ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

次なる100年 歴史の危機から学ぶこと

水野 和夫 著 「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

水野 和夫 著
「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ


第1章 ゼロ金利と「蒐集」ー「西欧史」とは「蒐集」の歴史である
----------------------------------------------------------------------------------
【まとめ】
・21世紀最大の課題:統治と経済的権力の象徴である資本の蒐集システム(構造)をいかに止めるか。
・近代は人間を中心に据えた社会として出発したが、グローバリゼーションが世界の潮流となり中間層が没落し、上位1%に富が集中している。
新自由主義的な改革を主導してきた長期金利が高い国で「絶望死(アルコール中毒死、薬物中毒死、自殺)」が増えている。
----------------------------------------------------------------------------------
★1蒐集(コレクション)の歴史の終わりを意味するゼロ金利
○利子率は元来世界史における「蒐集」の成績表
・西欧史はコレクションの歴史であり、コレクションの歴史は金利の歴史。


・投資(=貯蓄)の目的:現在消費できるはずの一部を我慢して迂回生産することで将来の生産力と消費を増加させること。
・資本=迂回生産の手段
・利子=利潤とまったく同様に迂回生産の利益そのものを代表するもの。


キリスト教
 来世において救済するために「霊魂」を蒐集
 現世における救済には「資本」を蒐集


・蒐集に分類が先行する。
・分類なしの蒐集は単なるガラクタ集め。
・過剰投資は不良債権化する。


・蒐集とは真理を探求する行為。


・蒐集の最終目的は社会秩序の維持。
・世界の救済を目的に貯蓄すれば、蒐集は必ず「過剰・豊満・過多」になる。
・現実は世界中に「ショック」を引き起こすことで、上位1%の人に富を集中させている。
国民国家を前提とした資本主義、近代資本主義は正当性を失っている。


・21世紀の課題:「過剰な蒐集」の結果歪んだ社会の是正
・21世紀の経済学の重要テーマ:「成長」ではなく、倫理に基づいた「分配」


○世界の小宇宙としての芸術室(クンストカマー
・利子率は「世界劇場」におけるたたかいの成績表。
・利子率が低い国ほどモノをよろ多く「蒐集」したことを表す。


○蒐集の「過剰・飽満・過多」性
・「蒐集」が社会秩序維持のためにあるかぎり、上限はない。
・コレクションとはつねに必要を超えたもの。
・「蒐集」が止まらないのは、資本の抽象性、神秘性にある。


・資本には国籍がないので、ナショナリズムもない。
・資本は国家や国民のためという発想などもち合わせていない。


・「蒐集」の結果生じた資本の過剰性は経済的には必ずバブルを引き起こし、政治的には戦争が起きやすい環境を提供する。


・地球は有限であるのに、無限性を前提にしている近代は反近代的でもある。


・21世紀最大の課題:統治と経済的権力の象徴である資本の蒐集システム(構造)をいかに止めるか。


○近代史は西欧史ではない、このゼロ金利の日本で世界に出会う
・成長することにより資本の「蒐集」が可能であるかぎりにおいて、利子率は景気の体温計としての役割を果たした。
・21世紀では、利子率が景気の体温計であると考えるのは幻想。
・「システムの警告灯」としての機能を全面に出してくる。


・ゼロ金利が意味するのは、成長で富を「蒐集」する時代が終わり、成長に依存しないシステムを構築しなければ、世界秩序が安定しないこと。


国民国家と資本の離婚ー「想像の共同体」から「資本の共同体」へ
・株式時価総額/名目GDP比率は回帰性がある。
・2011年以降、株式時価総額/名目GDP比率が11年にわたり乖離したことは、資本と国民国家が離婚した可能性が高いことを意味する。


・資本家と国家は結束力を強め、国民国家の解体に尽力している。
・97年以降、労働生産性が緩やかに上昇しているにもかかわらず、実質賃金が下がっている。
・資本の力が雇用を圧倒するようになったから。


・近代は人間を中心に据えた社会として出発した。
・1970年代半ばあたりから、グローバリゼーションが世界の潮流となり中間層が没落し始めた。
・その裏返しの現象として上位1%あるいは0.1%に富みが集中。


★2崩壊寸前の近代「非公式」帝国・米国
<近代主権国家システムの三つの基本的属性>---
1.多数の主権国家が存在すること。
2.ある程度の相互作用が主権国家間に存在すること。
3.ある程度の共通規則と共通制度の承認。
---
・21世紀の現在、第二と第三が綻びをきたしている。
・米国はTPPから離脱することで第二の基本的属性を否定。
→第三の共通規則を守ろうとするインセンティブはなくなる。


○二つの国に分断された米国の「絶望死」
・米国が2016年にトランプを大統領に選んだのは、中間層の人たちがもう近代システムでは生きていけないという悲痛な思いから。
・近代を終わらせないと、ソビエトと同じ運命をたどることになる。
・米国白人の中間層を「絶望死」においやったのは、規制をなくして自由な活動が善であると信じる新自由主義を纏った資本主義。
・死亡率上昇の原因は、アルコール中毒死、薬物中毒死、自殺。
 →三つを総称して「絶望死」と呼ぶ。


・米国には二つの国がある。
・高等教育を受けている人の国と、そうでない人の国。
・この二つに分断された米国で21世紀になり自殺率にはっきりした差が出た。
・高卒以下の米国人が絶望死の最も高い犠牲になっている。


○「こころの内戦」と「精神のデフレ」
・米国、アイスランド、英国、カナダといった国で「絶望死」が増えている。
・こうした国ほど、長期金利が高い。
・日本、ドイツ、フランスなど絶望死が減っている国は長期金利が1%以下。
・前者は新自由主義的な改革を主導してきた国。


・利子率と「絶望死」の関係が成り立つのは、利子率が景気の体温計からシステムの警告灯へと本来の役割に戻ったから。
・「成長の時代」(近代)が終わっているにもかかわらず、成長している国は無理をしている。
・最前線で働いている人たちにストレスが集中、「絶望死」に追いやる。