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哺乳類前史 起源と進化をめぐる語られざる物語

エルサ・パンチローリ 著 的場和之 訳「哺乳類前史」メモ

 

エルサ・パンチローリ 著  的場和之 訳
「哺乳類前史」メモ

第6章 大災害
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【まとめ】
・2億5200万年前のペルム紀末、全生命の75%が死に、次の地質年代三畳紀は、世界が一掃された状態から始まった。
・大量絶滅を乗り越えた短期的成功者はディザスター分類群と呼ばれ、異常発生した単弓類系統の一員、ディキノドン類リストロサウルスが該当。
・ディキノドン類が衰退後、爬虫類系統が台頭し、のちに絶滅古生物である恐竜を誕生させた。
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ペルム紀のあとの三畳紀、最初の哺乳類時代に栄えた獣たちは、爬虫類に取って代わられた。
・獣弓類は大量絶滅事象に消し去られた。


・2億5200万年前のペルム紀末、全生命の75%が死んだ。
・次の地質年代三畳紀は、世界が一掃された状態から始まった。
・二足歩行でダッシュするワニ、カモノハシ顔の水生爬虫類が登場。
・現代的生態系が焦土のなかから姿を現した。
・わたしたちが知る哺乳類もその一員だった。


・母なる地球が、ペルム紀末にこの星の生き物を滅ぼした張本人。
・太古のシベリアの火山は洪水玄武岩
・地核の裂け目から低粘性のマグマがあふれた。
・溶岩が地上にあふれだし途方もない面積を覆う。
・数百万年にわたる、複数の段階に区別される噴火により、700平方キロメートルの土地が、噴出した溶岩の下に消えた。
・噴火は周辺地域のすべての生き物を殺した。
・発生した膨大な量の灰は、すぐさま気候に影響を与えた。
・硫黄を多量に含むガス、メタン、二酸化炭素が大量に放出され、気候が激変した。


二酸化炭素>ーーー
温室効果二酸化炭素は熱を捉え、熱が宇宙空間に放出されるのを妨げ、大気を温める。
・今日の二酸化炭素濃度:414PPM
ペルム紀末の二酸化炭素濃度:2000PPM
ペルム紀末の温暖化は、自然淘汰にもついていけない急速なものだった。
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<硫黄>ーーー
・大気中に放出された硫黄の粒子は、水蒸気を集め、凝集して雲をつくった。
・雲の太陽光が差し込むと、硫黄は水に溶けて硫酸となり、地上に降り注いだ。
・河川に流入し、海に行き着いた酸性雨は、軟体動物やプランクトンの殻を溶かし、食物網全体を脅かした。
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ペルム紀末は史上最大の大量絶滅:グレート・ダイイング
・海洋生物の81%、陸生生物の75%が消し去られた。
・多数の科のサンゴ、三葉虫のすべて、ウミサソリデボン紀以降1億5000万年以上存続してきた魚類のたくさんの系統。
・両生類、爬虫類、とりわけ獣弓類は深刻なダメージを受けた。
・昆虫は9つの科が消えた。
・獣弓類のほとんどの系統は完全に消滅。


洪水玄武岩の噴火は、ペルム紀末の約30万年前から始まり、三畳紀にはいったあとも50万年続いた。
・海が酸性に傾き、無酸素化した。
・多種多様の獣弓類からなる複雑な生態系に匹敵する状態にまで生命世界が回復するまで、1000万年を要した。


・化石記録から、20の大量絶滅が知られている。
・生物種が存続できる期間:平均100万~400万年
・種の出現(種分化)頻度と滅亡頻度は、増減を繰り返す。
・化石記録のなかで絶滅率が種分化率を大幅に上回る5つの時期。
 (地球がパターンを乱し、急に息を呑んだ瞬間)
 ①ペルム紀の事象:群を抜く規模
 ②三畳紀
 ③白亜紀
 ④デボン紀
 ⑤シルル紀
・上記が古典的ビッグファイブ


