ローレンスクラウス 「偉大なる宇宙の物語」メモ
ローレンス・クラウス 「偉大なる宇宙の物語」メモ
第11章 非常時と非常手段
・ベータ崩壊において原子核内で中性子が陽子に変わる。
・この変換で、陽子と中性子をともに原子核内に収めておく強い結合力を説明できるのだろうか?
<湯川のアイデア>
・陽子と中性子を結合させている核力は仮想粒子の交換から生じるとし、その交換される粒子が、すでに知られているものや存在を仮定されているものだと考えなければならない理由はない。・強い核力の作用する範囲が原子核の大きさに制限されているとすれば、交換される粒子が何であるにせよ、それは電子の200倍の質量をもつはず。
・その粒子が中性子と陽子の間で交換されるなら、その粒子は電荷をもち、その粒子が吸収されたり放出されたりしても陽子のスピンと中性子のスピンが変わらないためには、その粒子はスピンを持っていてはならない。・原子核内の中性子が、光子を放出する代わりに、重くてスピンがなく電荷を持った新しい粒子を放出しているとすれば、その粒子が原子核内の陽子に吸収されて、引力を生み出せる。
→中間子(メソン)・中性子から放出された中間子のごく一部が途中で崩壊して電子とニュートリノに変わり、それらが再吸収されたところで中性子の崩壊が起こる。
・湯川の中間子と考えられるパイ中間子が発見されたが、その「パートナー」であるミュー粒子はスピンをもち、ミュー粒子の物質との相互作用は、核子を結合させられるほどの強さにはほど遠かった。
・ミュー粒子は電子の重い不安定なコピーにすぎなかった。
・パイ中間子が本当に湯川が予言した粒子なのか?
・答えはイエスであり、ノーでもある。
・電荷を持ったパイ中間子が陽子と中性子のあいだで交換されるのは、核子を結合させておく強い核力を正確に推定できるひとつの方法。
・電荷をもったパイ中間子に加えて、電荷をもたないパイ中間子も存在する。・核力を記述するために湯川が書いた理論は、数学的に完全に無矛盾ではなく、湯川もそれを認めたうえで提唱していた。
→当時、質量のある粒子の交換を含めた正しい相対論的な理論は存在しなかった。