藤井啓祐 「驚異の量子コンピュータ」メモ
藤井啓祐 「驚異の量子コンピュータ」メモ
第Ⅰ部 物理学とコンピュータの歴史
2章 コンピュータと物理法則
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【まとめ】
・初期のコンピュータは連続的な量で物理現象を用いて計算を行うアナログコンピュータ。
・現在のコンピュータは離散的で物理系と分離された量を用いるデジタルコンピュータ。
・チューリングマシン:最も一般的な(物理的に実現可能かつ最もパワフルな)計算マシン。
・情報科学の双璧
①チューリングに始まる計算理論
②シャノンに始まる情報理論
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・チャールズ・バベッジ:階差機関を発明
・複雑な計算を足し算、引き算に変換し、それを歯車の動きで計算。
・初期のコンピュータは物理現象を用いて計算を行った。
・連立方程式求解機:ベルトの張力を利用して連立方程式を解くマシン
・微分解析機:ローラーの回転速度を利用して微分方程式を解くマシン
→ベルトの長さやローラーの回転速度といった物理量を解きたい問題の変数に見立て、問題を実際の物理系に埋め込んで解く。
・連続的な値をとる物理量を用いるため、アナログコンピュータ
・バベッジのコンピュータはデジタルコンピュータ(歯車の一つの歯という離散的な量に整数を対応させる)
・初期のコンピュータは、物理法則とそれにより可能になる計算が切り離せない。
→利用する物理現象に関わる制約から逃れられない。
・現在のコンピュータは、コンピュータ上で行われる計算が抽象化され、計算することと計算を行う物理系が分離されている。
<チューリングマシン>
・最も一般的な(物理的に実現可能かつ最もパワフルな)計算するマシン。
・データを記憶する無限に長いテープ、データを読み取り演算を実行するヘッド、ヘッドによる読み書きとテープの左右への移動を制御する仕組みから構成されるマシン。
・現在のコンピュータのほとんどはチューリングマシン互換がある。
・チューリングマシンの定義により、チューリングマシンを基準として計算の難しさの比較ができるようになった(演算速度、容量等)。
・アナログコンピュータは、計算対象との物理的相似性を利用する。
・チューリングマシンは数値を離散的な整数値で書き直すことにより表現する、デジタル方式。
・離散化された情報は、有限の精度の数字しか表現しない。
・計算を実行するマシンに誤差があっても、離散化した数の範囲内であれば同じ数値を表現でき、情報の正確さを確保可能。
・デジタル情報を表現する具体的な物理系と、その上で実行される計算を切り離して議論することが可能。
・クロード・シャノンによるスイッチング回路(リレー)の数学的定式化。
・0と1の二つの状態を用いて計算を行う。
・二つの情報の最小単位:bit(binary digit)
・0と1だけの演算は論理演算と呼ばれる。
・シャノンエントロピー:情報量を測るための尺度
・情報科学の双璧
チューリングに始まる計算理論
シャノンに始まる情報理論
<チューリング完全なコンピュータ>
・チューリングマシンをシミュレーションでき、チューリングマシンと同等な計算能力をもつコンピュータ
<コンピュータの動作速度の指標>
・クロック数:1秒間に基本的な演算を何回実行できるか
<マイクロプロセッサ>
・コンピュータが行う処理の中心部分(CPU:central processing unit、中央処理装置)をまとめて一つのチップで行うもの
・ムーアの法則:一つのチップに搭載されるトランジスタの数が18ヶ月ごとに倍になる。
・ムーアの法則は限界を迎えつつある。
→微細化が限界まで進み、配線を流れる電流が量子的にふるまい、うまく演算できなくなってきている。
・電子が量子的にふるまう領域に入り、配線を飛び越えて発熱と電力消費の原因になり、これ以上クロック数を上げるのが困難。