・周期的破壊にあいつつ、人類はここにいて、歴史を語ることができている。


ペルム紀末の大量絶滅を生き延びた四肢動物のグループはわずか。
・赤道付近の巨大になデッドゾーン:陸上、海中も極端な高温のせいでほぼすべての生物が生きていけなかった。
・「石炭ギャップ」の存在:堆積物をつくりだす森林がなかったから。
・サンゴも壊滅したため、チャートも欠落
・チャート:ケイ素を豊富に含むプランクトンが海底に積もって形成される岩石


・大量絶滅を乗り越えたグループは直後には繁栄を謳歌
・長期政権を樹立できるわけではない。
・短期的成功者はディザスター分類群と呼ばれる。
・典型例が単弓類系統の一員のリストロサウルス
・ディキノドン類に属す、くちばしとタスクの組み合わせで、ペルム紀のほかの獣弓類と一線を画していた。


<リストロサウルス>ーーー
・サイズ:種によりネコサイズ~ウシサイズまでさまざま。
・どの種もずんぐり短足
・四肢のつく位置は胴体の側面と下面の中間。
 →直立姿勢のほかの獣弓類と異なる。
・尾は短く、お尻にちょこんとついた三角形。
三畳紀の幕開け直後、脊椎動物の90%はリストロサウルスだった。
・正真正銘の異常発生。
ーーー


・大災害直後の生態系を構成する生物はジェネラリスト。
・多種多様な食料を利用、さまざまな環境に適応。
・リストロサウルスも好き嫌いは少なかったはず。
・巣穴の痕跡から、灼熱の暑さや酸性雨を地中に避難してやり過ごした。
・こうした修正も逆境を生き抜くのに役だった。


・テロケファルス類とキノドン類も数を減らしつつ耐え抜いた。
・古代の両生類の親戚の一部も命をつなぎ、急速に回復して水中の捕食者となった。
・爬虫類系統の残党は、陸をわがものとした。
ペルム紀の巨大なパレイアスウルス類の親戚、現生のすべての爬虫類の祖先、主竜様類が浄化された大地に共存。
・最初、かれらは生態系の比較的小さな要素でしかなかった。


・ディキノドン類のモノカルチャーは長続きしなかった。
・ディザスター分類群の最大の特徴:短命であること。
ペルム紀末の大量絶滅後、生態的多様性が低下、多くの生活様式が空白を保った。
・1500万年のリハビリ期間を経ても、大型の植物食動物や肉食動物は存在しなかった。
・小動物も欠けていた。
・ネコより小さな動物が出現するまで、長い時間を要した。


三畳紀に起きた回復は急速だった。
・大量絶滅を生き延びたジェネラリストというアドバンテージがあったから。
・ゼロからのスタートではなかった。
自然淘汰は、次の複雑な生態系を構築する素材を手にしていた。


三畳紀の最初の2000万年の間に、生態系の再構成が進んだ。
・複数の動物のグループが姿を消すと、無数の新たな機会が生じる。
・分類群間の生存競争が緩和、新たな生活様式に進出する余裕ができる。


・獣弓類は生き残った。
・リストロサウルスのフィーバーが下火になったあと、チャンスに手を伸ばしたのは爬虫類系統だった。
・さまざまな挑戦の成果のひとつが、絶滅古生物である恐竜の誕生。


・恐竜は遅咲きだった。
三畳紀に入ると、爬虫類が陸海空へ進出した。
・海:首長竜と魚竜・・・パドルのような平たい四肢を獲得、遠洋をすみかとした。
・海生爬虫類は、恐竜とは別系統で、分岐はペルム紀中期にさかのぼる。


