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哺乳類前史 起源と進化をめぐる語られざる物語

エルサ・パンチローリ 著 的場和之 訳「哺乳類前史」メモ

 

エルサ・パンチローリ 著  的場和之 訳
「哺乳類前史」メモ

第4章 最初の哺乳類時代
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【まとめ】
ペルム紀(2億9900万年前~2億5200万年前)に入ると、植物食の単弓類の拡散がはじまった。
・植物細胞の主成分はセルロースで特定の酵素がないと分解不能で、脊椎動物はこれをもたないため微生物の力が必要。
・有蹄類は植物食を旗印に膨大な数の種に分化したグループで、奇蹄目:後腸発酵動物、偶蹄目:前腸発酵動物に分類される。
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ペルム紀:2億9900万年前~2億5200万年前
・表面的には石炭紀の特徴を残す。
・前時代に始まる海面降下が続き、内海だった広大に地域が陸地として出現。
・世界は半分が水、半分が陸に分断され、過酷な環境が形成。
・極付近の温帯林は、感想化が進み、構成は針葉樹とシダ種子類に変わった。
・極は、氷に覆われていなかった。
・古テチス海沿岸には、モンスーンによる雨で緑豊かで湿潤な環境が発達。
・赤道から中緯度に広がる超大陸の内陸部は、40℃超の高温に達した。
・生きていくには過酷な環境。
・太古の砂丘から見つかる化石は、生命の適応・繁栄を物語る。
・恐竜のいないペルム紀の世界は、哺乳類の最も古く、並外れた祖先たちの遊び場だった。


・テキサスの地層は、鉄を豊富に含む小豆色の堆積岩で構成、化石燃料と単弓類化石でいっぱい。


<「赤色層(レッドベッド)>ーーー
・テキサス、隣接するニューメキシコオクラホマの地盤の大部分をなすは、世界でもっとも厚いペルム紀の堆積層のひとつ。
・高低差1000メートルを超える。
・魚類や両生類で満ちたの温暖なデルタで構成される。
・古い地層には、赤道直下の高温多湿の環境が記録されている。
・面積:約22万平方キロメートル
・地質的時間換算:2億2500万年(オルドビス紀ペルム紀後期まで)
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ペルム紀に入ると、単弓類の拡散がはじまる。
・主要グループ四つ
  頭の小さなカセア類
  長い鼻面のオフィアコドン類
  植物食のエダフォサウルス類
  肉食のスフェナコドン類
 →盤竜類(pelycosaur)
・盤竜類は「骨盤トカゲ」の意だが、かれらは爬虫類でなかった。


ディメトロドン>ーーー
・長い胴体の側面に四肢がついている。
・表面的には「爬虫類的」。
・大きな頭に尖った歯がずらりと並ぶ。
・皮膚に覆われた高い帆が背骨に沿い生えていた。
ディメトロドンの骨格には、ひと続きの高い帆柱が背中に並ぶ。
・ひとつひとつが脊椎から垂直に突出。
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・神経棘(きょく)または棘突起とよばれる突起は、われわれにもある。
・ヒトではごく小さいが、動物により大きさや椎骨の部位ごとに違う。
・有蹄類では肩付近でもっとも発達している。
・これらの動物では、神経棘は首の筋肉が付着する部分。
・草を食べるために頭を上下させるのに強靱が首と肩が必要で、神経棘は大きな筋肉を固定する錨の役割を果たす。


ディメトロドンの神経棘の役割は1世紀以上激しい議論の的だった。
・形状・位置より、菜食や通常の活動と異なる特別な運動のための筋肉が付着したのではないのは確実。
・全長が4メートルに対し、中央部の神経棘は高さ2メートル。


・単弓類の背中の棘の用途の仮説
①体温調節?
 帆には放熱機能がほとんどない
 →不成立
②大きな脂肪の塊を形成し、脂肪という形でエネルギーを貯蔵?
 脂肪を蓄えるこぶをもつ動物は、見てすぐわかるようなこぶの支持構造を持たない
 →不成立
③竜盤類はセクシー・ビースト?
 帆が大きいほどメスに好印象を与え、適応度の指標となったかもしれない。


・竜盤類の主要系統のひとつ:
 カセアサウルス類 カセア科
           エオティリス科
・エオティリス科の化石記録はきわめてまれ。
・現時点で3属が知られているだけ。
・エオティリスはたったひとつの頭骨しか見つかっていない。
・頭骨の長さは6センチメートル
・幅広く、扁平で、獰猛そうな歯が並ぶ。
・犬歯のような牙が上顎の左右から、二本ずつ生えている。

 

・カセア科のグループは、球状の小さな頭と先の丸い歯をもつ。
・帆はなく、ずんぐりした長い胴体から同じように長い尾が伸びていた。
・鼻面と鼻の穴が大きく、頭骨は幅広で寸詰まりの形で、顔は小さかった。
・20センチメートルの頭が1.5メートルの樽のような胴体と尾についていた。
・新たに繁栄をとげた裸子植物を頬張っていた。

