テレンス・J・セイノフスキー/監訳 銅谷賢治 「ディープラーニング革命」メモ
テレンス・J・セイノフスキー 監訳 銅谷賢治
「ディープラーニング革命」メモ
第12章 機械学習の将来
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【まとめ】
・「コグニティブ・コンピューティング(認知コンピューティング)」の時代が始まろうとしていて、その技術は破壊的で社会がその衝撃を吸収・適応するまで時間がかかる。
・数多くの企業がAI事業に多額の投資をしており、どの会社が勝者となり、敗者となるか、わからない。
・中国はプライバシーに関する意識が低く、データを多く持つので、人工知能分野で有利。
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・「コグニティブ・コンピューティング(認知コンピューティング)」の時代が始まろうとしている。
・人間より運転のうまい自動運転車の登場。
・家が住人を認識、その人の習慣から行動予測し、来客があれば知らせてくれる。
・医師の助手でも珍しい病気の診断が可能になり、医療レベルが向上。
・なくなる職業もあれば、新たに登場する職業もある。
・コグニティブ・コンピューティングの技術は破壊的。
・社会がその衝撃を吸収・適応するまで時間がかかる。
・私たちの存在を脅かすものではない。
・これから発見と啓蒙の時代を迎え、人間はより賢く、長生きし、繁栄するようになる。
・IBMのワトソンは、あらゆる事実の膨大なデータベースに基づくプログラム。
・自然言語インターフェースを備えたさまざまなアルゴリズムで質問に回答可能。
・IBMはワトソンを頼りに、ソフトウェア部門で700億ドルの収益を取り戻すつもり。
・数多くの企業がAI事業に多額の投資をしている。
・どの会社が勝者となり、敗者となるか、わからない。
●21世紀の生活
・従来医療:ある症状や病気に対し、すべての患者に有効と考えられる治療法を行う。
・コグニティブ・コンピューティング:一人ひとりに合わせた正確な治療を行う。
●個人情報の未来
<アドハー(Aadhaar)>
・インドの国民登録制度で、世界最大の生体認証プログラム。
・10億人を越える国民を、指紋、虹彩スキャン、顔写真、12桁のID番号により一意に識別する。
・簡単なバイオスキャンで、配給の食料やその他サービスを直接受けられる。
・膨大なデータベースの助けにより、インドは先進諸国を追い越した。
・少しずつの小さな変化でも、100万人、10億人であれば経済の生産性が著しく向上する。
・デジタルIDのデータベースのデメリットは、プライバシーが喪失すること。
●ソーシャルロボットの台頭
・AIは既に日常生活の一部になっている。
・アマゾンのスピーカー「エコー」に搭載されている「アレクサ」のような認知機能のある製品。
→我々に話しかけ、生活を便利にしてくれる
・現状の人工知能
知覚面と認知面が高度化
運動や動作に関する知能はこれから
・脳は知られている限り宇宙で最も複雑な装置。
・脳は身体の一部にすぎず、身体は脳よりずっと複雑。
・身体の複雑さは脳の複雑さとは違い、動きの進化から生じたもの。
・「身体性認知」の核となる考え方:人間の身体は脳にとって不可欠
●Rubi
・ハビエル・モベラン:認知について深く学ぶには、人間と交流するロボットが必要。
・人間が微笑みかけると微笑み返す赤ちゃんロボット
・赤ちゃんと母親の相互関係の研究により、赤ちゃんは最小限の努力で母親の笑顔を最大限に引き出している。
<Rubi(ルビ)>
・ハビエルの最も有名なソーシャルロボット。
・幼児番組のキャラクターのような外見。
・表情豊かに眉を動かして興味を示す。
・カメラの目であちこち見ることができる。
・両手にはものをつかむ機能がある。
・1歳半の子供たちがおなかのタブレットを使いRubiとやりとりした。
・相互関係が形成されると、幼児はRubiを知覚力のある存在として扱うようになる。
・Rubiをフィンランド語を教えるようプログラムすると、子供たちは詠嘆とを覚えるのと同じ早さで単語を身につけた。