<フーペイスクス類>ーーー
三畳紀の海生爬虫類で、もっとも奇妙なグループのひとつ。
・一見ワニだが、四肢は大きなヒレに変化。
・肩から腰にかけての背骨の上には、減速帯のような骨質の塊があった。
・尾は短剣のように先細りに終わり、頭は小さかった。
・歯はなく、やわらかい無脊椎動物を食べていた。
・大きさ:カワウソ~ネズミイルカ程度まで
・ある種は、平たく敏感な「くちばし」と小さな眼をもち、機能面でも形態面でも、カモノハシのプロトタイプのような頭骨を進化させた。
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・陸、空でもほかの爬虫類の放散が起きた。
・カメの祖先は、最初は陸を歩き、三畳紀後期に水辺に進出。
・主竜様類から二つの主要グループが出現。
 ①ワニ系統
 ②恐竜系統
・どちらも最初はトカゲ的な動物としてスタート。
三畳紀の間にボディプランの改変に着手。
・恐竜系統の基部から分かれたのが、脊椎動物として初めて動力飛行を実現した、翼竜のグループ。
三畳紀には、多様な爬虫類がニッチ空間の最獲得をめぐる競争で獣弓類に勝利。


・恐竜の最古の祖先は、どれも直立姿勢の首の長いトカゲに見える。
・一部は二足歩行を身につけ、この特殊化をのちの祖先が活用。
・かれらは獣脚類と鳥盤類、メガロサウルスやステゴサウルスの祖先で、一部は再び四足歩行にもどる。

 

 

・もうひとつのグループは竜脚類で、あとの時代に超大型種を生み出す。
→ディプロドクスやブラキオサウルスなど、首の長いメガトン級の植物食者として知られるグループ。

 

 

三畳紀の陸の支配をリードしたのは恐竜ではなかった。
三畳紀では、ワニのいとこたちはもっとも成功し興味深い動物のひとつ。
・グレイハウンドのような小型のランナーもいて、二足歩行していた可能性もある。
・デスマトスクスは全長4.5メートルの角をもつ植物食者。


中生代の中盤でもワニの多様化は続き、完全な海生の頂点捕食者や、リストロサウルスのスタイルを真似たような植物食者が出現。


<ラウイスクス類>ーーー
・ワニ系統の初期の成功者のひとつ
・ラウイスクス類は三畳紀の顔。
・時代を代表する頂点捕食者として、ゴルゴノプス類に取って代わった。
・直立姿勢のおかげで高速かつ機敏に狩りができた。
ティラノサウルスの頭をトラの体にくっつけたよう。
・恐竜の祖先を捕食していた。
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・爬虫類が台頭、爆発的進化のかたわらで、哺乳類系統の後継者も革命の火種を保っていた。


・リストロサウルスとその近縁種は、ディキノドン類の新たなグループに取って代わられた。
・この植物食の後継者たちは、ヌーの三畳紀前期・中期バージョン。
・2000万年以上にわたり、地球上でもっとも個体数の多い植物食動物の座を維持。


三畳紀の時代が下がるにつれ、ディキノドン類は衰退。
ジュラ紀になると、イヌより小型の植物食動物はほとんど爬虫類が占めた。
・哺乳類系統は唯一キノドン類を残すのみ。
・このなかには現生哺乳類の祖先もいた。


<リソウィシア>ーーー
・圧倒的巨体のディキノドン類。
・グループ最後の生き残りの一員。
・推定体重:7トン
・最近の地質年代に現れた巨大哺乳類を除き、史上最大の単弓類。
・植物を消化する巨大な胃をもち、柱のように直立する脚で体を支える。
・多くの面でゾウに似る。
・この脚の形状は、体重の規格外の増加にともない、複数の動物系統で収斂進化した。
・かれらの動きは鈍重。
・ゾウ的だったが、長い鼻はなく、犬歯のタスクは縮小。
・ディキノドン類の奇妙な特徴のくちばしはそのままで、毛はなかった。
・長きにわたり繁栄したグループにふさわしい、壮大なフィナーレ。
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