・カセア科は植物食に特化した最初期の動物のひとつ。
・同時代の植物食者はかれらだけではなかった。
石炭紀が幕を閉じる直前、盤竜類のゴルドドン、デスマトドンと呼ばれる動物が出現。
・ディアデクテスと呼ばれるがっしり体型の動物もいた。
・これらは四肢動物の独自の枝に属し、おそらく有半羊膜類だった。
・植物食が本格的に花開いたのはペルム紀だった。


・植物ベースの食生活の確立は、四肢動物にとり大きな転機だった。
・最大の課題:植物が硬い素材でできていること。
・植物細胞の主成分はセルロースで特定の酵素がないと分解不能
脊椎動物はこれをもたない。


・植物細胞の難消化性の解決法→微生物の力を借りる
・有蹄類:植物食を旗印に膨大な数の種に分化し、大成功を収めたグループ
・有蹄類 奇蹄目 ウマ、バク、サイ
     偶蹄目 上記以外
・必ずしも指の数で区別できるわけではない。
・判断基準は、どの指で体重を支えるか。
・奇蹄目:体重はおもに第三指、中指にかかる。
・偶蹄目:対称軸が第三指と第四指の間にあり、特徴的な割れた蹄を形成。


・奇蹄目と偶蹄目は生理的特徴の面でも本質的に異なる。
  奇蹄目:後腸発酵動物
  偶蹄目:前腸発酵動物

 

<後腸発酵動物>ーーー
・奇蹄目:植物消化の問題を、消化管の下部と盲腸で食べたものを発酵させることで解決(ゾウ、齧歯目、ウサギ、コアラ)。
・盲腸:大腸に付属する特殊化した袋で、植物を分解する共生細菌が豊富に生息。
・後腸発酵動物の盲腸はヒトのものより大きく、消化に不可欠な役割を担う。
・後腸発酵動物は食料を素早く分解でき、栄養価が低い食料でも生き延び、途方もない大きさに成長可能。
・過去6600万年間に君臨した最大級の植物食者は後腸発酵動物だった。
・前腸発酵動物ほど効率的に食物から栄養を抽出できない。
・膨大な距離を移動して、生きるのに必要な食料を得る。
・植物の栄養を最大限に利用するため、しばしば自分の糞を食べる。
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<前腸発酵動物>ーーー
・偶蹄目、有袋類、齧歯目の一部の種、ナマケモノ、ツメバケイが前腸発酵を収斂進化させた。
・ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ、キリンなどの反芻動物が含まれる。
・複数の部屋に分かれた胃をもつ。
有袋類ナマケモノなどの反芻しない前腸発酵動物は、大きく細長く間仕切りのない胃をもつ。
・複胃のひとつひとつは、消化プロセスの異なる段階に特化し、共生細菌叢の力を借りている。
・最初の2部屋:瘤胃、蜂巣胃
・この二つが胃の最大容積を占める。
・ここで細菌が植物細胞を分解するしごとをする。
・これらの胃のなかの食物は、口に戻され再度すり潰される。
 →反芻と呼ばれる行動
・食物は葉胃と呼ばれる次の部屋を通過、最終的に「真の」胃である皺 胃(しわい)に到達。
・共生細菌はここで不慮の死をとげる。
・胃液がすべてを分解、腸へと送り出す。
・チーズをつくるときに使う、レンネット(反芻動物の胃で分泌される酵素)は、この皺胃から得る。
・4段階のプロセスのおかげで、前腸発酵動物は食料からより多くの栄養を得ることができる。
 →食べる量が少なくてすむが、消化に時間がかかり、一度に多くの餌を処理できない。
・前腸発酵動物は体サイズに上限がある。
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・植物を食べるには微生物の協力が必要。
 →彼らの居場所が必要
・大きな胴体に発酵槽と長い腸を収め、食料からできるだけ多くの栄養をしぼり取る。
・噛む必要のない動物は、肉食動物より相対的に小さな口でもOK。
・口は植物を入れるだけの穴。
・太い首とがっしりした肩は有用。
・鋭くないヘラ型の歯は、葉を押さえ、茎からむしり取る役目。


・こうした法則は、2億8000万年の間ほとんど変わっていない。
・カセア科やエダフォサウルス科の幅と厚みのある胴体は、細菌がうようよいる発酵槽を備え、食べたものから栄養を残さず吸収しつくした。
・共生細菌をどのように獲得したかは不明。
・初期四肢動物が腐敗した植物質あるいは植物食の昆虫を食べたときに取り込まれた?
・植物分解細菌の一部が消化管の中で生存、宿主との共生関係が発達。
・より多くの微生物を体内にもつ動物ほど、植物質からより多くの栄養を吸収でき、生存に有利になった。


石炭紀後期~ペルム紀前期にかけての単弓類:植物食に特化した適応としてももっとも古いもののひとつ。
・その後5000万年にわたり繁栄を続けた。