ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

哺乳類前史 起源と進化をめぐる語られざる物語

エルサ・パンチローリ 著 的場和之 訳「哺乳類前史」メモ

 

エルサ・パンチローリ 著  的場和之 訳
「哺乳類前史」メモ

第5章 血気盛んなハンターたち
----------------------------------------------------------------------------------
【まとめ】
・盤竜類の中から出現した獣弓類は、哺乳類と結びつく主要形質の数々を獲得し、多数の植物食動物に支えられた少数の肉食動物という、今日の生態系を初めて確立した。
・キノドン類は小型犬に似た外見で、現生哺乳類の祖先を輩出し、哺乳類系統を同時代の他の系統と隔て、現代まで受け継がれるボディプランを生み出した。
・動物に活動的でどこにでも棲めることを可能にする内温性は、すべてを一変させたイノベーションで、哺乳類系統が最初に獲得し、のちに恐竜が続いた。
----------------------------------------------------------------------------------
・年代層序表:生物層序、放射性年代測定、その他の手法を組み合わせて岩石の年代を推定した結果。
・どんな地質年代測定の手法にも許容誤差が存在。
 数百年、数万年、数百万年


<獣弓類>ーーー
・盤竜類の中から出現した新たなグループ。
・特徴:温血性
    代謝の高いライフスタイル
    体毛
・ほ乳類と結びつく主要形質の数々を獲得。
・史上初めて、今日おなじみの生態系の構成を確立。
・多数の植物食動物に支えられた、少数の肉食動物。
ーーー


・すべての獣弓類がひとつの共通祖先から進化、独自グループを形成。
・彼らの頭骨に容易に見分けられる共通の特徴がある。
①異歯性をもつ:犬歯と切歯(前歯)の形状が、犬歯より後ろの奥歯と異なる。
②顔の部分の骨:特殊化した犬歯を収めるよう変化。
→歯が複雑化し、食物処理において異なる役割を担うようになることは、
ほ乳類系統が実相したもっとも重要な進化的発明のひとつ。


・獣弓類は頭骨の周囲により大きな筋肉を発達させ、噛む力が強くなった。
・新たな食の世界が開けた。


・獣弓類の共有派生形質、骨格の独自の特徴は48個特定された。
・前の時代の盤竜類と比較すると、獣弓類は肉食性のスフェナコドン科から生じた。
・帆を背負ったディメトロドンは、わたしたちにかなり近い親戚。

 


・最初期の単弓類は、側面についた四肢で這い進んでいた。
・四肢の動きに制約があった。
・獣弓類の肩甲骨は縮小し、動きを制限していた複数の骨がなくなった。
・腰回りも変化。
・四肢で最大の骨である大腿骨の先端部分が丸くなり、寛骨のソケットに収まるようになった。
・四肢は胴体の下に位置するようになり、左右の距離が縮んだ。


<ビアルモスクス類>ーーー
・もっとも古いグループでわたしたちのいる系統樹の枝からもっとも遠い者たち。
・大きな犬歯と、現代のほ乳類にはない強膜輪と呼ばれる眼球を取り囲む骨でできた輪をもつ。
・共通祖先には一般的形質だったが、のちに失われた。


・前のめりの姿勢が印象的
・外耳はなく、単純な構造の内耳につながっていた。
・盤竜類よりも遠くまで速くだとり着けるつくりをしていた。
ーーー


<恐頭類>ーーー
・恐ろしい顔をもっていた。
・頭骨には厚く発達する、骨の肥厚化と呼ばれる傾向があった。
・恐頭類は猛獣ばかりではなかった。
・肉食、雑食、完全な植物食のすべてがみられた。
・一時期、もっとも個体数の多い獣弓類の一系統となった。
ーーー

 

 ・モスコプス:もっともカリスマ性を備えた恐頭類
・キングザイズのベッドより大きく、ナイトクラブの用心棒のような体型。
・でっぷりした胴体に植物質処理に必要な消化管が収まっていた。
・筋骨隆々とした肩と短い首、恐頭類に特有の分厚い頭骨、下向きに急角度で傾斜した顔と背中。
・三角形に脚が生えたような外見。

 

エステメノスクス:骨の肥厚化を極限まで押し進めた顔
・頭から角が全方位に突き出していた。
・一対のごつごつした突起の下に小さな丸い眼が位置し、両頬から一本ずつ装飾が飛び出していた。
・マッチョ体型で、全長は3メートルに達した


・頭の装飾と骨の肥厚化は、求愛ディスプレイのなかで適応度に指標として機能。
・防御に加え、頭をぶつけあう競争でも威力を増す役割を果たした。



スミロドン(サーベルタイガー):もっとも新しい剣歯ネコのひとつ
スミロドンはトラとは異なる絶滅した系統に属する。
・屈強な体格の待ち伏せ型捕食者。
・並外れた巨大な剣歯に加え、それで噛みつけるよう、極端に大きく開く口も進化させた。



