リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ
リサ・ランドール 監訳 向山信治 訳 塩原通緒
「ワープする宇宙」メモ
Ⅲ部 素粒子物理学第7章
素粒子物理学の標準モデルーこれまでにわかっている物質の最も基本的な構造
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【まとめ】
・ゲージボソンは基本素粒子のひとつであり、ある特定の力を伝える役目をもつ素粒子の総称で、ほかのゲージボソンには弱い力を伝えるウィークボソンと強い力を伝えるグルーオンがある。
・ハドロンを構成する粒子がクォークで、①アップクォーク、②ダウンクォーク、③ストレンジクォークの三種があり、グルーオンで互いに結び付けられている。
・クォークはフェルミオンの基本素粒子で、強い力の作用を受け、レプトンは強い力の作用は受けず、クォーク・レプトンにはより重いレプリカがついている。
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●電子と電磁気学
・電子は安定していて、構成要素がない
質量や電荷など、わずかな特性でその特徴を言い表せる。・電子は負の電荷を帯びていて、電気にも磁気にも反応する。
・場:何らかの量が空間に入り込むことを「場」という。
<電磁場>
・電荷が空間のあらゆるところに電場や磁場を生み、その電場や磁場がまた別の電荷を帯びた物体に作用し、その物体がどこにいようと影響を及ぼす。
・電荷を帯びた物体に対する電場と磁場の影響の大きさは、その物体の位置により決まる。
・場と遠隔作用には違いがある。
・場は適応の時間を必要とする。
・電場と磁場は、光の有限の速さよりも速く伝わることはない。
・マクスウェルが物理学に果たした重要な貢献
電荷と電流の分布から電磁波の値を導く方法を記述した一連の方程式
・これらの方程式から電磁波の存在を導いた。
●光子
・電磁気力は「光子」という粒子の受け渡しで生じる。
・光子は光の量子。
・入ってくる電子が光子を放出、放出された光子が別の電子に向かって進み、電磁気力を伝え、消滅する。
・この受け渡しを通じて、光子は力を伝える(仲介する)。
・力を伝えると即座に消滅する。
・光子は「ゲージボソン」。
・ゲージボソンは基本素粒子のひとつで、ある特定の力を伝える役目をもつ素粒子の総称。
・ほかのゲージボソンには、ウィークボソンとグルーオンがある。
・ウィークボソンは弱い力、グルーオンは強い力を伝える。
<量子電磁気力学(QED)>
・古典的な電磁理論の予言とともに、粒子(量子)の物理過程への寄与、量子的粒子の受け渡しや生成により生じる相互作用が組み入れられている。
・QEDは光子の受け渡しがどのように電磁気力を生み出すか予言する。
●場の量子論
・場の量子論は、素粒子を生成・消滅させられる、どこにでも存在する永遠のものを基盤とする。
・それが場の量子論の「場」。
・量子場も時空に広がる。
・量子場は素粒子を生成したり吸収したりする。
・場の量子論にしたがえば、粒子はいつでもどこでも生成・生滅させられる。
・電子や光子は、空間のどこでも現れたり、消えたりできる。
・場の量子論では、すべての力と相互作用を場の観点から記述する。
・場が新しい粒子を生みだし、すでに存在している粒子を取り除いたりする。
・粒子は量子場の励起と考えられる。
・粒子を含まない「真空」には定常の場しか生じない。
・粒子の存在する状態には、粒子に呼応した隆起や振動の起きる場が生じる。
・場に隆起ができると粒子が生成される。
・その隆起を場が吸収してふたたび定常状態に戻ると、粒子が生滅する。
・電子と光子を生成する場はどこにでも存在する。
・同じ場所にいる粒子だけが相互作用に関与できる。
・粒子が直接の相互作用を果たすには接触しなければならない。
・電磁相互作用は離れた電荷どうしのあいだで起こる。
・これは光子のような一部の粒子の働きがあるから。
・これらの粒子が、相互作用する電荷を帯びた粒子の双方とじかに接触する。
●反粒子と陽電子
・場の量子論では、それぞれの粒子にかならず対となる粒子が存在する。
→反粒子
・反粒子は粒子とそっくりであり、違いは荷量が逆であること。
・反粒子は相対論的な場の量子論の必然的帰結。
