参加。
・「フィアレス・シティ」の強みは、市民間の相互扶助だけでなく、都市間の協力関係があるから。
・国境を越えて連帯する、革新自治体のネットワークの精神は「ミュニシパリズム」と呼ばれる。
・国際的に開かれた自治体主義を目指している。


★新しい啓蒙主義の無力さ
・「世界市民」というコスモポリタンな理念を持ち出し、「啓蒙主義」の必要性を議論するだけでは不十分。
・収奪に対する現実の抵抗実践に目を向ける必要がある。
・ミュニシパリズムの自治体も、グローバル・サウスにおける抵抗運動から、積極的に学ぼうとしている。
・核となるのが、「気候正義」と「食料主権」の運動。


★食料主権を取り戻す
・グローバル・サウスで展開される資本主義アグリビジネスは、収穫物を先進国に輸出する。
・農産品の純輸出国であるにもかかわらず、国内では飢餓に苦しむ貧困層が大勢いる。
・実際の作業を行う農民が生きるのに必要な、廉価な食料が生産されない。
・特許により、種子・肥料・農薬をめぐる権利や情報が独占されている。
・商品としての「価値」のための生産が行われ、「使用価値」が蔑ろにされる資本主義の矛盾が、グローバル・サウスにおいて表れている。


南アフリカでは、白人を中心とした20%の大規模農家が、南アフリカの農業生産額の80%を生み出す。
・アフリカ最大の農産物輸出国のひとつであるにもかかわらず、飢餓率が26%。
・多くの貧しい農民が、持続可能な農業のために必要な知識も資金も持っていない。
・「南アフリカ食料主権運動」(South African Food Sovereignty Campaign)のモデルでは、農民たちは自分たちの手で協同組合を設立。
・地域NGOが必要な農具を貸し出し、有機栽培について教育を行う。


★経済、政治、環境の三位一体の刷新を
・気候変動の対処には、国家の力を使うことが欠かせない。
・国家に頼りすぎることは、気候毛沢東主義に陥る危険性をはらむ。
コミュニズムが唯一の選択肢。
・市民参画の主体性を育み、市民の意見が国家に反映されるプロセスを制度化することが欠かせない。
・国家の力を前提としながら、<コモン>の領域を広げる。
・民主主義を議会の外へ広げ、生産の次元へと拡張する必要あり。
・協同組合、社会的所有、「<市民>営化」。


・意味を根本から問い直し、「常識」とみなされているものを転覆する。
・この瞬間に、既存の枠組みを超えていく、真に「政治的なもの」が顕在化する。
→「資本主義の超克」、「民主主義の刷新」、「社会の脱炭素化」の三位一体のプロジェクト。
・経済、政治、環境のシナジー効果が増幅することで、社会システムの大転換を迫る。


★持続可能で公正な社会への跳躍
・三位一体のプロジェクトの基礎となるのが、信頼と相互扶助。
・信頼と相互扶助のない社会では、非民主的トップダウン型の解決策しか出てこない。
・多様なローカル運動が、世界中の運動とのつながりを構築し始めている。
・「希望をグローバル化するためにたたかいをグローバル化しよう」。
・コミュニティや社会運動がどんどん動けば、政治家もより大きな変化に向けて動くことを恐れなくなる。
バルセロナの市政やフランスの市民議会の例が象徴的。


おわりにー歴史を終わらせないために
「3.5%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わる。