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社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ワープする宇宙

リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ  

リサ・ランドール  監訳 向山信治 訳 塩原通緒
「ワープする宇宙」メモ

Ⅳ部 ひも理論とブレーン

第14章
急速な(だが、あまり速すぎてもいけない)ひものパッセージ
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【まとめ】
プランクスケール長さ(10^-23cm)では一般相対論と量子力学が調和せず、その長さで機能する「量子重力」理論が必要で、その有望な候補が「ひも理論」。
・ひも理論は既知の全粒子を含み、グラビトンの高エネルギーのふるまいを正しく記述し、10次元の超ひも理論では、力の対称性の成立に障害となるアノマリーを排除でき、余剰次元を巻き上げてカラビ-ヤウ多様体にすると超対称性が保存する。
・ひも理論で予言される重い粒子を実験で検出するのは困難で、ひも理論では真空エネルギーが異なる種々の構造が無限に生じ、人間原理に陥る。
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●初期の騒乱
量子力学相対性理論は、距離が極端に短くなると調和しない。
プランクスケール長さ:10^-33cm
・一般相対論が機能する条件:曲がり方がゆるやかな時空で表される、なめらかな重力場がある場合
プランクスケール長さを探り、その長さに影響を与えるものは、運動量が不確定。
量子力学プランクスケール長さでは、激しく揺れ動く世界が現れる。


プランクスケールエネルギー(プランクスケール長さを探るのに必要なエネルギー)では、重力は無視できない。
プランクスケールエネルギーでは、量子力学の計算は不可能。
・微小な距離では、量子力学も重力も、根本的な理論が必要。
 →ひも理論


・古典的重力理論:重力は質量のある物体どうしのあいだで重力場を介して伝えられる。
・量子電磁力学(QED)では、古典的電磁気力が、光子の受け渡しの観点から再解釈される。
QEDは光子の理論で、量子力学的効果を組み込んだ古典的電磁気論の拡張版。


量子力学:重力を伝達する粒子はグラビトン(重力子
・二つの物体のあいだでのグラビトンの受け渡しが重力の法則を生む。
・グラビトンは直接観測されてはいない。
・グラビトンは光子とは異なるスピンをもつ。
・グラビトンは唯一、スピン2をもつ質量のない粒子。
・グラビトンがプランクスケールエネルギー程度の高エネルギーになると、場の量子論は崩壊する。


プランクスケール長さで機能する「量子重力」理論が必要。
→有望な候補が「ひも理論」


●ひも理論の基礎
・ひも理論:物質の最も基本的で分割不可能な物体は、ひも。
・ひも:振動する一次元のエネルギーの輪や断片。
・基礎的なひもであり、電子もクォークもひもの振動からできている。
・粒子はひもの共振モードから生じる。
・各粒子は、基礎的なひもの振動に対応、その振動の特徴が粒子の性質を定める。
・一個のひもが何種類もの粒子を生じさせられる。
・種類の異なるひもがあり、それがそれぞれさまざまな振動のしかたをとれる。


・ひもは一つの次元に沿って伸びる。
・ひもは1(空間)次元の物体。
・ひもの種類
 ①開いたひも
 ②閉じたひも


・多数の振動から生じるひも理論の新たな粒子は、きわめて重い。
・そのような粒子を生むにはとてつもないエネルギーが必要。
・ひも理論が正しくても、その結果を検出するのは困難。


●ひも理論の起源
・最初のひも理論の第一問題:タキオンが含まれていたこと
・超ひも:スピン1/2の粒子を含み、標準モデルのフェルミオンの記述が可能、タキオンが含まれていない。

・最初のひも理論の第二の問題:質量のないスピン2の粒子を含んでいたこと。
・スピン2の粒子こそグラビトンではないか?
・ひも理論はグラビトンの候補を含んでいる。
→ひも理論は量子重力理論の有望な候補


・重力の量子論:グラビトンの高エネルギーでの相互作用が強すぎる。
・重力ひも理論:長さのあるひもを用いるので、グラビトンの高エネルギーでの相互作用が穏やかになる。
・ひも理論はグラビトンの高い相互作用の問題を解決し、グラビトンの高エネルギーでの相互作用を正しく予言できる可能性をもつ。


超ひも理論
フェルミオンと、力を伝えるゲージボソンとグラビトンという、既知の全種類の粒子を含む。
タキオンは含まない。
・グラビトンの高エネルギーの量子記述がおかしくならない。


●超ひも革命
・奇妙な特徴:9つの空間次元と1つの時間次元、10次元でしか意味をなさない。


アノマリー:古典理論で対称性が保存される場合でも、仮想粒子を含む量子力学的過程ではその対称性が侵害されることがある。
アノマリーを含む理論は「アノマラス(変則)」。
アノマリーは力の理論に大きく関係する。
・力の理論がなりたつには内部対称性の存在が必要。
・この対称性が不正確だと、ゲージボソンの望ましくない偏極を排除できない。
・力の対称性はアノマリーを生じさせてはならず、対称性の破れの効果の総和がゼロでなければならない。


・ひも理論はアノマリーを避けるのに必要な制約を満たせる。
・10次元の超ひも理論では、考えられるすべてのアノマリーに対する量子補正の計算で、特定の力ではアノマリーの総和が奇跡的にゼロになる。
・ひも理論の計算で必要とされた多くの相殺は、10次元で起こる。


・ひも理論では、振動モードがひもに沿って時計回りか反時計回りに動く。
ヘテロひも:左向きに動く波が右向きに動く波とは違う扱いをされ、結果、この理論に従来のひも理論より興味深い力が生まれた。


・10次元のうちの過剰な6次元は、次元が認識できないほど小さく巻き上げられている。
余剰次元巻き上げの理論では、弱い力の特徴が再現できない。
 (左回りの粒子と右回りの粒子を違うふうに扱う)


・カラビーヤウ多様対:余剰次元を複雑な方法で巻き上げたもの
・左と右を区別でき、パリティ対称性を破る弱い力を含めた標準モデルの力と粒子を再現できる4次元理論を導く可能性をもつ。
余剰次元を巻き上げてカラビーヤウ多様対にすると、超対称性が保存する。


●旧政権のしぶとさ
・ひもが生じさせる新しい粒子のほとんどはきわめて重い。
・現在の素粒子実験では生成できない。
・ひも理論が正しければ、ひも理論の予言する多くの新しい重い粒子は見つからない。


●革命の余波
・ひも理論の問題:宇宙のエネルギー密度のあまりにも大きな推定値
・宇宙の膨張は加速していて、それは真空のエネルギーが小さなプラスの値をもつことの証拠。
・観測された真空エネルギーの理論上の問題は、その値が小さすぎること。
・ひも理論の概算では、エネルギーはずっと大きいはず。


・ひも理論では、真空エネルギーが同じでない種々の構造が無限に生じる。
・どれが望ましいものかわからない。
・いつも存在する宇中のなかで、構造を生じさせられる宇宙だけが私たちを包含できる。
 →人間原理
人間原理は、宇宙のすべての特徴を予言するというひも理論の目標から逸脱