<特殊相対性理論から反粒子が出てくる理由>
・電荷を帯びた粒子は空間内を前後に移動可能。
・それらの粒子は時間においても前後に移動可能。
・実際に時間のなかを後退できるものはない。
・逆の電荷を帯びた粒子が「時間をさかのぼる粒子」に代わり発生している。
・時間をさかのぼる粒子が示すはずの光かを、反粒子が再現する。
→時間をさかのぼる粒子がなくても、場の量子論の予言は特殊相対性理論と矛盾なく両立する。
・反粒子は粒子と接触すると粒子を滅ぼす。
・ある粒子の荷量とその反粒子の荷量はつねに和がゼロとなる。
→粒子と反粒子が出会うと、お互いがお互いを滅ぼし、生滅する。
・粒子と反粒子があわさり荷量がなくなることで、E=mc^2に表されるとおり、質量はエネルギーに変換できる。
・物質、特に原子は、反粒子ではなく粒子からなっているので、陽電子のような反粒子は自然界には見つからない。
・加速器の内部や、宇宙の高温の領域などで、一時的に生成される。
●弱い力とニュートリノ
・弱い力は多くの核過程とっては欠かせない力。
・弱い力はある種の核崩壊の要因。
・カリウム40の核崩壊や中性子そのものの崩壊に関与する。
・核過程で原子構造が変わり、その過程を通じて核内の中性子の数が変わり、大量のエネルギーが放出される。
・弱い力は重い元素の生成に寄与する。
・それらの元素は激しい超新星爆発のさなかにつくられる。
・弱い力は恒星が輝きを放つために不可欠。
・弱い力が水素をヘリウムに変える連鎖反応を引き起こす。
・弱い力による核過程は、宇宙の組成を絶え間なく進化させる手助けをする。
・宇宙の原初の水素の10%は星の内部の核燃料に使われたと考えられる。
<電弱理論>
・弱い力を説明するとともに、電磁気力について新たな理解を与える。
・「ウィークボソン」という粒子の受け渡しが弱い力の効果を生じさせる。
・ウィークボソンには三種類ある
①W+ (電荷を帯びている)(Wは弱い力ーweak force)
②W- (電荷を帯びている)
③Z (中性)(Zは電荷ゼローzero)
・ウィークボソンはそれが受け渡されることにより引力・斥力になる力を生む。
・引力・斥力のどちらになるかを決めるのが「ウィーク荷」。
・ウィーク荷は、電荷が電磁気力に対して果たすのと同じ役割を弱い力に対して果たす数値。
・ウィーク荷を帯びている粒子だけが弱い力を経験する。
・その特定の荷量の値が、粒子の経験する相互作用の強さと種類を決める。
・電磁気力と弱い力の重要な違い
①弱い力が右と左を区別すること
↓
「パリティ対称性(空間反転対称性、P対称性)を破る」
・パリティ対称性の破れは、粒子とその鏡像が互いと異なるふるまいをすること。
・粒子には右回りか左回りかがあり、それが粒子のスピンの方向。
・電子や光子など、多くの粒子は二つの方向のどちらか一方に回転できる。
・カイラリティ(対掌性):どちらかになりうる二つのスピンの方向をさす
・弱い力は、右回り、左回りの粒子に対して違う作用にしかたをすることで、パリティ対称性を破る。
・弱い力の作用を受けるのは左回りの粒子だけ。
②ある種類の粒子を別の種類に変えてしまえること(電荷の総量は変わらない)。
・中性子がウィークボソンと相互作用すると、陽子が現れることがある。
・電荷を帯びたウィークボソンが中性子、陽子と相互作用することで、単独の中性子が崩壊し別の粒子に変われるようになる。
・中性子と陽子は質量も電荷も異なるので、電荷・エネルギー・運動量の保存のため、中性子は崩壊して陽子の変わるとき、別の粒子も生み出さなくてはならない。
→中性子は崩壊するとき、陽子だけでなく電子と「ニュートリノ」を生み出す。
・ニュートリノは弱い力を通じてのみ相互作用し、電磁気力を通じての相互作用はしない。
・存在が確実なニュートリノは、左回りのニュートリノ。
・右回りは存在しないか、非常に重い(生成されない)か、非常に弱くしか相互作用しない。
・弱い力を本当に理解するには、ウィークボソンの相互作用を予言する理論が必要。
・弱い力は10^-16という非常に短い距離のあいだで急激に消えてなくなる。
・理由は、ウィークボソンが質量をもつから。
・E=mc^2より、ウィークボソンのような質量をもつ粒子は、同様の質量と距離の関係を自動的に組み込む。
