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ワープする宇宙

リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ  

リサ・ランドール  監訳 向山信治 訳 塩原通緒

「ワープする宇宙」メモ

 

Ⅲ部 素粒子物理学

第11章

スケーリングと大統一 ー 異なる距離とエネルギーでの相互作用を関連づける
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【まとめ】
・仮想粒子は物理的な粒子と同じ荷量をもち、同じ相互作用をするが、物理的粒子とは異なるエネルギーを帯びていて、そのエネルギーが決して測定されない短いあいだだけ存在可能。
・仮想粒子は本物の粒子のあいだを移動し、消滅するときにエネルギーの負債を真空に返済し、この働きにより、安定した長命の粒子の相互作用に影響を与える媒介としての役を果たす。
大統一理論:強い力、弱い力、電磁気力が距離とエネルギーに応じて変わるのは、高エネルギーで単一の力に統一されることの表れ。
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古典力学:電磁気力の強さは、相互作用する物体の距離の二乗に逆比例して小さくなる。
量子力学:相互作用そのものの強さが複雑な影響を受け、異なる距離にある粒子は異なる電荷と相互作用するように見える
→結果として量子力学は逆二乗の法則を変質させる。


・力は距離とともに弱まったり強まったりする。
・それを決めるのが「仮想粒子」。
・仮想粒子:量子力学不確定性原理の帰結として存在する短命の粒子。
・仮想粒子がゲージボソンと相互作用して力を変質させる。
 →力の効果が距離に応じて変わる。


・場の量子論で距離とエネルギーへの力の依存に仮想粒子が及ぼす影響を計算可能。
・この計算のメリットの一つは、強い力がなぜこれだけ強いかを説明できること。
・もう一つの副産物は「大統一理論」の存在の可能性を示したこと。
大統一理論:低エネルギーではそれぞれ異なる重力以外の三つの力を、高エネルギーにおいて単一の統一された力にまとめる理論。


・統一エネルギーは1000兆GeVに相当。
・重力が強くなるプランクスケールエネルギーは、それよりさらに1000倍大きい。


●ズームイン、ズームアウト
<有効場の理論
・測定できると考えられるエネルギースケールと長さスケールだけを対象にする。
・ある特定のエネルギースケールや長さスケールで「有効」に適用される有効場の理論は、どういうエネルギーや距離を考慮に入れなければならないかを規定。
・粒子が特定のエネルギーをもっているときのみ生じる力や相互作用だけを扱う。
・有効場の理論の強みの一つは、短距離での相互作用がわからなくても、知りたいスケールで
重要となる物理量については研究できること。
・検出可能な量について考えるだけでよい。
・ある有効理論の物理量を、別の有効理論の物理量から導ける。


繰り込み群、再標準化群>
・対称性と並ぶ物理学の強力なツール。
・異なる長さスケールやエネルギースケールでの物理課程を扱う。
・短距離に適用されるどんな理論からでも長い距離に適用される理論を導ける。
・決めた長さよりも短いスケールにしか効かない物理量について、平均する。
繰り込み群は、短距離での相互作用が長距離でたてられた理論の粒子にどんな影響を与える
かを計算する方法を提示する。
・ある長さスケールやエネルギースケールで得られたデータを、別のスケールでの物理課程に外挿する。


●仮想粒子
繰り込み群で外挿ができるのは、量子力学的課程と「仮想粒子」の効果を考慮に入れているから。


<仮想粒子>
・実在粒子の幽霊のような奇妙な片割れ。
・現れたとたんに消え、ほんの一瞬だけ存在する。
・物理的な粒子と同じ荷量をもち、同じ相互作用をする。
・エネルギーは実在粒子と異なる。
・仮想粒子が持つエネルギーは、物理的粒子が帯びているものと異なる種類のもの。
・借り物のエネルギーを帯びた仮想粒子は、不確定性原理のおかげで存在できる。
・そのエネルギーが決して測定されない短いあいだだけ、存在できる
・粒子が短命で、そのエネルギーを正確に確定できなければ、そのエネルギーは本物の粒子のエネルギーから一時的に横取りできる。


・真空はエネルギーの貯蔵所。
・仮想粒子は真空から生まれた粒子で、エネルギーの一部を一時的に借りている。
・仮想粒子は一瞬しか存在せず、借りたエネルギーをもったまま、真空に消失する。
・そのエネルギーはもとの場所に還ることも、別の位置にいる粒子に伝えられることもある。


・仮想粒子は長命の粒子の相互作用に足跡を残す。
・仮想粒子は本物の粒子のあいだを移動し、消滅するときにエネルギーの負債を真空に返済する。
・仮想粒子はこの働きにより、安定した長命の粒子の相互作用に影響を与える媒介としての役を果たす。


●なぜ相互作用の強さが距離によって決まるのか
・力の強さは粒子の相互作用にかかわるエネルギーと距離により決まる。
・仮想粒子はその依存関係に一定の役割を果たす。
・起こり得る粒子の相互作用はすべて起こる。
・場の量子論では、禁じられていないものはすべて発生する。


・経路:ある特定の物理的粒子の一群が相互作用する個々の課程
・経路には仮想粒子がかかることも、かかわらないこともある。
・量子補正:仮想粒子がかかわる経路
量子力学では、通過しうるすべての経路が相互作用の最終的な強さに寄与する。
・仮想粒子を直接観測できなくても、観測できる粒子の相互作用のしかたに仮想粒子の影響が表れている。


