ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

次なる100年 歴史の危機から学ぶこと

水野 和夫 著 「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

水野 和夫 著
「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

 

終章 「次なる100年」はどこに向かうのか?ー資本の時代から芸術の時代へ
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【まとめ】
・日本では1948兆円を越える個人金融資産、484.4兆円の企業の内部保留金が「石」となり日本銀行の負債(当座預金)と株式市場にしまいこまれている。
内部留保金課税を導入し、国家が仲介者として企業に「慈愛の義務」を果たすよう、徴税権を行使し、公平な分配をすべき。
・「資本」を中心に据える社会は「自然の死」が待ち、人間が動物以下の存在になり、「芸術」を中心に据えれば、現在は「近代の秋」と位置づけることができる。
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・資本の蒐集が許容される条件
①資本が危機(例外状態)のときに人類の救済に役立つ(資金主義者の資本)。
②常態のときには人々の生活向上に資する(唯物論者の資本)。


・ゼロ金利時代の過剰資本は「石」のまま。
・21世紀の「守銭奴」ビリオネアはせっせと「石」を「蒐集」している。
・日本では1948兆円を越える個人金融資産、484.4兆円の企業の内部保留金が「石」となり日本銀行の負債(当座預金)と株式市場にしまいこまれている。
・資本主義社会で生じた歪みを是正しないと、ポスト資本主義社会への移行ができない。


★近代国家誕生以来最悪の財政状況で低下する長期金利
・公的債務残高の対GDP比率(公的債務残高比率)が調査開始以来最も高いのは日本と米国だけ。
・近代国家誕生以来最大の公的債務を抱える日本の10年国債利回りは、人類史上最も低い国の一つ。
→過剰貯蓄の世界が実現した。


・先進国の金利国債発行しても長期金利が上がらない理由
 先進国が貯蓄過剰の状態にあり、戦時のように生産力が破壊されることがないから。
→貯蓄性向が投資要因よりも勝る世界が実現した。


★「石」となった資産を動かし、公的債務を「石」にー王朝仮説を「日本人一家」に適用
・「石」となった金融資産を有効に使うことにより、上層民と下層民のあいだに生じた過去30年の歪みを是正することができる。
・近い将来利払い費がゼロとなり、法人税と消費税引き上げでPBを均衡させれば、公的債務残高を「石」に変えることができる。


★21世紀の所有権ー貨幣愛の追求は半ば犯罪である
・社会全体が過剰な富を抱えていれば、富裕者の生涯使うことのない富(石)を困窮者に移転することで生きた貨幣となる。
・そうすることが社会改革。

・日本の企業には「石」と化した484.4兆円の内部留保金があり、それに見合った現金・預金と有価証券が資産サイ
ドに存在する。
・企業は内部留保金を信義誠実の原則(信義則)に反して増やしている。
・日本をリードする大企業の経営者は、利潤極大化のためには約束を平気で反故にする。

・こうした事態を打開する方策
内部留保金課税を導入する。
・国家が仲介者として富裕者に「慈愛の義務」を果たすよう、徴税権を行使し、公平な分配をする。


★21世紀の行動原理ー「より近く、よりゆっくり、より寛容に」
・生活水準が向上するにつれ金利が低下するのは13世紀以降の普遍的原則。
・「蒐集」システムにおいてゼロ金利は最高の生活水準に到達したことを意味する。


・霊魂を「蒐集」した時代はイコン(聖像)が崇め奉られた。
・資本を「蒐集」した時代はコイン(硬貨)が信仰の対象。
・コインを「より速く」回転させることに長けた人が資本家として成功し、コイン回転教の信者となる。


・今後、「蒐集」の対象となるのは、貨幣換算が不可能な自己の精神となる。
・その目的は堕落してきた人間の精神の向上であり、自己の精神を向上させるのは芸術。


・21世紀の上流階級の人が「財産の道」に邁進しているのは、「精神のデフレ」。
・「精神のデフレ」は経済的にみれば、唯物論者の資本と資金主義者のギャップで測ることができる。
・「精神のデフレ」を資金主義/唯物論主義比率で代替すると、この比率が1.0を越えるたのは2012年以降。
・1.0を越えると資本の「救済」が可能となるが、それを実行しないので、資本家精神が堕落していることになる。


・「財産への道」と「徳への道」は両立しない。


・元来イコンは神的であり、芸術性を帯びていた。
・コインが出現するとイコンは物質的側面を強めた。
・単純かすれば、イコンはコイン。


・社会の中心概念は「資本」か「芸術」の選択を迫られる。
・「資本」を中心に据える社会であれば、「自然の死」が待っており、人間が動物以下の存在になる。
・「芸術」を中心に据えれば、現在は「近代の秋」と位置づけることができる。


・文化がプリミティブではない21世紀のとるべき道
 世界そのものの改良と完成をめざす道


・日本は人類史上、前例のない立場にある。
・21世紀の日本の課題:「蒐集」の歴史を終わらせ、土地、霊魂、資本など蓄積可能なものではないものを21世紀の社会の中心概念に据えるプロセスにいかに入るか。
・芸術は何よりも道徳的であり、すべての芸術が道徳的。
→芸術作品は直接に善にいたる手段だから


・工場、店舗、オフィスなど唯物論者の資本は目にみえ、資金主義者の資本も株式時価総額や預金通帳をみればどれだけ蓄積したかがわかる。
・資金主義者の資本は天井がないのでもっと多くを欲し、「過剰・飽満・過多」となる。
・精神のデフレを治し、こころを豊かにしてくれる芸術は、人間のこころのなかに蓄積するので、過剰になることはない。