・ある一定の質量をもつ粒子の受け渡しにより伝えられる力は、その質量が小さいほど消滅するまでに長い距離をかけられる。
(この距離はプランク定数に比例し、光速に逆比例する)
・ウィークボソンは質量をもつ点で、光子やグラビトンと異なる。
・光子・グラビトンは質量ゼロ。
・光子・グラビトンはエネルギーと運動量をもつが、質量をもたないため、遠くまで力を伝えられる。
●クォークと強い力
・強い力は陽子の構成要素を束ね合わせているため、陽子はばらばらになることがない。
・強い力は「量子色力学(QCD)」理論で記述する。
・強いゲージボソンはグルーオンと呼ばれる。
・強く相互作用している粒子を束ね合わせる「にかわ」のような力を伝える。
・ハドロンは電子に比して質量が大きい。
・たいていのハドロンは電子の2000倍の質量がある陽子と同程度の質量をもつ。
・多くのハドロンは基本素粒子ではなく、別の粒子の合成物であり、それらの粒子がクォーク。
・クォークには3種類ある
①アップクォーク
②ダウンクォーク
③ストレンジクォーク
・ハドロンの多様さは、互いに結合できるクォークの幾通りも考えられる組み合わせに対応したもの。
・強い力は非常に大きいため、この力の作用を受けるクォークのような基本素粒子はつねに結びあわされていて、単体にするのが難しい。
・各種のクォークは三つのタイプに分かれ、色分けされている。
・色分けされたクォークは、別のクォークや反クォークとともに結びあわされていて、色的に中性の組み合わせになっている。
・この組み合わせの中では、クォークと反クォークのカラー荷が相殺される。
・色が中性になる組み合わせには二種類ある。
①クォークと反クォーク1個ずつ
②三つのクォーク(反クォークは含まない)で結合
・カラー荷はハドロン内のクォークのあいだで相殺される。
・陽子と中性子は三つのクォークの組み合わせ
・陽子は二個のアップクォークと1個のダウンクォークを含む。
・アップクォークの電荷は+2/3、ダウンクォークの電荷は-1/3
→陽子の電荷は+1
・中性子は1個のアップクォークと2個のダウンクォークから成る。
→中性子の電荷はゼロ
・クォークは大きくてやわらかな陽子のなかにある固い点状の物体。
・クォークは陽子や中性子に埋め込まれている。
・高エネルギー衝突でクォークが生み出されるとき、クォークはハドロンにはなっていないが、クォークが単独でいるわけではない。
・クォークはかならず別のクォークとグルーオンを伴っている。
・それらが最終的に強い力のもとで中性の組み合わせとなる。
・クォークが単独の自由な物体として現れることない。
●これまでにわかっている基本素粒子
・クォークはフェルミオンの基本素粒子で、強い力の作用を受ける。
・レプトンもフェルミオンだが、強い力の作用は受けない。
・電子とニュートリノはレプトンの一例。
・最も軽くて安定したクォークとレプトンに、より重いレプリカがついている。
・その存在理由、なんの役に立っているのかは謎。
・ミューオンという素粒子は、重さが重いだけの電子。
・ミューオンは負の電荷を帯びていて、電子より重く、崩壊すると電子になる。
・ミューオンは不安定で、すぐに電子とニュートリノに変わる。
・標準モデルの一揃いの粒子には、電荷を同じくする三つのコピーがある。
・それぞれのコピーは「世代」または「族」と呼ばれる。<第一世代>
左回りと右回りの電子
左回りと右回りのアップクォーク
左回りと右回りのダウンクォーク
左回りの電子型ニュートリノ
・第一世代は、原子の構成要素であり、あらゆる安定した物質の構成要素である安定した粒子がすべて含む。
<第二世代>
・既知の「ノーマル」な物質には存在しない、崩壊する粒子を含む。
・電荷は第一世代の片割れと同じだが、第一世代より重い。
左回りと右回りのミューオン
左回りと右回りのチャームクォーク
左回りと右回りのストレンジクォーク
左回りのミュー型ニュートリノ
<第三世代>
左回りと右回りのタウ
左回りと右回りのトップクォーク
左回りと右回りのボトムクォーク
左回りのタウ型ニュートリノ
・別々の世代に属しながら電荷を同じの特定の粒子のコピーは、その粒子の「フレーバー」と呼ぶ。
・クォークのフレーバーは6つある。
・三つの「アップ型」、三つの「ダウン型」がそれぞれひとつずつ各世代に含まれている。