繰り込み群は、あらゆる相互作用における仮想粒子の影響力を計算する方法を正確に示す。
・媒介となる仮想粒子の効果はすべて加算され、その合計によりゲージボソンの相互作用の強さは強化されるか妨害されるかのどちらかになる。
・間接的な相互作用が果たす役割は、相互作用する粒子どうしが離れているほど重要。
・仮想粒子が相互作用の最終的な強さに寄与できる経路が存在するとき、かならず寄与する。
・仮想粒子がその強さに与える影響の総量は、力が伝達される距離により決まる。


・それぞれの相互作用は、順々にエネルギーが低くなる媒介役の仮想粒子のあいだをチェックを受けながら進む。
・すべてのレベル(距離)で脱線がありうる。
・仮想粒子に強制された迂回路をとることもあれば、仮想粒子が遠くまで行くこともある。
・短距離(エネルギーの高い)伝達では、長距離の伝達に比べて、仮想粒子にぶつかることは少ない。
量子力学では多くの経路がありえる。
・相互作用の最終的な強さは、生じる可能性のあるすべての経路からの寄与をあわせたものと
なる。


・光子の受け渡しをする二個の荷電粒子のあいだの距離は、光子がどれだく多く真空内の粒子
と相互作用するか、その相互作用にどれだけ大きな影響力があるかを決定する。
・電磁気力の強さは、光子がとる多くの経路の最終的な結果。
・そこにはすべての量子力学的過程が考慮されている。
・光子がぶつかる仮想粒子の数は光子の移動距離で決まる。
 →光子の相互作用の強さは、その光子が相互作用する電荷を帯びた物体間の距離により決まる。


・真空は光子が電子から受け取って運んでいたメッセージを薄めている。
・仮想陽電子のほうが仮想電子よりも電子に近いところにいる。
・仮想粒子からの電荷はもともとの電子の電気力の総影響力を弱める。
量子力学効果が電荷を「遮蔽」する。
 →光子と電子との相互作用の強さが距離とともに弱まる。


・長距離での電気力が古典的な短距離での電気力より弱いように見えるのは、短距離で力を伝える光子がとる経路は、仮想粒子が関わらない経路が多いから。
・短距離しか進まない光子は、力を弱める仮想粒子の厚い壁を通過しなくてすむ。
・遠くまで伝える光子は違う。


・力を伝えるゲージボソンは目的地に向かう途中で仮想粒子と相互作用する。
・弱い力の強さも電磁気力の強さと同様に距離が伸びるに従い減少する。


・仮想粒子は相互作用を促進することもある。
・仮想粒子はグルーオン(強い力を伝える粒子)の相互作用を強化する。
 →強い力は長距離でもその名のとおり


グルーオンと光子の違いは、グルーオン同士が相互作用すること。
グルーオンは相互作用領域に入り一対の仮想グルーオンに変わることがあり、その仮想グルーオンが力の強さに影響を及ぼす。
・その影響力は、距離が伸びるほど積み重なり、最終的に強い力はとてつもなく強くなる。
・粒子の距離が離れているほど、仮想グルーオンは強い力の強さを高める。


・離れたクォークと反クォークは膨大な量のエネルギーを蓄える。
・そのあいだに別のクォークと反クォークを生み出す方が、もとのクォークと反クォークを離したままにしておくより効率がよい。
クォークと反クォークをさらに引き離そうとすると、真空から新しいそれらのペアが生じる

・新しいペアも、もとのペアのすぐそばにいて、離れることがない。
・一個のクォークや反クォークが最初の時点から孤立することはない。
・かならず別のクォークや反クォークがすぐそばにいる。


●大統一
大統一理論(Grand Unified Theory)>
・強い力、弱い力、電磁気力が距離とエネルギーに応じて変わるのは、高エネルギーで単一の力に統一されることの表れ。
・GUTの力の対称性は標準モデルのあらゆる種類の粒子、クォークレプトンに作用して互換性をもたせる。
・宇宙の初期には温度とエネルギーが非常に高く、三つの力の強さが同じで、重力以外の三つの力が単一の「力」に融合していた。
・宇宙の進化にともない温度が下がり、三つの異なる力に別れ、それぞれが独自のエネルギー依存をもつようになった。


・三つの力は自発的対称性の破れ通じて別々に分かれた。
・ヒッグス機構は、電弱対称性を破りながら電磁気力の対称性だけは破らないで残した。
・GUT対称性を破っても、三つの力はそのままにした。


・相互作用の強さをエネルギーの関数として表した三つの線は、すべて単一のエネルギーのところで交差する。
・低エネルギーでは強い力に比べて電磁気力と弱い力が弱くなるが、高エネルギーでは電磁気力と弱い力が強まり、強い力が弱くなる。
・重力以外の三つの力は、高エネルギーにおいて似たような強さになる。


・GUTが正しければ、宇宙のクォークの総数はつねに同じではなく、クォークレプトンに変われるので、陽子(三つのクォークの結合物)を崩壊させられる。
 →陽子崩壊がありえるなら、おなじみの物質もすべて究極的には不安定
・陽子の崩壊速度は遅く、その寿命は宇宙の年齢を越える。
・陽子崩壊を検出する望みは少なく、まだ一度も崩壊は発見されていない。