ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スティーヴン・W.ホーキング,Stephen W. Hawking,林一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1995/04/01
- メディア: 文庫
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第1章 私たちの宇宙像 メモ
・ニュートンの重力理論より、星はたがいに引き合うので、静的宇宙はありえず、星はいずれどこか一つの場所に寄り集まる。
→重力がつねに引力としてはたらく条件のもとでは、無限大の静的宇宙モデルはありえない。
・1929年のエドウィン・ハッブルの観測により、遠方の銀河はわれわれから急速に遠ざかっている。
・宇宙は膨張しつつあり、過去には宇宙の密度は無限大だった。
→ビッグバンと呼ばれる時点があった。・ビッグバンが時間のはじまり
・膨張する宇宙は創造者の存在を認めないものではないが、創造者がその仕事をいつ遂行したかについては制限をつける。
・理論とは宇宙全体あるいはその限定された一部についてのモデルであり、モデルの中の量をわれわれの行う観察に関係づける一組の規則
・よい理論
1.恣意的な要素を少数しか含まないモデルに基づき大量の観察を性格に説明するもの2.これから行う観測の結果について確定的な予測をするもの
・科学の最終目標
全宇宙を記述する単一の理論を提供すること
現実は、問題を二つの部分に分離している
→宇宙が時間とともにどう変わるか、宇宙の初期状態の問題
・二つの基礎的な部分理論を用いて宇宙を記述している。
一般相対性理論と量子力学<一般相対論>
重力と宇宙の大局的な構造を記述する
<量子力学>
極度に小さな尺度の現象を扱う・二つの理論は互いに矛盾する。
・二つの理論を取りこんだ新しい一つの理論ー重力の量子論ーの探求が今日の物理学の大きな目標の一つ
→目標は、この宇宙の完全な記述
第2章 空間と時間 メモ
<ニュートンの運動の第一法則>
・力の効果は物体の速さが一定の割合で増すことにある。
・力の真の効果は、物体の速さを変えることにある。
・どんな力も働いていないとき、物体は一直線上を同じ速度を保って動き続ける。<ニュートンの運動の第二法則>
・物体に力が働くとどういうことが起こるか。
・物体は力に比例して加速される。<ニュートンの重力の法則>
・どの物体も他の物体を、それぞれの物体の質量に比例する力で引っぱる。
・重力は物体が離れていればいるほど小さくなる。
・ニュートンの法則からは静止の特別な基準はない。
・物体Aは静止していて、物体Bが物体Aに対して一定の速さで動いていてることと、物体Bが静止していて物体Aが動いているのは等価。→静止の絶対的基準が存在しないことは、違う時刻に起きた二つのできごとが、空間の同じ位置で起きたかどうか決定できないことを意味する。
(絶対空間は存在しない)
・絶対時間(時間と空間は切り離されており、空間とは独立)は光速あるいは光速に近い速さで動くものには通用しない。
・マクスウェル方程式
電気と磁気が結びついた電磁場の中に波に似た攪乱が生じ、これ(電波あるいは光波)が池のさざ波のように一定の速さで伝わることを予測した。・光が一定の速さというのは、何に対して測定されたものか。
<相対性理論>
・等速で動いているすべての観測者に対し、その速さがどうであろうとも、科学法則は同一であるべき。
・どんな速さで運動していても、すべての観測者が測定する光速の値は同じであるはず。・質量とエネルギーの等価性(E=mc^2)より、 物体が運動することにより得るエネルギーは物体の質量を増す。
→物体は速さをますことがだんだん難しくなり、光速には到達できない。
光、あるいはあその他の固有の質量をもたない波だけが光速で動くことができる。★相対論では、すべての観測者が光がどんな「速さ」で伝わるかについて意見が一致しなくてはならないが、光が伝わった「距離」については意見が一致せず、それに要した「時間」についても意見の不一致がある。
→相対性理論は絶対時間の概念にとどめをさした
