ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ワープする宇宙

リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ  

リサ・ランドール  監訳 向山信治 訳 塩原通緒
「ワープする宇宙」メモ


Ⅴ部 余剰次元宇宙の提案

第19章
たっぷりとしたパッセージー大きな余剰次元
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【まとめ】
・階層性問題で重力が弱く見えるのは、とても大きな余剰次元空間のなかで重力が薄められるから。
・ADD説が正しければ、高次元重力は約1TeVで強くなり、非常に微少な余剰次元と同じくらいの大きさのブラックホールも1TeVに近いエネルギーで生成されうる。
・ADD説は階層性問題を解決したのではなく、別の問題に置き換えただけ。
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・ADDモデル:大きな余剰次元は重力を大幅に弱められるため、重力の強さは余剰次元を想定しない場合の推定値に比べてはるかに弱くなる。

●大きさが(ほぼ)1ミリメートルもある次元
・ADDモデルでは、標準モデルの粒子がブレーンに閉じこめられている。
・かならず1つより多くの次元があり、それらの次元が巻き上げられている。
・標準モデルの粒子が閉じこめられるブレーンを1つ以上含むが、そのブレーンが空間をはさみこんでいない。
・ブレーンは巻き上げられた余剰次元の内部に位置する。


・ADDが解決しようとした疑問の一つ:
 標準モデルのすべての粒子が一つのブレーンに閉じこめられていて、高次元バルク内には重力しか力がないとしたら、余剰次元はどのぐらい大きくても隠れていられるか
→巻き上げられた余剰次元が1ミリメートル前後の大きさをしてる可能性がある。


・ブレーンがあると、さらに大きな余剰次元もありえる。
・ブレーンはクォークレプトンゲージボソンを閉じこめるので、空間の高次元性をフルに感じられるのは重力だけ。
・ADDのシナリオでは、重力以外のすべてがブレーンに閉じこめられていると仮定されるので、重力をともなわないものはすべて余剰次元がない場合と同じように見える。


・目は光子を感知するが、ADDモデルでの光子はブレーンにとらわれている。
・見ている対称は三つの空間次元しかもっていないように見える。
・ADDシナリオのミリメートル単位の次元の証拠は、きわめて敏感に重力を感知する装置でしか見つかる見込みがない。
・荷量を帯びたKK粒子も問題とはならない。
・標準モデルの粒子は高次元バルクを移動しないので、余剰次元運動量をもたない。
・ブレーンに閉じこめられた標準モデルの粒子は、KK粒子のパートナーをもたない。
→KK粒子にもとづく制約も適用されない。


・ADDモデルでも、グラビトンはKK粒子のパートナーがいなくてはならない。
・グラビトンは高次元バルクを移動していなければならないから。
・グラビトンのKKパートナーは、標準モデルのKKパートナーに比べ、相互作用の強さがはるかに弱い。
・グラビトンのKKパートナーは重力の強さでしか相互作用しない。
・グラビトンそのものと同じ弱さでしか相互作用しない。
→グラビトンのKKパートナーは、標準モデルの粒子のKKパートナーに比べ、生成・検出が困難。


余剰次元に重力からしか制約がかからないとすると、余剰次元が大きくなれる。
・重力は非常に弱く、実験的に調べるのが困難だから。
・小さな物体のあいだの重力法則を検証するには、重力の引力がほかの力のどんな小さな影響からも遮断されていなくてはならない。
・短い距離で重力を検証するのは困難。


●大きな次元と階層性問題
・ADDが余剰次元を研究したのは、階層性問題に関心があったから。
・階層性問題:素粒子物理学と重力に関連づけられている二つの質量、ウィークスケール質量とプランクスケール質量の大きな比に関するもの。
・なぜウィークスケール質量がこんなに小さいのか。
ヒッグス粒子の質量は、仮想粒子により大きな量子補正を受けるため、ウィークスケール質量はもっと大きいはず。


・なぜブランクスケールがこれほど大きいときに、ウィークスケールがこれほど小さいのか
・なぜ素粒子に働く重力の強さはこれほど弱いのか。
・重力が、これまで物理学者が考えてきたものと違うのか


・標準モデルの拡張で階層性問題を解決する試みは的外れなのでは?
・必要なだけの大きさをもつ余剰次元なら同じように階層性問題を解決できる。
・重力の強さを定める基本的な質量スケールはプランクスケール質量ではなく、はるかに小さい1TeVに近い質量スケール。


プランクスケール質量が大きいのは、重力が弱いから。
・重力の強さはこのスケールの二乗に逆比例する。
・重力の基本的な質量スケールがそれよりずっと小さければ、重力の相互作用ははるかに強くなるはず。


・必然的に強くなるのは高次元での重力だけ。
余剰次元が大きいと重力の強さがきわめて大幅に薄められる。
・高次元では重力が強くても、低次元有効理論では重力が弱くなる。
→重力が弱く見えるのは、とても大きな余剰次元空間のなかで重力が薄められるから。

・高次元重力は階層性問題を解決するほどまで強くなりうる。
・高次元重力を充分薄められるだけの大きさが余剰次元にあるかぎり、それは可能。


●大きな次元を探す
エトーウォッシュ実験により、ニュートンの法則はおよそ0.1ミリメートルまで適用されることが確認された。
余剰次元はADDが提案していた1ミリメートルの大きさではありえない。
 少なくともその10分の1でないといけない。


・大きな余剰次元を二つより多く想定した理論が階層性問題を解決するなら、もっと短い距離でニュートンの法則からのずれが生じる。


●大きな余剰次元加速器で探す
・軽いKK粒子は相互作用が非常に弱いので、ここの粒子が感知できない。
・それらをたくさん生成できるだけの高いエネルギーを加速器が実現させれば、KK粒子は観測可能な信号を残す。


・ADDが正しければ、高次元重力は約1TeVで強くなる。
・そうであれば、ブラックホールも1TeVに近いエネルギーで生成されうる。
・高次元ブラックホールを探れば、古典的重力、量子重力、宇宙の形成もより深く理解できる。
加速器で形成されるブラックホールは、この宇宙にあるブラックホールよりもはるかに小さい。
・非常に微少な余剰次元と同じくらいの大きさ。
・ホーキング放射により、瞬時に蒸発する。
・その存在の目に見える証拠を検出器に残すぐらいのあいだは消えずにいる。
・この痕跡はきわめてくっきりと表れる。
・通常の粒子崩壊でみつかるよりも多くの粒子を生みだし、それらの粒子があらゆる方向に消えていく


●副産物
・ADD説は階層性問題を解決したのではなく、別の問題に置き換えただけ。
余剰次元はそれだけ大きくなれるのか?
・新しい物理原理がない限り、次元が並外れて大きくなることはない。
・ADD説で必要とされる大きく平坦な空間の維持には、超対称性が必要。
・超対称性は大きな次元を安定させて強固にするが、それがないと大きな次元は崩壊する。
・ADDの特徴は超対称性の必要性をなくしたことと矛盾する。


・ADDのもうひとつの弱点はその宇宙論的な意味合い。
・理論が宇宙の進化に関する既知の事実と合致するためには、いくつかの数値がきわめて慎重に選ばれていなくてはならない。
・バルクにはほとんどエネルギーが含まれないようにしないと、宇宙論敵進化が観測結果と一致しなくなる。
・可能かもしれないが、階層性問題の核心は、大きなごまかしの必要性をなくすこと。