ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スティーヴン・W.ホーキング,Stephen W. Hawking,林一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1995/04/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (66件) を見る
第8章 宇宙の起源と運命 メモ
・一般相対性理論では、時空はビッグバン特異点ではじまり、もし全宇宙が崩壊するならばビッグクランチ特異点、星のような局所的な領域が崩壊するときにはブラックホールの中の特異点のどちらかで終わる。
・時空は有限であるが境界はもたないかもしれない。
→時空には始まりがなく、創造の瞬間はなかった・フリードマン・モデル
宇宙が膨張するにつれて、その中にあるすべての物質あるいは放射は冷却していく。
ビッグ・バンの時点では宇宙は大きさゼロで無限に熱かった。
ビッグ・バンの1秒後の温度は100億度で、主として光子、電子、ニュートリノとその反粒子、若干の陽子と中性子が存在
ビッグ・バンの100秒後の温度は10億度で、陽子と中性子が結合して重水素の原子核をつくりはじめる。
数時間でヘリウムその他の元素の生産は停止し、100万年程度は宇宙は膨張するだけ。
温度が数千度まで下がると銀河が形作られる。
重要な問題
(1)初期の宇宙はなぜ熱かったのか?
(2)宇宙は大局的にはなぜこれほど一様なのか?
(3)宇宙が依然臨界速度に近い速度で膨張しているのはなぜか?
(4)宇宙の密度のゆらぎの起源は何か?
カオス的境界条件
・宇宙が空間的に無限であるか、あるいは無限に多くの宇宙があることを暗黙裡に想定
・カオス的な初期条件が大局的になめらかで規則的な宇宙をどう生み出したかは疑問
人間原理
・弱い人間原理:空間的かつ(あるいは)時間的に、大きいまたは無限な宇宙の中で、知的生命体の発展に必要な条件を備えているのは、空間的、時間的に局限されたいくつかの領域だけ。・強い人間原理:多数の異なる宇宙か単一の宇宙の異なる多数の領域が存在しており、それぞれが独自の初期配置をもっており、独自の科学法則をもっているかもしれない。
インフレーションモデル
・宇宙の現在の状態が、きわめて多数の異なる初期配置から生じうることを説明した
→われわれが住む宇宙のこの部分の初期状態は、注意深く選ばれたものである必要がなくなった。
・特異点定理が示すのは、量子重力効果が大きな意味をもつほど重力場が強くなること。
・宇宙のごく初期段階を論じるには、重力の量子論を用いなければならない。
・量子論では科学法則が時間のはじまりも含めていたるところで成立していることが可能
・量子論では特異点が存在する必要はない。
経歴総和法
・粒子は単一の経歴のかわりに、時空の中であらゆる可能な経路をたどる。経歴の一つ一つには一対の数が結びついていて、一つは波の大きさ、もう一つは波の周期における位置(位相)を表す。
粒子がある点を通過する確率は、その点を通過するあらゆる可能な経路に結びついている波を加え合わせることで得られる。
・加え合わせは実時間ではなく、虚時間の粒子経歴に対する加え合わせを行う。
・虚時間を導入すると、時間と空間の区別が消える。
・ある時空の中で起こるできごとが時間座標として虚数値をとるとき、その時空はユークリッド的であるといわれる。
・時間の方向と空間の方向に違いがない。
・実時間にもとづく古典的重力論では、宇宙には二通りのふるまい方が可能→無限の時間にわたって存在してきたか、過去のある有限の時刻に、特異点からはじまった
・重力の量子論では第三の可能性があり、時空の方向が空間の方向と同じ性質をもつような、ユークリッド的空間を用いているので、時空は大きさが有限でありながら、しかも境界あるいは縁を形づくる特異点をもたないでいることが可能。
→宇宙は完全に自己完結しており、その外部のなにものにも影響されない。宇宙は創造もされず、破壊もされな。ひたすら存在する。
・特異点がなくなるのは、宇宙が虚時間を用いて描けるときにかぎられる。
・特異点定理の真の重要性は、重力場が量子効果を無視できなくなるほど強くなるはずだと示したこと。
これが宇宙は虚時間では、有限でありながら境界あるいは特異点をもたないこともありうるという考えを導いた。
実時間のもどるとあいかわらず特異点は存在する。
・無境界条件を用いれば、宇宙は不確定性原理の許す、最小限の非一様性から出発したに違いない。
・宇宙の中に見られるすべての複雑な構造が、宇宙に対する無境界条件と量子力学の不確定性原理を結びつけることで説明できるかもしれない。