ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

驚異の量子コンピュータ

藤井啓祐 「驚異の量子コンピュータ」メモ  

驚異の量子コンピュータ: 宇宙最強マシンへの挑戦 (岩波科学ライブラリー)
 

藤井啓祐 「驚異の量子コンピュータ」メモ

 

第Ⅰ部 物理学とコンピュータの歴史

3章 量子コンピュータの夜明け前

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【まとめ】
ランダウアの情報消去の原理:情報の消去は原理的にエネルギーを消費する
・可逆な基本演算だけを用いれば、原理的に発熱しないコンピュータの構成が可能。
・可逆計算をする物理系として、可逆性を潜在的にもつ量子力学の利用が提案された。
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・計算するために原理的に発熱が必要なのか?
・計算にはエネルギーが必要か?


・情報は何らかの物理装置に記憶されている必要がある。
・計算する場合、その情報を何らかの物理法則に従い操作しなければならない。
・計算するにも物理法則から逃れられない。


・コンピュータでは、電子や電圧で情報を表現する。
・情報の読み出し、処理には電子を蓄積したりや電圧を変化させ、様々な物理的処理が必要。
・このような処理は物理法則に従う必要がある。
・計算の原理的な限界を知るには、その計算を担う物理系の物理法則に立ち返ることが必要。


・ロルフ・ランダウアのスローガン:"information is physical"
ランダウアの情報消去の原理:情報の消去は原理的にエネルギーを消費する

<NOT演算:ビットの反転>
 入力 → 出力
  1   0
  0   1

・現在の状況が与えられれば、一つ前の状態を推測できる。
 →情報は消去されていない
・現在の状態から過去の状態に戻せるという意味で、可逆計算。


<AND演算:0と1の世界の掛け算>
 入力1,入力2 → 出力
  0   0    0
  1   0    0
  0   1    0
  1   1    1

・0が出力されたとき、もとの状態が分からない。
 →不可逆計算
・不可逆計算を用いて計算すると、ランダウアの情報消去の原理により、計算の途中でエネルギーが消費され発熱する。


・原理的に発熱しない計算をするには?
・可逆な基本演算だけを用いてコンピュータを構成すればよい。
・3ビットを入力として3ビットを出力する演算を利用し、2ビットは入力をそのまま出力して可逆性を担保する。
・残りの1ビットに計算結果を格納する。

<AND演算の可逆計算化>
 入力1,入力2,出力 → 入力1,入力2,出力
  0   0   0    0   0   0
  0   1   0    0   1   0
  1   0   0    0   0   0
  1   1   0    0   1   1


<XOR演算(0と1の世界の足し算)の可逆化>
 入力1,入力2 → 出力
  0   0    0
  0   1    1
  1   0    1
  1   1    0

・同じ出力となる入力があるので、このままでは可逆ではない。
・XOR演算の場合、入力を一つだけ残し、XOR演算を再び実行すると、前のステップが復元可能で、以下のようにして可逆化できる。
(入力1と出力でXORをとると、入力2が得られる)

 入力1,入力2 → 入力1,出力
  0   0    0   0
  0   1    0   1
  1   0    1   1
  1   1    1   0


・NOT演算とAND演算を組み合わせると、ビット列を入力とするあらゆる計算が可能→古典万能計算を実行できる
・NOT演算もAND演算も可逆なため、任意の計算を可逆計算だけを用いて実行可能。
・AND演算を可逆にすると入力をそのまま書き出すため、計算結果の途中のプロセスをすべて出力として書き出してしまう。
・計算終了後に計算結果以外の履歴を消去すると、エネルギーを消費してしまう。
・計算結果を結果を書き出すビットに書き出し、それい以外の履歴を消すため、可逆性を利用して逆向きにまったく同じ計算をする、アンコンピューテーションを行う。
・計算の履歴を初期状態に戻り、結果だけが可逆演算のみで得られる。
・原理的に発熱しない可逆な操作のみから計算結果だけを取り出すことができるコンピュータを構成できる。


・身の回りで起こる現象は不可逆であることがほとんど。
・多くの物理操作は、熱力学の第二法則に従う不可逆な現象。
・可逆演算だけからコンピュータを構成するには、可逆な物理プロセスを自然界から見つける必要がある。

・可逆に計算をする物理系として、可逆性を潜在的にもつ量子力学の利用が提案された。
量子力学の方程式は時間の向きを入れ替えても同じ形になる。
量子力学に従う系は必ずある時刻の状態から昔の状態へと戻すことが原理的に可能。


・コンピュータは物理学の研究ツールとして利用されるようになり、スーパーコンピュータが素粒子物理学や物性物理学において利用されている。
・リチャード・ファインマン自然法則は古典力学では動いていない。もし自然をコンピュータでシミュレーションしたければ、量子力学で動くコンピュータを作るべきだ。」
・デイビッド・ドイッチュ:量子力学で動くコンピュータの原型、量子版のチューリングマシンの定式化