ローレンス・クラウス 「偉大なる宇宙の物語」メモ
ローレンス・クラウス 「偉大なる宇宙の物語」メモ
第14章 冷たい荒涼とした現実:破れの先にあるのは悪か美か?
・系を冷却したときには素材の特性が変わることがある。
・こうした変化を相転移という。
・系が相転移するときは、ある相に関連する対称性が別の相では消滅することがある。
<超伝導>
・格子がひずむと、総じてその素材には振動(音波)が生じる。
・量子世界では、この振動が量子化されてフォノン(音子)と呼ばれる。
・フォノンは電子を結合させてペアにすることができる。
・このような電子のペアは、クーパー対(クーバーペア)と呼ばれる。
・ある素材がある特定の点以下まで冷やされると、相転移が起こり、すべてのクーパー対がまとまって同一の量子状態になる。
→ボース=アインシュタイン凝縮
・光子のような整数の量子力学的スピンを持つ粒子、あるいはスピンをもたない粒子は、みんなでまとまって同じ状態になりたがる傾向がある。
・光子のように整数のスピンを持つ粒子は、フェルミオン(フェルミ粒子)と区別してボソンと呼ばれる。
・ボソンでできた気体は、十分冷やされると、融合してボース=アインシュタイン凝縮にいたる。
・個々の粒子としての存在は消滅し、量子力学の規則にしたがって系全体が一個の微視的な物体のようにふるまう。
・ひとたび凝縮が形成されると、個々の電子はもちろんクーパー対も、それ自体としては存在しなくなる。
・ひとつの集合体に同化し、電流が流されれば、この凝縮全体が一個の存在として運動する。
<バーディーン=クーパー=シュリーファー超伝導理論(BCS理論)>
・超伝導体では、超伝導体になる前と後で、系の基底状態が変わる。
・それらの特性は、対称性の自発的破れの反映でもある。
・この対称性のやぶれのしるしとなるのが、クーパー対の凝縮が形成されたとたんに系全体の配置をかえるための大きな最小エネルギーが必要になること。
・凝縮体は、大きな質量を持った微視的な物体のようにふるまう。
・こうした「質量ギャップ」の生成は、超伝導体を生む転移のような、対称性の破れをともなう転移の特徴。
・自然界に存在するかもしれない何らかの場の凝縮と、その凝縮状態から励起を引き起こすための最小エネルギーが、陽子と中性子に関連する特徴的な大きな質量/エネルギーになる。
・こうした対称性の破れの特徴として、質量のない別の粒子が存在する?
→南部=ゴールドストーン(NG)ボソン
・この粒子のほかの物質との相互作用にも、対称性の破れの性質が反映される。
・結晶のような系の場合、結晶内の個々の原子が静止位置のあたりでわずかに振動する。
・この振動モード(フォノン)は任意に小さい量のエネルギーを蓄積できる。
・量子世界では、このモードが質量ゼロの南部=ゴールドストーン粒子として反映される。
・エネルギーと質量の同等性が明白なところでは、エネルギーをわずかした、あるいはまったく持たない励起は、質量ゼロの粒子に相当する。
・パイ中間子は、かなりその条件に近い。
・パイ中間子は厳密に質量ゼロではないものの、ほかのどんな強く相互作用する粒子より、はるかに軽い。
・NGボソンが存在するなら、それは陽子と中性子の質量/エネルギーに相当する励起エネルギーのスケールで、自然界に何らかの対称性の破れの現象が存在する場合。