・剣歯ネコはほかにもたくさんいた。
スミロドンと同じネコ科には近縁のメガンテレオン。
・遠縁のネコ科ではないグループ:ニムラブス科とバルボウロフェリス科に属す偽剣歯ネコ
・肉食に特化して適応拡散をとげた別の哺乳類グループがいた。
・肉歯目とよばれるこの系統からマカエロイデスが出現し、初期のウマを捕食した。
有袋類いのスパラッソドン類からディラコスミルスが出現。


・こうした多様な動物たちは、生きていくのに好都合な方法は、繰り返し出現する事実を裏付ける。
・大型化した犬歯は、殺しだけでなく種内競争にも使われる。
・タスクを含めれば、ジャコウジカやセイウチ、ラクダや霊長類、ブタの仲間の大部分にもこうした特徴がある。
・タスク:長く伸びた犬歯で、生涯にわたり成長しつづける
・剣歯:生え変わる


・2億5200万年以上昔の獣弓類のなかの最初の剣歯獣:ゴルゴノプスとアノモドン類
・どちらも絶滅し、現世の子孫はいない。


<ゴルゴノプス>ーーー
・捕食者で、オートバイほどの大きさに成長。
・長くたくましい四肢により高速で移動可能。
・サーベル型の犬歯が、ほかの歯のはるか下にまで伸びていた。
ペルム紀後期に出現、短期間に生態系の主要捕食者として、現在のアフリカ、ロシア、インドにあたる地域を席巻。
・大きさは1メートルほどのものからクマより大きなものまでいた。
・ゴルゴノプスは飛び抜けて多様とはいえなかった。
ーーー


・ゴルゴノプス類の特徴で注目を浴びたのは巨大な歯。
・規格外の歯で、どうやって獲物に噛みつき殺していたのだろう?
・剣歯は狩りに使うにはリスクが高く、その伸長を促した淘汰圧は獲物の殺傷ではない?
・肉食よりも性淘汰が犬歯の巨大化に影響を与えた?


スミロドンが使った殺害方法:剪断咬合
・獲物に噛みつくことなく引き倒し、腹部のやわらかい部分に大きく開いた傷をつけ、獲物が弱るか倒れるまで待つ。
・とどめの一撃は喉元への致命傷で、疲れた相手を前肢でおさえ、動きを封じてから気管を引き裂く。


・ゴルゴノプス類の剣歯の獲得がどのように起こったか?
・獣弓類のかれらは、肉を切り刻む機能に特化した奥歯をもたなかった。
待ち伏せして獲物を急襲、獲物のいちばん肉厚な部分に深い噛み傷・裂傷を与え、大きなダメージを負わせた。


・植物食動物を基盤とし、それらを捕食する肉食動物がいる。
・この枠組みが初めて完成したのがペルム紀
・今日の生態系の萌芽がみられる。


<アノモドン類>ーーー
・第二の剣歯哺乳類。
・吸血鬼とカメのハイブリッドが甲羅から這いだしてきたような姿。
・長くて低い位置にある胴体に、寸詰まりで高さのある頭、太く短い脚と尾をもつ。
・いち早く剣歯を獲得し、歯をくちばしと組み合わせた。
・顔の前面の歯を徐々に退化させ、くちばしに置き換えていった。
・歯を完全に失うことはなかった。
・犬歯は残り、より長くなった。
ーーー

 

・ティアラジュデンス:剣歯をもった最初の植物食動物。
・ブタほどの大きさ。
・ヒトの手のひらよりも長い短剣のような犬歯を備える。
・この歯は殺しの道具ではなかった。
・初期のアノモドン類であるため、くちばしはもたない。
・口内に並んだ歯は植物をすりつぶすのに適した形だった。
・大きな歯はディスプレイ用で、ときには闘争にも使われた。


・スミニア:別の初期のアノモドン類
キツネザルほどの大きさ。
・樹上性で、哺乳類系統で初めて、樹の上をすみかとした動物。
・樹上生活動物の体の制約
①木登りのため体が十分に小さくなくてはならない。
②器用さと把握力をもつ手足が必要。
・かれらはこうした形質を四肢動物として初めて獲得。
・枝にしがみついていた。


・2億5200万年前のペルム紀後期、アノモドン類の一系統であるディキノドン類が前歯を完全に喪失。
・代わりにくちばしを獲得。
・くちばしは、カメのそれに似た硬いケラチン製、強靱な筋肉と接続。
・植物の硬い茎を簡単に刈り取った。
・ディノキノドン類はウサギ大の地中生活者からカバほどもある大物まで多様化。


ペルム紀が終わりに近づく頃、パンゲアは獣弓類でいっぱいだった。
食物連鎖の原型が完成、カセア類、ビアルモスクス類、恐頭類、ディノキドン類は、消化管内の共生細菌を得て、サラダバイキングを満喫。
・ゴルゴノプス類は頂点捕食者の座をほしいままにした。


