ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足

ジェレミー・デシルヴァ 著  赤根洋子 訳「直立二足歩行の人類史」メモ

ジェレミー・デシルヴァ 著  赤根 洋子 訳
「直立二足歩行の人類史」メモ

第2部 二足歩行の起源

第8章 広がるホミニン
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【まとめ】
ホモ・エレクトスとその近縁種は、歩いて南アフリカ南端から西はスペイン、東はインドネシアにまで広がり、世界的に分布するホミニンになった。
・不経済な臓器である腸を短くしたことと火の使用により、200万年前からの100万年間、ホミニンの脳容量は2倍になった。
・四足歩行動物は一歩ごとに息を継ぐため声を出すことが難しいが、二足歩行動物は呼吸を細かく制御可能で、ヒトは音声を自由自在に組み合わせることで言語を発達させてきた。
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・1983年、ジョージアのドマニシにある中世の遺跡で1本のサイの歯が発見された。
・それは現生種のサイの歯ではなく、更新世に絶滅したサイ、ディセロリヌス・エトルスクスの歯だった。
・単純な石器も見つかった。
・ホミニンの生息地がまだアフリカの外には広がっていないはずの時代でもあったが、彼らがそこにいたことを石器が物語っていた。


・1991年にホミニンの下顎骨が発見された。
・2001年に180万年前の溶岩層の上の地層から頭骨が二つ発見された。
・脳容量は現代人の半分ほどしかなかった。
・それらはホモ・エレクトスの初期亜種の頭骨だった。
・ドマニシ原人は、アフリカ大陸以外でこれまでに発見されたものとして最古のホミニン。


・中国中部の上陳で見つかった証拠は、ホミニンが移動を開始したのがさらに早かったことを示している。
・2018年、210万年前に作られた単純な石器が発見された。
・アウルストラロ・ピテクス・セディバが南アフリカを歩いていたのと同時期、人類系統樹の別の枝に属するホミニンがそこから9千マイル近く東へ進出していた。
・それは初期のホモ・エレクトスホモ・エレクトスよりもさらに古いホモ属だったようだ。


・ドマニシと上陳での発見により、ホモ属はおよそ250万年前にアフリカ大陸で誕生、その生息域を広げ、北進および東進してユーラシア大陸へ進出していたことが判明。
・なぜホミニンはこの時代に探検者になったのか?
・なぜ祖先のアウストラロピテクスの住んだことのない領域にまで移動できたのか?


★ナリオコトメ・ボーイとの対面
・ナリオコトメの化石は1984年に発見された。
・149万年前に死んだホモ・エレクトスの少年のほぼ完全な骨格。
・これまで発見された中で最も完全かつ重要な骨格化石。


・脳は大人と同じサイズに達していたが、現世人類の3分の2の大きさしかなかった。
・親知らずがまだ生えていなかったこと、腕と脚の骨端線が閉じていなかったことから、若くして死んだことが分かった(まだ9歳だった)。
・下肢骨は、身長が152センチメートル、体重は45kgあったことを示していた。
・ナリオコトメ・ボーイが大人まで生きていたら、身長183センチ近くまで成長しただろう。


・その幼さでそこまで身体が大きく成長していた事実は、現世人類とは異なり、彼の種には思春期の成長スパートがなかったことを示す。
・子どもの脳と身体はエネルギー配分に関してトレードオフの関係にある。
・プレティーンの子どもの脳は大量のエネルギーを消費するため、身体の成長は後回しになる。
・思春期に入ると身体が遅れを取り戻し、急激に身長が伸びる。
 →成長スパート
ホモ・エレクトスの脳の大きさはわれわれの3分の2しかないため、エネルギーを身体の成長と脳の両方に振り分
けることができた。
・人間が現在の大きさになったのは最近のことではなく、ホモ・エレクトスは現代人のサイズ幅に納まっている。


ホモ・エレクトスは大型化したアウストラロ・ピテクスではなく、脚が長くなった。
・脚が長くなるにつれ移動は容易になる。
・脚が長くなることにより、ホモ・エレクトスアウストラロピテクスよりも長距離を歩き回ることが可能になった。
・さらに、ホモ・エレクトスの足には、現世人類と同じアーチがあった。
 →より長距離を移動し、より多くの食物を手に入れることを可能にする解剖学的特徴を有すようになった。


・肉食動物の行動圏は草食動物のそれより大きい。
・植物は群生するため、草食動物は餌を探して毎日遠くまで移動する必要はない。
・肉食動物が食事にありつくためには、あちこち探す必要がある。
ホモ・エレクトスの化石の発掘現場からは、彼らが食べた動物の骨が多数発見されているが、偶然の一致ではない。
・発見された最古の化石は330万年前もの。
アウストラロピテクスや初期のホモ属も、機会があれば肉を口にしていた。
・彼らはハンターではなかった。
ホモ・エレクトスに至り、死肉をあさる行為は頻繁になり、意図的・組織的な狩りをしていた証拠もある。
・植物食も続け、雑食動物になった。
・祖先が更新世を生き延びるのに肉と骨髄が重要な資源だった。


