- 作者: ファインマン,坪井忠二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/01/08
- メディア: 単行本
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第23章 共鳴
23-1 複素数と調和振動
・ある複素数aは以下にように書ける
a=x+iy=re^iθ
r^2=x^2+y^2=(x+iy)(x−iy)=aa*
a*:aの共役複素数
x=rcоsθ、y=rsinθ
r=√(x^2+y^2) 、tanθ=y/x
・ある定数にcоsωtをかけた形の強制力がはたらいている場合、この力
F=Fcоsωtは、複素数F=F0e^iωtの実数部分
(eiωt=cоsωt+isinωtより)・振動関数を適当な複素数の実数部分で表す
・位相の遅れが⊿であるような正弦波の表現
F=F0e^i(ωt-⊿)
=F0e^iωt・e^-i⊿
=F0e^-i⊿・e^iωt
=F#e^iωt
F#=F0e^-i⊿
・複素数を使って振動の問題を解く
d^2x/dt^2+kx/m=F/m=(F0/m)cоsωt
Fは振動子を動かす力、xは変位、xr+ixiという複素数解があるとすると
d^2(xr+ixi)/dt^2+k(xr+ixi)/m=(Fr+iFi)/m
d^2xr/dt^2+kxr/m+i(d^2xi/dt^2+kxi/m)
=Fr/m+iFi/m
xの実数部分は力の実数部分に対する方程式を満足する。ただし、方程式が
線形の場合(xが1次あるいはゼロ次のもの)に限る。
・F#e^iωtを複素数として、次の方程式を解く
d^2x/dt^2+kx/m=F#e^iωt/m
強制振動の振動数は、加えられる力の振動数と同じで、ある振幅と位相を
もち、適当な複素数x#で表される。絶対値はxの振れの大きさをあらわし、
その位相は力の場合と同様、時間の遅れをあらわす。
・指数関数は、微分があるごとにiωをかければよい
d(x#e^iωt)/dt=iωx#e^iωt
上記より、方程式は次式となり、
(iω)^2x#+(kx#/m)=F#/m
x#=F#/m/*1
となる。
振れの大きさx#は、F#の1/(m(ω0^2−ω^2))倍であり、ωとω0が近い
と非常に大きくなる。
23-2 減衰のある強制振動
・摩擦の力がその物体が動く速さに比例する場合を考える。
Ff=−cdx/dt
m(d^2x/dt^2)+c(dx/dt)+kx=F
c=mγ、k=mω0^2とおき、両辺を質量mで割ると
d^2x/dt^2+γ(dx/dt)+ω0^2x=F
FがF#eiωtの実数部分であり、xがx#e^iωtの実数部分であるとして
方程式に代入する。
[(iω)^2x#+γ(iω)x#+ω0^2x#]e^iωt=(F#/m)e^iωt
よって
x#=F#/(m(ω0^2−ω^2+iγω))
となる。ここで、
R=1/(m(ω0^2−ω^2+iγω))、
とすると、
x#=F#R
R=ρe^iθのRを別の書き方をすると、
x#=RF#=ρe^iθF0e^i⊿=ρF0e^i(θ+⊿)
複素数x#の実数部分は、ρF0e^i(θ+⊿)e^iωtの実数部分に等しく、
e^i(θ+⊿+ωt)の実数部分はcоs(ωt+⊿+θ)であるので、x=ρF0cоs(ωt+⊿+θ)
である。
・ρを求めるには複素共役をとる
ρ^2=1/(m^2(ω0^2−ω^2+iγω)(ω0^2−ω^2−iγω))
=1/(m^2[(ω0^2−ω^2)^2+γ^2ω^2])
・位相角を求める
1/R=1/ρe^iθ=(1/ρ)e^-iθ=m(ω0^2−ω^2+iγω)
と書くと、
tanθ=−γω/(ω0^2−ω^2)
変位xは力Fよりも遅れているため、すべてのωに対してθは負となる。
・ρ^2について考えると、γが非常に小さいと、1/(ω0^2−ω^2)^2が重要な
項となる。ωがω0に等しいと無限大になろうとするが、1/γ^2ω^2がある
ため無限大にはならない。
23-3 電気的共鳴
・電気回路への応用
・キャパシター
Vc=σd/ε0=qd/ε0A=q/C
d:平行板の間隔、
A:その面積、
C:キャパシターの容量
・レジスター
Vr=RI=Rdq/dt
R:抵抗
・コイル
Vl=LdI/dt=Ld^2q/dt^2
L:自己インダクタンス
・キャパシターの電荷qが力学系の変位xに対応すると考えると、
電流I=dq/dtは速度、1/Cはバネ定数kに、Rは抵抗係数γに、Lは
質量に対応する。
・3種類の回路要素を直列につないで回路を作ると、各回路要素にかかる電圧は
全体の電圧に等しくなる。Vl+Vr+Vc=V(t)
Ld^2q/dt^2+Rdq/dt+q/C=V(t)
上式は、振動の力学的方程式と同等で、V(t)が振動しているものとすると、
V(t)を複素数V#であらわすことができる。q#=qe^iωtなので、
(L(iω)^2+R(iω)+1/C)q#=V#、
すなわち
q#=V#/(L(iω)^2+R(iω)+1/C))
=V#/(L(ω0^2−ω^2+iγω))
ただし、ω0^2=1/LCおよびγ=R/Lである。
・電気の場合と力学の場合の対応表
一般特性 力学的性質 電気的性質 独立変数 時間(t) 時間(t) 従属変数 位置(x) 電荷(q) 慣性 質量(m) インダクタンス(L) 抵抗 抵抗係数(c=γm) 抵抗(R=γL) かたさ かたさ(k) (キャパシタンス)^-1(1/C) 共鳴振動数 ω0^2=k/m ω0^2=1/√(LC) 周期 t0=2π√(m/k) t0=2π√(LC) するどさ Q=ω0/γ Q=ω0L/R
*1:k/m)−ω^2) となる。k/m=ω0^2を代入すると、 x#=F#/(m(ω0^2−ω^2