<キノドン類>ーーー
・現生哺乳類の祖先を輩出。
・外見は小型犬に似る。
・近縁であるゴルゴノプス類やテロケファルス類のミニチュア版。
・側頭窓は大きく、大型化し複雑化する顎の筋肉を収めていた。
・窓の上の頭頂部には、この筋肉が付着するとさかのような矢状稜が発達。
・この変化は、より複雑化した歯での咀嚼と結びついていた。
・門歯(前歯)、犬歯、奥歯は機能分化し、哺乳類ものになっていた。
・下の歯を収める歯骨が下顎の主要部分を占め、後端部分の骨はさらに小さくなった。
・哺乳類系統を同時代の他の系統と隔て、現代まで受け継がれるボディプランを生み出した。
ーーー


・現代に生きる動物のうち、温血、内温性であるのは哺乳類と鳥類だけ。
・ほかはすべて冷血、外温性。


<外温性動物>ーーー
・体内でほとんど熱を生成しない。
・周囲の環境に頼り体を温めたり冷やしたりする。
・すべての脊椎動物の祖先形質。
・わたしたちはみな冷血の祖先を共有
・すべての動物は基礎代謝で熱をつくりだすが、気温変動のなかで体を暖かく保つには不十分。
・体内に熱源をもたず、外部環境に頼り熱交換を行うメリットは、代謝の面で節約生活ができること。
・外温性動物はあまり食料を必要としない。
・例:ワニは種によって年に数回しか食事をしない。
・デメリット
 ①周辺環境の温度幅から逃れられないこと。
 ②長時間にわたり高速移動を維持できないこと(すぐにスタミナ切れする)。
ーーー


<内温性動物>ーーー
・内温性の哺乳類と鳥類はほぼどこにでも棲むことが可能。
・アクティブ。
基礎代謝に加え、細胞内でも追加で熱をつくり出す。
・脂肪や糖を燃焼させる。
・長時間にわたり活動的でいられるが、いつも飢えていて、頻繁に菜食し火を燃やし続ける必要がある。
・現生の哺乳類と鳥類はすべて内温性。
・すべてを一変させたイノベーションで、哺乳類系統が最初に獲得し、のちに恐竜が続いた。
ーーー


・絶滅動物の体温上昇を示すもっとも古い証拠:体の構造変化。
・獣弓類の肩と腰に修正が加えられ、左右の脚の間隔が狭まり胴体の真下に伸びた。
・体高が高くなり可動域が広くなった。
→活動量の増加が物理的に可能になった。
・敏捷かつ小回りが効くようになった。
・この変化は狩るものと狩られるものからなる食物連鎖の出現と軌を一にする。
・体が地面から遠くなり、息をつく余裕ができた。
・活発な動物は頻繁な呼吸で活動を支える。
・燃焼には酸素が不可欠だから。


・温血動物は頻繁に呼吸する→水の喪失。
・活動中に暖かく湿った空気を吐き出すと、体から熱と水分が失われる。
・脱水は細胞や臓器の正常な機能を阻害。
・哺乳類と鳥類は、鼻の中に鼻甲介とよばれる畝を発達させこの問題を解決。


<鼻甲介>ーーー
・鼻の中にある折りたたまれたシート状の構造。
・骨・軟骨でできている。
・表面に湿った組織が敷き詰められている。
・鼻甲介は二種類ある。
 ①におい検出に使われる嗅覚鼻甲介。
 ②呼吸に重要な役割を果たす呼吸鼻甲介。
・②は呼気が通過するときに熱と水分を再吸収し、これらが体から失われるのを防ぐ
・今日生息する温血動物はみな鼻甲介をもっている。
・これがなければ内温性は実現不可だった。
代謝率と呼吸鼻甲介の表面積を比較すると、正の相関がある。
ーーー


・嗅覚鼻甲介は、ほぼすべての単弓類にみられ、最初期の盤竜類にもある。
・ほぼすべての四肢動物に備わり、においの検出は、もっとも古い適応のひとつ。
・四肢動物の進化のきわめて早い段階で現れた。
・呼吸鼻甲介は、ペルム紀最後の系統、テロケファルス類とキノドン類にしか見つからない。


・単弓類がいつ温血性を獲得したか?
・内温性への最初の一歩は、ペルム紀末から三畳紀前期の間のどこかで起こった。


・内温性は哺乳類と結びついた特徴の多くと同じく、数撃てば当たるの状況から創発した可能性が高い。
代謝率の変化も、獣弓類の系統のたくさんの枝で異なる割合で起きた。
・かれらがこの時代に急激な身体的変化を先導した。
・獣弓類は進化のトレンドセッターだった。


・ひとつのグループは、より大きなグループに内包され、共通祖先により束ねられる。
・行き着く先は、すべての生物の直近の普遍的共通祖先、LUCA。
・その出現時期は40億年以上前。


・温血性やほかの特徴も、それにつながる形質の蓄積は、明確な形で一度だけ起こったわけではない。
・数々の変化が独立に、異なるスピードで、たくさんの系統で同時進行することで起こった。
・変化の蓄積により異なる生命体に行き着いた。