★二足歩行と脳と言語
・ドマニシのホモ・エレクトスの骨格化石は、ナリオコトメ・ボーイほど身長は高くない。
・彼らも脚が長く、身体の各部分の比率は現世人類と同じ。
・非常に効率よく歩行可能だったドマニシ原人は獲物を追い中東と現在のトルコを通過、コーカサス地方にまでやってきた。
・210万年前に地球最大の大陸を横断してのけた。


ホモ・エレクトスは、アフリカ大陸への出入りを頻繁に繰り返しながら、次第に行動範囲を広げ、直立に足歩行す
るホミニンが生息したことのない土地へ進出。
・150万年前までに、ホモ・エレクトスは歩いて行ける限りの南東の果てに到達。


ホモ・エレクトスとその近縁種は、南アフリカ南端から西はスペイン、東はインドネシアにまで広がり、世界的に
分布するホミニンになった。
・彼らは自分の足で歩いた。


・その間に脳が格段に大きくなった。
・脳が大きくなった理由
<理由1:不経済組織仮説>------
・ヒトは脳が並外れて大きいが、腸は極端に短い点で特異な存在。
・腸は常に古い組織がはがれ落ちて新しい組織が再生するため、維持するのに多くのエネルギーが必要
 →不経済な臓器
・腸を短くすることで節約したエネルギーを、ホモ属は脳の成長に振り向けることができた。
・動物性の食物の摂取が増えるにつれ、短い腸と大きな脳を有する個体がより多くの子孫を残し繁栄していった。
・200万年前から100万年前までの100万年間、ホミニンの平均的な脳容量は2倍になった。
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<理由2:火>-----
ホモ・エレクトスが150万年前までに火を制御する方法を習得していた。
・火の使用で、食物を調理可能となり、食物は消化されやすくなった。
→脳の巨大化に必要なエネルギーを得た。
・火の使用で寒冷地への進出も可能になった。
・肉食獣を火で撃退できれば、木の上で眠る必要もなくなった。
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・歩行能力の向上により、言語能力が芽生え始めた。
・四足歩行動物:前肢が地面を蹴るときの衝撃を肩、胸、腹部の筋肉が吸収。
・呼吸と歩行を一歩につき一呼吸に調整しなければならない。
・一歩ごとに消化器官が横隔膜にぶつかるため、浅く早く呼吸することは不可能。
・走りながら同時に喘ぐことができない。
・走りながらクールダウンできない。
・短時間の全力疾走後、立ち止まり日陰で休まなければならない。


・ヒトは歩きながら速く呼吸することができる。
・ヒトは汗をかくこともできる。
・走りながら身体を冷やすことができる。
・足は遅いが長距離を歩き続けることができる。


・四足歩行動物は一歩ごとに息を継ぐため、声を出すことが難しい。
・二本足で歩く動物は呼吸を細かく制御可能で、さまざまな音声を自在に出すことができる。


・ヒトは、呼吸筋を細かく制御することで生み出される音声を自由自在に組み合わせることで言語を発達させてきた。
・子どもの成長においても、歩行の開始と発語は密接に関連。


アウストラロピテクスの脳化石の中には、ブローカ野に非対称性があるように見えるものもある。
・その脳が言語を生産したり理解したりする直前の状態だったことを示す。
・初期のホモ属の脳は、200万年前までにはそのような状態になっていた。
・スペインで発見された50万年前の化石より、当時、人間の声の周波数帯の音を検知・処理するために微調整された内耳と現世人類に似た舌骨を持ったホミニンが存在したことが分かっている。
・遺伝学的証拠は、言語がその頃すでに存在したかもしれないことを示す。
・言語能力に影響を与える遺伝子が100万年前までには現在の形になったことを示す。
・言語能力の重要要素は50万年前までには出そろった。
・この一連の進化の第一歩は、多様な音をだすのに必要な、呼吸の微調整を可能にした直立二足歩行だった。
ホモ・エレクトスは歩き、世界中に広がり、それにつれて言語能力も獲得した。


★サピエンス登場の舞台
・気候変動により更新世のホモ属の集団には断続的に遺伝的隔離が起きた。
・ヨーロッパおよび西アジア諸地域に隔離されたホモ属の一団がネアンデルタール人に進化した。
・氷河が後退すると、彼らの生息域は西はポルトガルから東はウクライナまで拡大。


・同じ頃、アジアの諸地域にはデニソワ人が生息していた。
・独立した種として認められている。