・ロドニー・ブルックス:昆虫のように6本足のロボットをつくろうと考えた
・前進させつつ安定を保つよう、6本の足の動きの順番を決定する。
・革新的な点:ロボットの足と環境との機械的な相互作用に任せて制御を行った。
・ブルックスの考え:ロボットが日常的動作をするための高次認知機能は、環境との相互作用に基づくべきで、抽象的な論理に基づくべきではない
●表情は心の窓
・感情の状態を制御する皮質下の構造の一つが扁桃体。
・恐怖を感じる場合に扁桃体が活動する。
・これらの構造は大脳皮質とも強い相互作用がある。
・社会的交流により扁桃体が活性化し、そのことを強く記憶する。
・認知と感情は密接に結びついている。
・ポール・エクマン:すべての人間社会において、普遍的な6種類の感情表現がある:喜び、悲しみ、怒り、驚き、恐怖、嫌悪
<顔面動作記述システム(FACS)>
・顔の筋肉の状態をもとに表情の細かな要素を個別にモニタリングする。<コンピューター表情認識ツール(Computer Expression Recognition Toolbox,(CERT)」
・コンピュータの高速化に伴いCERTはリアルタイム解析に近づき、ストリーミング動画でも人物の変化する表情にラベルづけ可能となった。
●学習の科学
<学習の時間的ダイナミクス・センター(Temporal Dynamics of Learning Center, TDLC)>
・プロジェエクトの一端
・乳児が言語獲得と学習において障害をもつようになるか、乳児の聴覚認知のタイミングに基づいて予測するテストを考案。
・機械学習により生徒の表情を自動的に検出。
・長期的な学習記憶向上に関する調査。
→長期的な記憶が必要な場合、最適な学習間隔がより長くなる。
・その場での理解と長期的な理解のどちらにおいても、聞いて学習することと読んで学習することに統計的な差はなく、好みの学習法法と指導方法が同じでも違っても関係ない。
→個人の学習スタイルに合わせた教材が、教育にとり価値がない。
・教育とは、労働力に強く依存する活動。
・最も効果的で優れた教育手法は、熟練した大人の教師と生徒が1対1で相互作用すること。
・現実は、一斉授業のために設計された工場の組立ラインのようにシステムに縛られている。
・仕事に高レベルの訓練が必要とされ、生涯学習により仕事の技術を更新しなければならない今日では、役に立たなくなりつつある。
●学び方を学ぶ
<大規模オンライン講座 MOOC>
・インターネット環境があれば、いつでも、どこからでもオンデマンド受講可能。
・受講者数は2015年には1700万人から3500万人へ倍増。
・MOOCは学校制度におけるあらゆる障害をすり抜けた。
・バーバラ・オークリー:脳についての知識に根ざすアプローチで講義
<学び方を学ぶ>
・脳がどのように学習するのかという知識に基づき、よりよい学習者となるために必要なツールを与える講義。
・最初の4年間で300万人が登録して世界で最も人気のあるMOOCとなった。
・何か別のことをやっているときに無意識の脳が何をしてくれるか。
・問題を必死で考え続けることで脳の準備が整い、リラックスしている間にも無意識にその問題に取り組むことができる。
・眠っていても脳は問題に取り組むことができる。
・それが起きるのは、眠る前に問題を解こうと一心不乱に考えたとき。
●AIビジネス
・グーグルはディープラーニングに本腰を入れており、他のハイテク企業も同じ。
・米国は人工知能分野における主導的立場を失いつつある。
・中国では何千人もの機械学習技術者を養成している。
・中国のブレイン・プロジェクト(中国脳計画)を支える両翼の一つが、ニューロモーフィックコンピューティング。
・目標は2030年までにこの分野で世界の覇権を握ること。
・プライバシーに関する意識が低い中国は、この分野で躍進するポテンシャルがある。
・最も多くのデータを持つ者が勝者→中国有利
・AIの未来には長期的視野が必要。
・人間レベルに達するのに必要なコンピュータパワーが不足。
・現在のディープラーニングネットワークの規模は、人間の脳と比べて1万分の1。