観測者それぞれがたずさえている時計で記録される独自の時間尺度があり、ことなる観測者がたずさえているまったく同じ時計が、かならずしも一致しない。
・時間は空間から完全に切り離されていないし、独立なものでもない。
時間は空間と結びついて「時空」を形作っている。
<一般相対性理論>
・重力は他の力と異なり、時空がそれまで想定されていたように平坦なものではないことから生じる効果である。・時空はその中に質量とエネルギーが分布しているために湾曲している。
・地球が湾曲した軌道を描くのは、重力に動かされているのではなく、湾曲した空間内で、測地線と呼ばれる、直線経路にもっとも近い経路をたどっているから。
・物体はつねに四次元時空の中で直線に沿って動いているが、三次元空間の中では湾曲した経路(円軌道)をたどっているようにわれわれには見える。
・光線も時空の測地線をたどるため、光も重力場により曲がる。
・地球のような重い物体の近くにある時計の進み方は遅く見える。
・ニュートンの運動法則は絶対的位置、相対論は絶対時間を排除した。
★相対性理論では唯一の絶対時間は存在せず、個々人は独自の時間尺度をもつが、その人がどこにいて、どのような運動をしているかによって決まる。
・空間と時間は動的な量であり、物体が動くか力が働くかすれば、空間と時間の湾曲にその効果が及び、時空の構造が物体の動き方と力の働き方に影響を与える。
第3章 膨張する宇宙 メモ
・光の場合、われわれから遠ざかっていく星のスペクトルは赤い端の方にずれ(赤方偏移)、遠ざかっていく星のスペクトルは青い方に偏移する。
・大部分の銀河は赤方偏移を示し、ほとんどすべての銀河がわれわれから遠ざかっている。
・銀河は遠ければ遠いほど、それだけ速く遠ざかっている
・宇宙は膨張しており、銀河同士の間の距離はたえず大きくなっている。
<フリードマンの仮定>
1.われわれがどの方向をながめても宇宙は同じように見える
2.別のどんな場所からながめても同じことが言える
・銀河間の距離に比べても大きな尺度で見れば、宇宙はどの方向でもほぼ一様に見えることになる。
→マイクロ波の赤方偏移がそれを証明した
<宇宙の膨張モデル>
・第一のモデル
宇宙の膨張はゆっくりで、銀河どうしの重力が膨張を止め、やがて宇宙は収縮する。・第二のモデル
宇宙は急速に膨張し、重力はそれを少し遅らせることができても、止めることはできない。
最終的には、銀河は一定の速さで離れ去っていく。・第三のモデル
宇宙は再収縮をちょうど避けるのに十分なだけの速さで膨張する。
銀河が離れ去る速さはゼロにはならないが、しだいに小さくなる。
・第一のモデルでは、宇宙は空間的に無限大ではないが、空間には境界もない。
時間も有限であるが、はじまりと終わりがある。
空間は地球の表面のように、それ自身の上に折り曲げられていて、拡がりは有限・第二のモデルでは、空間は別のやり方で曲げられて、鞍の表面に似る。 この場合の空間は、無限大。
・第三のモデルでは、空間は平坦(無限大)。
・いまわかっているのは、宇宙が10億年ごとに51%ないし10% の割合で膨張していること。
・フリードマン解はすべて、過去のある時点(100億ないし200億年前)には、隣り合う銀河の間の距離はゼロだったはずだという特徴をもつ。
ビッグバン時点では、宇宙の密度も、時空の湾曲率も無限大だった。
↓
・一般相対性理論が、宇宙にはこの理論自身が破綻するような一点(特異点)が存在すると予測している。・ビッグバンで予測可能性は破れるので、時間のはじまりはビッグバンにあった、と言わねばならない。
・ブラックホールと呼ばれる時空のある領域の中に、特異点が生じる。
・ペンローズの定理は、いかなる崩壊する星も特異点に終わるべきであることを示す
・時間反転の論法で、いかなるフリードマン流の膨張宇宙も特異点からはじまるべきことが示された。・再崩壊をさけられるほど速く膨張している場合にだけ、宇宙は特異点をもたねばならない。
・一般相対性理論が正しく、かつ宇宙がわれわれが現に観測しているのと同じ程度の量の物質を含んでいさえすれば、ビッグバン特異点があったはず。
・一般相対性理論は特異点をもつため宇宙がどうはじまったかを説明できない。
・特異点定理が示すのは、宇宙のごく初期には宇宙が非常に小いため、量子力学が扱う小さな尺度の効果が無視できなくなるような時期があったこと