ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

不確実性を飼いならす:予測不能な世界を読み解く科学

イアン・スチュアート  著 徳田 功 訳  「不確実性を飼いならす」メモ  

 

イアン・スチュアート著 徳田 功訳
「不確実性を飼いならす 予測不能な世界を読み解く科学」メモ

 

14 ベイズの脳
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【まとめ】
・脳は世界に関する信念を短期的・長期的に脳の配線に組み込み、それに従い決定を下す。
・脳は集積回路が配線されたハードウェアに近く、配線されたパターン(信念)を変更するのは大変。
・信じているフェイクニュースは、それが信念に沿っているため、配線された結合をさらに強化し、信じたくないニュースはすべて「無視」される。
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・8個か10個のニューロンからなるネットワークでも、非常に複雑な現象が起こることがある。
 →非線形力学だから
・ネットワークには一般の力学にはない特別な性質がある。
・自然がネットワークを多用する理由はここにあるかもしれない。


ボトムアップアプローチ:
 構成要素とその結合の仕方を列挙したうえでシステム全体の理解を目指す。
トップダウンアプローチ:
 脳の大規模スケールの特徴や振る舞いを基にして研究を進めるアプローチ


★脳はベイズの意志決定マシン
・脳はベイズの意志決定マシンとして働いている。
・世界に関する信念を短期的・長期的に脳の配線に組み込み、それに従い決定を下す。
・その決定は、ベイズの確率モデルで得られる結果とよく似ている。


ベイズ統計では、確率を「信念の度合い」と解釈する。
・脳は世界に関する信念を具現化するよう進化する。
・これらの信念は短期的・長期的に脳の構造に配線される。
話し言葉により、信念に新たな階層が加わり、言葉で表現し、他者に伝えることが可能となった。


ニューロンシナプスでつながっている。
シナプスには「結合強度」がある。
・弱い信号を伝えるシナプス、強い信号を伝えるシナプスがある。
シナプスが存在しない場合、信号は伝達されない。
・信号が強くなるほど、それを受け取るニューロンの応答は大きくなる。


・信号が入力されると、ニューロンは電位を急激に変化させて応答する。
 →「発火」
・発火により、ニューロンでは電気パルスが生成され、他のニューロンに伝達される。
・それがどのニューロンに伝わるかは、ネットワークの結合で決まる。
・入力信号により、ニューロンの電位が閾値を越えると、発火が起こる。
・信号の二つのタイプ
 ①ニューロンを発火させる興奮性の信号
 ②発火を止める抑制性の信号
ニューロンは、興奮性の信号を正、抑制性の信号を負として、すべての入力信号の強度を足しあわせる。
・その合計が十分大きい場合にのみ発火する。


・ヘッブの学習則:一緒に発火するニューロン同士の結合は強まる
・つながっている二つのニューロンが同時に発火すると、両者の結合強度が強まる。
・結合の強さは、「一方のニューロンが発火したら、もう一方も発火すべきだ」と考える脳の信念の度合いを示す。
・ヘッブの学習則により、脳の信念構造は強化される。


★事実はなぜ信念を変えられないのか
・新しい情報が伝えられたとき、人はそれをただ記憶にしまい込むわけではない。
・新しい情報を受け取ると、それを既存の信念に照らして評価する。
・その情報の信頼性も評価する。
・現在抱いていいる信念、新情報がそれとどう関わるか、どれくらい新情報が真実だと確信できるかを吟味する。
・吟味の結果、新情報を受け入れ、自分の信念を修正するかどうか決まる。
・吟味は潜在意識下のものだが、意識的に判断することもできる。


・人類は文化と言語を発展させることで、ある脳の信念体系を別の脳に伝えることを可能にした。
・この伝達過程は不完全で信頼性も低いが、効果的。


★目の錯覚を考える
<両眼視野闘争>
・左右の目に異なる画像を提示する。
・どちらか一方の画像が知覚表象になり、それが時間とともに切り替わる現象


<錯視、多義図形>---
・ネッカーの立方体
・二つのノードを持つ単純なネットワークモデルで説明可能。
・二つのノードはニューロンを表す。
・一つのノードは、一方の向きの立方体を知覚することに対応する。
・もう一つのノードは、もう一方の向きの立方体を知覚することに対応。
・二つのノードは、抑制性結合で相互結合している。
・抑制性結合により、一方のノードが活性化すると、他方が不活性化する。
・ネットワークはいつも明確な決定を下す。
・この決定は、活性度の高い方のノードが下す。


・最初:どちらのノードも不活性状態。
・ネッカーの立方体の画像が目の前に提示:二つのノードは入力を受けて活性化
・両方のノードが同時に活性することはできない。
・ノードは交互に活性化する。
・こうした交代が一定の間隔で繰り返される。
・実際に観察される現象とまったく同じではない。
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<ウィルソン・ネットワーク>---
・ノードが長方形に配列される。
・配列されたノードの各列は、目の前に提示される画像の「属性」を表す。
・属性:色、方向などの特徴
・色:赤、青、緑、方向:垂直、水平、斜め
・選択肢は、その属性の「レベル」を表す。
・各レベルは、その属性の列のノードで表される。
・任意の画像は、属性ごとにレベルを選び、それらを組み合わせたものとして表す。
・特定のレベルの組み合わせを「学習」し、その入力に対して強く反応することでパターンを検出する。
・それぞれの列では、すべてのノードが抑制性結合で互いに結合している。
・さらなる入力、修正がなければ、各列では「勝者総取り」が起こり、一つのノードだけが劇的に活性化する。
・各列では活性化されたノードに対する対応レベルが属性として検出される。
・画像認識訓練では、画像レベルを表すノードとノード間に興奮性結合を加える。
・ノード同士を結びつけ、レベルを適切に組み合わせることで、提示画像の特徴を捉える。
・両眼視野闘争モデルでは、2枚の画像に対しこのような興奮性結合を加える。


・視覚は二つの異なる振動様式を生成する可能性があることを動的ネットワークは予測した。
・二つの振動様式
 ①学習した二つのパターンが交互に現れる。
 ②完璧なサルと完璧な文章が交互に現れる。
・どちらの振動様式が起こるかは結合の強さによる。
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★ウィルソン・ネットワークと一次視覚野
・ウィルソン・ネットワークとよく似た構造をもち、同様に意志決定を行う領域が脳に存在する。
→目から伝わる信号を処理し、何を見ているかを決める視覚野がその好例


フェイクニュースにだまされる脳
・脳が外界を理解するのに用いる回路は、外の世界を模倣している。
・脳の構造は長い時間をかけて進化し、環境に関する情報を「配線」した。
・学習は進化により配線された構造を微調整する。
・私たちが学ぶことは、私たちが教えられることにより条件づけられる。
・幼い頃から特定の信念を教えられると、脳にその信念が配線される。
・私たちの文化的信念は、自分の育った文化に強く条件づけられている。
・信仰に基づく信念は、「私たち」と「彼ら」を区別するのに有効。


・本物のニュースとフェイクニュースを見分けるのは難しくなっている。
・ユーザーは自分の好みで、どの情報を見るか決めることができる。
・フィルターバブル:自分の嗜好が強化され、自分の知りたいニュースしか受け取らない
・確証バイアス:自分が正しいという見方を強化するような情報ばかりを受け取る


ベイズ脳は信念に基づいて作動する。
ベイズ脳は集積回路が配線されたハードウェアに近い。
・配線されたパターンを変更するのは大変。
・強く信じることで変更するのが大変になる。
・信じているフェイクニュースは、それが信念に沿っているため、配線された結合をさらに強化する。
・信じたくないニュースはすべて「無視」される。